釜ヶ崎講座ニュース NO.15 2005年12月30日 |
■ 第36回釜ヶ崎越冬闘争 1. 第36回釜ヶ崎越冬闘争が始まりました。 去る19日の西成市民館で、80名を集めて開かれた越冬支援集会から今年も越冬闘争が始まりました。 25日には越冬突入集会が三角公園に200名の労働者が集まり開かれました。集会後映画「座頭市」が上映され、布団敷き、医療パトロールと毎日の行動が始まっています。今年の越冬闘争基調とスケジュールは別紙のとおりです。釜ヶ崎講座も「支援連帯集会「突入集会」に参加し連帯の挨拶を行いました。南港の臨時宿泊所への押し込みが行われており、本日が中間報告集会です。本日より集中期に入ります。皆さん越冬闘争に参加してください。物資を!カンパを! |
■ 1月3日「釜ヶ崎講座ツアー」 1月3日は恒例の「釜ヶ崎講座ツアー」です。 集合は午後2時 釜ヶ崎日雇労働組合・反失連事務所です。参加費無料。 案内人は水野阿修羅さんです。釜ヶ崎の歴史と現在をじっくり案内していただきます。何度も釜を訪れた人にも、初めて釜ヶ崎を見る人にもわかりやすい好評の「ツアー」です。是非ご参加ください。暖かい服装で。 |
■ 1月21日「会員の集い・記念講演会」 ○ 1月21日(土)午後6時より「釜ヶ崎講座会員の集い」 「講座」発足以来、講演会や行動を重ねてきましたが「総会」などの会議は行ってきませんでした。先日「事務局」や数名の方が集まり意見交換をしました。一度「総会」まで行かなくても「会員」や「講師の方々」「カンパを寄せてくださる方」などにお集まりいただき「講座」の活動について話し合い、もっと積極的な、魅力ある「講座」にしていこうということになりました。 会員・講師・カンパ者の方々お集まりください。 ○ 午後6時45分より「記念講演」です □講師 松繁逸夫さん(NPO釜ヶ崎支援機構事務局長) 演題「釜ヶ崎の今は、さてこれからは(仮)」 99年、NPO釜ヶ崎支援機構発足以降の仕事・寝場所・医療・福祉そして仕事作りの取り組みの地平と今後の釜ヶ崎の抱える課題を「問題提起」として大いに語っていただきます。われわれ「講座」にとっても考えていかなければならない点が聞けるのではないかと期待です。 □会場 NPO釜ヶ崎支援機構お仕事支援部2階大阪市西成区」萩の茶屋3−6−12 □電話 06−6645−0246 |
■ 特別講演会 中西五州さん「協同社会研究会代表委員」著作「今世紀最大の難問を考える{理想社会への道}−私の資本主義改造論」(同時代社刊)発刊記念講演会 全日自労委員長として長年活躍してきた中西さんは「高齢者生活協同組合」「中高年雇用福祉事業団」などを創立し、労働者の協同、仕事の創出に就いて積極的な発言と行動を行っておられます。今回、発刊された「理想社会への道・出版記念会」の形でお招きし、講演いただき、共に「仕事つくり」について考えて生きたいと思います。 会場は、3、「会員の集い」と同じく「NPO釜ヶ崎お仕事支援部2階」です。日時は3月中旬頃を予定しています。後日ご案内いたします。 |
■ 第10回「講演の集い」(釜ヶ崎と福祉フォーラム)(予定) ○4月15日(土)午後6時半 エルおおさか ○講師 NPO釜ヶ崎福祉部門スタッフ 「釜ヶ崎の福祉の現状」 水内敏雄(大阪市大教授) 「西成区生活保護調査から見えたもの」 |
■ 第9回講演の集い(釜ヶ崎と医療) 7月3日に第9回講演の集い(釜ヶ崎と医療)を行いました。 去る7月3日(日)12時より、大阪市西成区の大阪市立西成区民センターホールにて、釜ケ崎講座主催の形で「第9回講演の集いーフォーラム「釜ケ崎と医療―野宿労働者(ホームレス生活者)への医療支援はどこまで来たのか」を行ないました。65名の参加でした。 府下8660名(98年調査)を数える野宿労働者(ホームレス生活者)の生活を考えるとき彼ら、彼女らの健康問題は深刻な問題です。未だ府下で、年間200名を越す労働者が路上死(野垂れ死に)を強いられている現実があります。昨年の調査結果では5年間でホームレス生活者の13.6%が法的な異常死に追いやられていたとの発表がありました。 笹島や寿や山谷では「診療所」建設があり、そこを拠点に医療保健活動や労働運動、生活相談などが結びついて活動が行なわれてきました。労住医連の関係の医療スタッフも中心で活躍されておられます。この数年は新宿連絡会の医療班活動が活発です。最大寄せ場の釜ケ崎では、政策としては市立更生相談所での医療券発行の措置があり、それによる無料低額診療としての「社会医療センター」での治療があり、運動的には越冬闘争時や梅雨時の医療パトロールや机出しによる医療相談が行われてきました。私の越冬時の医療パトへの参加も30年を超えました。この間、大阪府立大学社会福祉学部黒田研二教授(当時、現人間社会学部)を主任研究者とする健康調査が行われ、これとNPO釜ケ崎支援機構の公衆衛生部門や特掃指導員らの活動が結びつき、健康相談や医療支援が取り組まれ、大きな前進を遂げてきました。健康調査は「厚生労働科学・研究費」による「ホームレス者の医療ニーズと医療保障システムのあり方に関する研究」(平成15年度より)となるものです。全容は報告書を参照してください。 また府下全域への「巡回医療相談」や「巡回医療」などが行政サイドやNGO(国境なき医師団)で開始され、取り組みは、大きく変化してきました。労働者が高齢化するなか、永年の労働や野宿による健康破壊を明らかにし、労働者自らが自己の健康状態を理解し、対応を労働者自らと医療関係者が共に考えていくことは、「いのちをまもる」ために大切なことです。「釜ケ崎講座」の今回のフォーラムは、昨年12月、「仕事保障」を求める労働者の運動に連動し、「あらたな仕事つくり」をテーマに開いたのに続き、「釜ケ崎と医療」をテーマにして開いたものです。 当日は、まず「野宿労働者―ホームレス生活者の現状と対策の問題」と題して、島和博大阪市立大学大学院創造都市研究科教授が基調提起を行いました。寄せ場(日雇労働市場)としての釜ケ崎がホームレスの供給源として、福祉受給者の集積地として再編されてきた10年の変化を述べ、あいりん対策(治安)から自立支援への変化、隔離された場所の釜ケ崎から都市下層・窮民層の結集点としての変化を見つめ、改めて「労働者の街」としての釜ケ崎の視点から福祉、医療の施策の論議を考えようとの提起でした。 続いて「ホームレス生活者の健康実態」を、前述の2年間の健康調査・生活実態調査を通して明らかになったことを、黒田研二・大阪府立大学人間社会学部長が総括報告しました。特別就労事業従事者に行った03・04年健診の結果と国民栄養調査との比較からホームレス生活者は「やせ」が多い、重症高血圧の人が4倍以上、貧血を示す人が多いと同時に血糖値も高い人も多く、高血圧・低栄養・肝機能障害に陥っている状態の報告がありました。これは野宿によるストレス、食事摂取が不十分なこと、飲酒に頼ること、医療から阻害されていること、また経済的に医療継続が困難な状況から結果していると報告がありました。2年の健康支援活動を通じ、改善も見られる積極面も出ていることも報告されました。続いてきびしい健康障害の結果としてのホームレス者の死亡調査からの実態を、逢坂隆子・四天王寺国際仏教大学教授の報告がありました。00年大阪市内で発生した変死は294例、野宿状態で213名、ドヤで81名が死亡。病死が59%であり、自殺も16%と多く、餓死が8名凍死が12名もいます。野宿者は平均死亡率に比べ3、6倍でした。元NPO釜ヶ崎支援機構公衆衛生部門の西森琢氏(現NPOヘルスサポート大阪)は、大阪市に比べ74倍にもなる結核罹患状態の釜ケ崎での現状を報告。この2年の健診でも、結核は有所見者は34%に達した。が即要医療とされた人へのフォローにより全員が医療に結びつくことが出来、野宿生活のなかでも結核問題は克服困難のものではなく、生活実態や活動形態にあった対策を共同で行なえば十分可能であることが取り組みから見えてきたことが報告されました。 歯科と栄養調査から見えたものとして、歯科衛生士の石川裕子さんが20本の歯を持つ人が全国と比較し少ないこと、治療を受けることが出来ず、重度な歯周病にかかり、義歯も入れられない状態であることが報告され、名倉育子・大阪樟蔭女子大学学芸学部食物栄養学科助教授からは食生活・栄養状態の実態で、野宿者では1食も食べられない日が週に1日以上あるものが半数いるという厳しい現実が報告されました。歯の状態、栄養状態の劣悪さが健康状態の悪化の基礎にあることがあらためて浮き彫りにされました。 後半はこの厳しい野宿労働者の健康状態に対しの、保険医協会やMSF、行政等の「巡回医療相談」「巡回医療活動」「面接・相談事業」等の巡回型の「医療・健康支援」活動の現状が黒川渡・医療法人弘清会四ツ橋診療所医師から、概括と到達点が整理し出されました。医療単独の支援での完結はなく、野宿からの脱却としての生活就労相談支援との連携が提起されました。日本各地の健康支援活動の取り組みの現状を、中山徹・大阪府立大学人間社会学部社会福祉学教授が、更に東アジアホームレス支援施策調査より見えたソウル・香港・台北における支援施策の現状を、水内俊雄・大阪市立大学大学院文学研究科教授が現地の写真を中心に報告されました。時間が足りず、後半は短い報告にならざるを得ませんでした。詳細は参考にあげた「報告書」や「shelter-less」23・24・25号(新宿ホームレス支援機構刊)を見てください。 今年も「特別清掃労働者」健診が行なわれました。来る10月30日には医療・生活・法律などの領域を含めた朝から深夜まで、府下を移動しての「一日行動」を準備しています。イベントに留まらない継続的な行動が求められていることはいうまでもありません。 |
■ 「10・30野宿生活者支援統一行動」 10月30日、大阪市内の野宿生活者の健康や生活を支援する「10・30野宿生活者支援統一行動」に取り組みました。 大阪府保険医協会、ホ−ムレス健康問題研究会、ヘルスサポート大阪、国境なき医師団日本を事務局とし、ボランティア団体・個人が協力して取組まれたものである。 医師、歯科医師、保健師、看護師等の医療関係や弁護士、司法書士、社会保険労務士、ケースワーカーなどの多様な職種と、施設・行政そして学生やボランティアからも参加があり、総合的な医療、生活相談が行なわれた。 行動は、午前十一時より北区西天満の大阪弁護士会館(A行動)、午後三時より淀川河川公園(B行動)、夜は八時より十一時までJR大阪駅前(C行動)で行なわれ、参加者はA行動で百四十名、B百十名、C六十名と、実数で二百三十名、延べ三百名が参加の大行動となった。各行動とも、CR車(デジタルX線撮影システム搭載の検診車)での結核検診を、拠点とする本部と、巡回班が各々十班近くで構成され、A行動では、大阪城公園、桜ノ宮公園等まで巡回相談が行なわれた。 本部では、まず相談に来た野宿生活者に、保健師や医療ソーシャルワーカーが健康状態や相談したい事項について聞き取りし、CR車で検診をうけるか本人に確認する。X線撮影の後は医師による?続影が行なわれ、即日結果に基づいた医療相談が行なわれた。血圧・血糖・身体測定のあと、各人の希望に沿って医師・歯科医師による健診、法律・年金・居宅保護などの個別相談にまわることができる体制が組まれた。 巡回班も、レントゲン撮影はないが同様の職種構成が編成された。朝八時からのおにぎり作りから夜十一時終了までの一日行動で、相談者は百六十名、うちX線撮影を受けた人が百名余、医師・歯科医師が健診後、「医師?意見書」を作成したものは各々十数名となった。?もしかしたら年金などの相談や、借金についての弁護士への相談等も多数あった。居宅相談では、即日入居も五名程あった。 当日は日曜日のため、大阪市の巡回相談への結びつけは翌日からとなったが、フリーコールへの問合せも十件以上におよんだ。当日行動以降も、巡回相談による訪問や、各専門家によるフォローが続けられている。 今回の「統一行動」の目的は、第一に、医療・法律・年金・労災・福祉サービス・施設説明などの生活全般にわたる包括的な生活支援行動を通して、野宿生活からの脱却を促進するきっかけを作ることとされた。一方で、行動に参加する側は、種々な問題の解決手段を持つ多様な職種の協働関係とネットワークを作ることにあった。医療相談は即日解決できるか?相談は具体的受診と結びつくか?という、いわゆる出口問題は、根本的に解決したわけではなく、むしろ取組みが大きく深くなれば更に困難な状況が生まれるジレンマも抱えての計画、準備過程であった。 三十日の統一行動は、多くの参加者と相談者という結果を生んだが、釜ケ崎地区外での野宿生活者に対するこのような取組みは、行政サイドの巡回相談を補完するものに終わるのではなく、むしろ解決に向けて支援を促進させる役割を担っており、取組み自身が解決能力をつけていくことも展望される。 三〇統一行動には、釜NPOや釜ケ崎講座に関わる専門家やボランティアも各領域で参加した。釜ケ崎地区外でのこの様な「野宿生活者支援行動」にも、更に取組みが要請されているだろう。 |