釜ヶ崎講座ニュース  NO.5

2002.12.17 

   

■ 12月7日(土)第4回「講演の集い」を行います

7月31日、参議院で「ホームレスの自立等に関する特別措置法」(野宿者支援法)が、全会一致で成立しました。法は失業―野宿問題について、国・地方自治体が責任を持つことを明確にしており、野宿生活者に「就労の機会の確保」「安定した居住等の確保」を明記しています。しかし法は基本法であり、野宿生活者支援の理念と目標を示したものに過ぎません。就労を中心とした具体的かつ緊急な対策、計画が求められています。  釜ヶ崎反失連は去る9月28日より具体策「公的就労」を求め、大阪城公園府庁前に野営のテントでの野営の闘いに入り、すでに2ヶ月になろうとしています。厳しい冬を前に府・市の具体的な回答が問われています。  さて、私達「釜ヶ崎講座」は、昨年12月8日第1回「講演の集い」を開き、以降皆様と共に釜ヶ崎の問題を考えてきました。来年は1903年第5回内国勧業博覧会が今の天王寺公園・新世界で開かれたことにより、現在の地に木賃宿が移住されて「釜ヶ崎」が形成され100年になります。この機に、釜ヶ崎の歴史や、現在の問題を「釜ヶ崎を大いに語る」として、第4回「釜ヶ崎講座」を開きます。今回は、「講座」の事務局で釜ヶ崎日雇労働組合・釜ヶ崎反失連の藤井利明さんに「釜ヶ崎の闘いから」を、前回の第3回目の「集い」の講師大阪市立大学の島和博さんに「釜ヶ崎の歴史―寄せ場の変遷」を、「大いに語って」いただきます。  皆さん、釜ヶ崎を共に考えていきませんか。


日時 12月7日(土)午後6:00開場 6:30開演
会場 エル・おおさか(府立労働センター)709号室
大阪市中央区北浜東3−14
電話 06−6942−0001
交通 地下鉄・京阪電車「天満橋」「北浜」下車8分
講師 藤井 利明氏(釜ヶ崎日雇労働組合・釜ヶ崎反失連)
島 和博氏(大阪市立大学 文学部社会学助教授)
資料代 500円
ビデオ上映 (特別編集版です)
挨拶 釜ヶ崎就労・生活保障制度実現をめざす連絡会・他





■ 9月13日「野宿者自立支援法成立!今、私達は何をすべきか」シンポを開きました
   140名が参加していただきました。
   (HPに当日資料掲載していますので参考にしてください)


−経過ー
去る7月31日、通常国会の最終日、野宿者自立支援法=「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」が成立しました。
 9月13日に、9・13シンポジウムの集い「野宿生活者自立支援法成立! 今、私達は何をすべきか」を、エル・おおさかで開きました。この集いは、釜ケ崎=大阪より、昨年6月21日、七百名の結集で「法案早期成立に向けた集会」を開き、共同した闘いを創り上げてきたNPO釜ケ崎機構、連合大阪、部落解放同盟大阪府連の三者等に、昨年末連続の講演の集いを開催してきた私達「釜ケ崎講座」が加わり、「9・13シンポ実行委員会」を形成し主催したものです。「講座」は第4回目の「講演の集い」を準備していたところでしたが、成立後広い結合で集会を開く意義は大きいと判断し参加しました。


−初めに−
集いには、140名が参加し、会場からあふれるばかりでした。
 最初に、司会として「釜ケ崎講座」の渡邊充春が、シンポの意義について述べました。93年に釜ケ崎反失業連絡会が結成され、府・市に対し施策を国に求めよ、と運動を開始した事、運動の長い取り組みが重なり、連合大阪の取り組みから民主党案への発展があった事、両者を中心に昨年共同した集会を持つなどの取り組みの上に法案成立がなされた事、その法の意義と活用により、今後の取り組みの方向を探るためシンポを持つに至った事を報告しました。
 連合大阪の伊東文生事務局長が主催のあいさつをのべた後、来賓として民主党の衆議院議員の鍵田節哉さんが発言しました。
 鍵田さんは、民主党として、釜ケ崎の現実を見すえ、現場からの要求を聞きながら、反映させるための法案作りを行ってきたこと、野宿は強いられ行われていると見る事も出来ない国会内の多数の中で、まず民主党として提出したこと、提出と同時に各省庁のかけひき、綱引きにも会い、一定まとまりかけたが継続審議となり、今国会に与党案として再提出されたこと、ここで「公共施設の適正な利用の確保」の条項が盛り込まれたが、法案成立の妥協でもあるが、これに対しては、「運用に関する件」として衆議院厚生労働委員会で、この規定でホームレスを排除することを防ぐための決議が全会一致で採択されていることを報告されました。


−パネラーの発言−
シンポにおいては、連合大阪中小対策部長の田中滋晃さんがコーディネーターをつとめ、4人の方が意見を述ました。シンポはまず、パネラーが「法成立の意義」について述べ、会場からの発言の後、また各パネラーが「今後の方向について」述べましたが、発言をまとめて報告します。

「本田哲郎さん」
 釜ケ崎就労・生活保障制度をめざす連絡会(釜反失連)の共同代表の本田哲郎さんは、93年10月に釜ケ崎反失連として府・市会に、府市連名で国に対し、「釜ケ崎総合対策に関する要望書」を提出されたいと請願の形で提出した要求が、出発点になったことから紐解きました。この出発時、反失業連絡会内部の「共通認識」として要望のひとつに、「釜ケ崎を今後も[労働者の街]と位置づけ、労働を通じて社会参加の道を求める人々の街」であると認識する基本があった事、また、法制度での課題解決の道もおろそかにせず、市会・府会・国会での課題提起と決議をうながす運動を展開すると当時から確認しており、やっと法として制定された意義は大きいこと、中には不安な条項も含まれるが、なによりも、野宿者に対する施策が国の、また、地方自治体の責任であることが義務づけられたことが重要であることを確認したい、労働を通じた社会参加を通して、労働者の尊厳の回復を図る運動として更に発展させていきたいと、決意を述べられました。

「要宏輝さん」
 連合大阪・中小労働センター所長の要宏輝さんは、法の成立の意義を労働運動の立場から見ると、ひとつに、従来、雇用保険と生活保護しかないセーフネットに自立・就労を軸とした網が張られたこと、ひとつに、失業者(360万の完全失業、求職をあきらめた450万、340万のフリーター等)1000万という状態に対し、従来の分配が適正な社会をというだけではなしに、社会再参画(一方での社会包摂)と、雇用・住宅・医療・福祉・教育の総合施策を講ずることが明記されたこと、このことの運用次第ではILOのいう「尊厳ある労働」(ディセント・ワーク)の道をも含んでいる事を重要視し、予算措置、更なる法制度の拡充や公的就労・仕事起こし等の課題にも方向を向けていく必要を述べられました。

「島和博さん」
 大阪市立大学文学部社会学助教授の島和博さんは、釜ケ崎の生活実態調査に取り組んできた立場より、基本は釜ケ崎における「寄せ場」としての機能の弱体化と、労働市場の再編結果として野宿生活者が増大してるという事態の中での、また労働力政策や福祉政策まで含んだ「改革」が押しすすめられている中での法成立という性格を改めて把握しておくことが重要であること、その中では、政府の福祉システムの限界が見え、国と行政が従来排除相手であった労働組合、民間団体、そしてNPOに向かい合わざるを得なくなっており、そのせめぎあいの中で、この法を積極的に活用していく事画重要である事を述べられました。

「富田一幸さん」
 西成地区街づくり委員会事務局長の冨田一幸さんは、この民主党案を基礎とした法の大事な点は、釜ケ崎・西成の「街の問題」を、自民の柳本議員の街起こしでの「街」を問題にした視点ではなく、そこに住む生活する「人間」の視点に立っている点を大いに見る必要があることを述べました。同和行政からの経験から見れば、特別措置法ではあるが、未だ「基本法」であり、「実施計画」とセットになり初めて意味を持ち、地方自治体の「計画」への政策提案が重要である事、民主党案の性格は社会包摂(ソーシャル・インクルージョン)でも「トランポリン」のような政策としての理念が含まれ、重要な役割を持っていたと評価できるのではないかと述べ、また、従来の「就労か保護か」という問題の立て方から、「半就労・半福祉」の就労支援事業の創出という性格を押しすすめる事が大事ではないか、そのための自治体発注事業の改善、民間企業でのトライアル雇用などの条件整備、もうひとつに「受け皿」としての事業体の創出整備があげられ、西成地域での具体的な街づくりに連動させて運動と活動を定着化させる重要性、可能性があることを、釜と連なる西成地区の立場から述べられました。


−まとめ−
 意見交換のあと、最後にNPO釜ケ崎支援機構理事長の山田実さんが、次のように述べました。法制定の現在でも、ある面では法の中にこっそり規定されている対策は、これまでの「自立支援」の延長でしかない、また、今から、調査し計画し予算確保という段取りで立てられている。釜の野宿労働者の現実は、そのような段取りを待っておれない厳しさであり、早急な施策が必要である。
 これまで、自立支援センター」で1年半で1千名入所したが、その内完全就労に至った者は1割にもみたない。「就労あっせん」という施策では対応できない多数の野宿生活者がいるということである。「公的就労の創出確保」を、2年計画等ではなく早急に出す事が必要であることを強調し、釜ケ崎の現場から府・市・国に対し、要求し、行動するしかないことを述べました。
 シンポは、法制定の意義を共通に確認しつつ、また法の持つ可能性について各々の立場から提起する内容となりました。一方で野宿の厳しい現実から、法制定という成果の直後ながら、具体策の、早急な実施に向けて要求を出し、運動をつづける事の必要性を、パネラー、参加者が確認する場となりました。また、当日は行政関係の参加も多く見られましたが、シンポ実行委員会では、今後、行政も巻き込んだシンポ、議論の場を作る必要があることが提起されました。





■ 支援法成立後の闘い

野営闘争へ
 9・13シンポの集いの中でも明らかになったように、やっと実った法制定後も闘いがなければ、調査も計画も、ましてや具体的解決策も出てこなことは明らかです。7月末の法成立後の運動の動向について報告します。9月10日、釜ケ崎反失連や新宿連絡会等全国七団体により、対厚生労働省・国土交通省交渉が行われました。未だ基本方針が策定されておらず、具体的回答は未だ提出されませんでしたが、法制定後、全国の運動体がいち早く実施策を求めて、全国行動を行った意義は大きいものがありました。
 釜ケ崎では翌9月11日、対府・対市交渉を釜反失連が行いました。
 釜ケ崎の要求は、厚生労働省の概算要求にみられた、自立支援センターからの仕事あっせんなど自立支援事業の拡張を基本とする方針では不十分であり、直ちに野宿から脱出を果たせるような公的就労を創出せよ、を中心とした具体的解決策を要求したものです。従来、全国的に先駆的事業も行われてきた大阪・釜ケ崎であり、人数的にも大阪・釜ケ崎で具体的な仕事の創出こそが必要となっているのだす。調査し、「二年後」には計画を、という悠長な状態ではありません。これまでの自立支援センターと公 園シェルターをつくる従来どうりの対応策を繰り返させる訳にはいきません。
 府市の回答は、「ホームレス基金を国につくらせ、その中で公的就労を自治体の方針でやっていきたい」と、建前を掲げるだけでした。
 釜ケ崎反失連は、まず野宿から脱出できる仕事を求め、9月27日より、去る6月野営闘争に引継ぎ、大阪城の府庁前遊歩道公園に野営陣地を設営し、28日より野営闘争に突入しました。約350名が泊まり込み、30日より、府議会初日から傍聴行動に突入しました。

野営闘争継続へ
 9月28日から、大阪城公園の府庁前遊歩道の野営テントを設営し、本年2度目の野営闘争は連日、300〜350名の仲間達が、闘いを続けています。
 大阪府・市に対する要求は、既に6月13日に、「失業─野営対策の総合的推進を求める要望」として提出されています。ここには釜ケ崎反失連の失業─野宿問題に対する考えと、具体的な、かつ詳細な要求が提出されています。「法」成立後も、基本は、この「要望」であり、是非全文を見て、釜ケ崎の要求を見てください。(釜ケ崎反失連HPに掲載されています。http://ww.h2.dion/ne.jp/~kama-hsr です。「釜講座」のHPからもリンクしています)

 9月30日から開始された府議会の傍聴行動は、10月23日の閉会まで連日取組まれました。1日も休まず、野営陣地より代表団が、あるいは100名規模で傍聴席を占拠する規模で取組まれ、府知事の、各政党の動向に対し、反失連の要求を押し出しいきました。
 前述の6月要望を基本にし、8月8日の緊急要求、9月11日には公的就労制度要求を、更には10月17日は55歳以下の失業─野宿生活者の対策についての要求と、矢継ぎ早に要求を提出しています。各々要求時には、野営陣地より全ての労働者が府庁へ、市庁舎へ押しかけ、要求を提出し、代表団の交渉を見守る行動を行っています。
 府・市の回答は、太田知事の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の成立は大きな前進」との答弁に留まり、国の基本政策待ち、従来のシェルターと支援センターでの就労あっせんという路線をいまだ出るものではありません。厚生労働省が、補正予算で「緊急地域雇用創出特別交付金」の積み増し、地方自治体の本年度分の前倒し実施という方針を出す中でも、府・市の態度はまったく前進の見られないものす。この数年、野営闘争の期間は1ケ月位が続いていましたが、反失連は10月末、越冬時期までの延長も辞さない固い意志で、要求実現のため野営闘争の延長に入りました。
 また、こうした連日の野営闘争の中から、9・29関西新空港現地闘争に「勝利号」で参加し、更に10月7日の米領事館抗議行動に100名が、また更に1021国際反戦デーには、朝より府庁・市庁舎に対し、抗議の、反失業「仕事よこせ」デモを350名でやり抜き、夕方より剣先公園での国際反戦デー関西集会に合流しています。また、10月28日には来日したジョゼ・ボベさん(フランスの農民活動家・70年代ラルザック基地拡張反対運動に勝利・最近は99年マクドナルドの店を解体、3ヶ月の投獄を受けた)の集会に、「反グローバリズム」を掲げ学習してきたこの間の反失連の立場から100名が参加するなど、政治闘争、諸課題への闘いを広げています。
 釜ケ崎反失連の野営闘争は更に継続され、闘いは仲間を更に強化し、全国の反失業・野宿に対する運動を牽引しています。




※ 会員の皆さん!「講座」参加の皆さんへ

★ 「12・7」第4回「講演の集い」に参加してください
    お待ちしています!


★ 大阪城野営闘争に参加して見ませんか

 延長された釜ヶ崎反失連の運動は厳しい寒さの中、緊急、かつ具体策を府・市から引きずり出すまで350名余の労働者が野営陣地で頑張っています。何ができるというわけではありませんが、労働者の市民への情宣ビラまきやカンパの訴え、時には府・市への要求・抗議行動などに付き合うのはいかがでしょう。ふじいに連絡いただければ現場案内いたします。土・木の夜は映画会・コンサート(喉自慢)

★ 「講座」の会員になってください
 特典はありません。あなたの会費が「講座」を支えます。反失業闘争へのカンパもよろしく。必ず現場に届けます。

★ 「講座」のメール・HPが立ち上がりました
ぜひ開き・感想・意見メールで送ってください。まだ不十分なホームページですが、50の手習いですので少しづつ見えるものにします。










大阪城公園府庁前野営陣地


大阪市役所前での抗議行動


9・13シンポ 左から田中、本田、要、島、冨田各氏


9・13シンポ 140名参加(エル・おおさか)