2002年6月13日

大阪府府知事 太田房江様

大阪市市長  磯村隆文様

釜ヶ崎就労・生活保障制度実現をめざす連絡会

共同代表:本田哲郎

山田 實

 

失業−野宿対策の総合的推進を求める要望

 

全国的な失業情勢をふまえて

  失業率の悪化がとまらない。

就業者数が4年連続して減少。2001年の就業者数は6412万人と前年と比べて34万人減少している。完全失業者は340万人と前年に比べ20万人増加、比較可能な1953年以降最多を記録、完全失業率は5.0%と過去最高水準に達した。

就業情勢の悪化傾向は今年に入ってもまったく改善される兆しがない。

5月31日発表の労働力調査によると4月の完全失業率は5.2%、完全失業者数は前年同月比27万人増の375万人。13ヶ月連続で前年水準を上回っている。

  実態をみていくと、さらに深刻である。

ひとつには、1年以上にわたる長期失業者の増加である。今年1〜3月平均の労働力調査の詳細集計によると、完全失業者360万人のうち、30.4%を占め3割を超えている。短期間に転職できる者が減り、長期失業へと押しやられている実情が浮かび上がる。女性の完全失業率(4月)は4.9%と0.2ポイント改善したものの、女性の失業者数自体は前年同月比で12万人増えている。仕事を探すのをあきらめて労働市場から撤退せざるをえなかった層が失業率を押し下げているにすぎない。

ふたつめは、パート・派遣など非正規職員・従業員の急増である。 昨年8月の雇用者(役員を除く)は4974万人。このうち「正規の職員・従業員」は3597万人と前年に比べ98万人減少、「非正規の職員・従業員」は1377万人と前年に比べ64万人増加。今年の1〜3月平均では、雇用者4891万人のうち「正規の職員・従業員」は3486万人、「非正規の職員・社員」が1406万人。正規労働者数が減少させられ、パート・派遣労働者の比重が高まる雇用構造の転換が進み、全就業者数のうち非正規雇用に従事する労働者の割合が28.7%を占めてまでになった。同一労働同一賃金が実施されず、非正規雇用に従事する労働者のための社会保障が充実されていない現状にあっては、階層格差の拡大、貧困化が進みつつある。

みっつめとして、非自発的失業者の比重の増大、とりわけ世帯主失業者の増加である。4月労働力調査によると、非自発的失業者数は前年同月比50万人増で161万人となり過去最多、なかでも倒産やリストラなど会社都合による離職が121万人と高い割合を占めている。世帯主の失業者は108万人でこちらも過去最多となった。

構造改革路線の限界を見すえて失業‐野宿対策を!

  小泉首相を中心とする構造改革派は、生産性が低く非効率な企業を市場から退場させるとともに、公共部門の縮小、財政支出の削減をめざしている。失業(痛み)は避けられないが、構造改革の進展とともに、景気は回復、失業者は競争力をもった企業に吸収されるとしている。

  しかし、現実は構造改革路線を裏切る結果となっている。

財務省6月5日発表の1〜3月期の法人企業統計調査によると、全産業の売上高が前年同期比で7.4%減の331兆8001億円、経常利益は同14.6%減の9兆3881億円で、3期連続の減収減益となった。売上高の減少幅は比較可能な55年以来最大である。設備投資も同16.8%減の11兆533億円と大きく落ち込んでいる。

米国への輸出が好調であることがをベースとなって6月7日に発表された1〜3月期のGDPは前期比1.4%のプラスに転じたが、米国の経常赤字は膨らみドル下落の影響で円高傾向が強まり、輸出だのみの景気回復の限界が見えてきている。デフレ下で企業の低収益性が高まり、設備投資のさらなる抑制が強まる。

  この状況にあって民間企業はリストラを進め生産の効率化をはかる結果、余剰労働力は、仕事を失う。金融による融資が引き締められることによって非効率企業が淘汰され、失業はさらに深刻化する。効率化に成功した企業は黒字を確保するであろうが、経済全体では需要が低迷し、不況はつづく。

 これが、構造改革が日本経済に書いた処方箋である。

  成長が見込まれる分野における産業育成・ベンチャー育成を構造改革派はうたうが、失業問題の根本的解決策ぬきには、一度生命を殺してから人工臓器を移植するような愚策である。「木をみて森を見ず」とはこのことであろう。

 グローバル化の行き着く先、貧困層の大幅な拡大や地球環境の破壊など人類社会の存続をめぐって資本制もまた変節を免れないだろうが、当面モノやサービスを作ってそれを売り、できるだけ短期間に大きな収益を上げる形の経済において、社会生活の破壊を回避していく現段階で最低限必要な課題に取り組んでいくには、労働資源をいかに有効に活用するかという視点をもった政策が、まず実行に移されるべきである。

   民間企業はリストラを実施し採算をとって存続を図るが、この方法を国策として進めても不況は解決されないばかりか、社会生活の破壊という重大な帰結に陥る。労働資源の有効活用という視点からみるならば、非効率部門の整理によって国が作っているのは、失業というもっとも非効率な部門である。

 構造改革推進を市民・労働者に納得させるため、政府は転職支援・社会保障によるセーフティネットづくりを形ばかり標榜しているが、ひとたび失業させられ、失業状態が長期化すれば、転職支援・社会保障によるセーフティネットにひっかかることはできない。また、転職支援・社会保障によるセーフティネットはあくまで常傭労働者を対象としており、拡大しつつある派遣・パート労働者、いまや建設業界の捨石となっている日雇労働者、まして野宿労働者に届くものではない。

  構造的失業によって生み出される野宿問題にいかに取り組むのか。

  雇用のミスマッチと簡単に表現され、労働者側のエンプロイヤビリティーを高める技能習得がミスマッチ解消策となるといわれているが、構造的失業の問題は労働者個人の努力と自己責任に還元しえない。在職中の技能習得への助成がセーフティネットであるかのようなまやかしが通用するほど現実は甘くない。

  完全失業者について、仕事につけない理由の割合を年齢階級別にみると、45〜54歳、55歳以上では、「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」が最も高い割合となっており、特に55歳以上で52.9%を占める。不況期において民間企業が求めるのは、即戦力である。必要とされる技術には養成に5〜6年かかるものも多く、中高年を雇っていては習得時に定年という問題が生じて企業にとっては非効率となる。特に製造業や建設業などの底辺を支える不安定就労に従事してきた中高年労働者が失業した場合、いくらサービス業の求人があったとしても年齢制限や就労習慣上のハードルが存在し、転職は容易ではない。加えて不安定就労に従事する労働者は、居住面においても住み込みや寮生活など不安定なことが多く、失業から野宿状態へと陥りやすい。98年釜ヶ崎センター開放利用者へのアンケート結果が示すように、釜ヶ崎の野宿生活者のうち2割は釜ヶ崎に来て5年未満であり、新たに野宿生活を余儀なくされる中高年者の流入が続いていることがわかる。

  中高年の失業問題解決のためには即時的な利潤追求とは異なる新たな価値の創設が必要である。たとえば、森林営繕や里山保全など100年スパンの視野をもって効果を算定すべき事業、高齢者のゆっくりとした時間の流れが社会生活の円滑化につながるような福祉サービスなどについては、非市場分野を担当すべき国・地方行政が責任をもって実行すべきである。

  15〜44歳の若年層では「希望する種類・内容の仕事がない」の割合が最も高い。これは企業のリストラによるアウトソーシング(外注化)が進められていること、規制緩和によってパート・派遣労働の比重が高まり、将来に希望を持てる職種が減少していることの現れである。パート・派遣労働は不安定であるとともに賃金が低く抑えられているため、若年層を中心に親世帯とともに生活を営む者が増加している。今後親世帯の高齢化とともに若年層の野宿生活者の急増が予測される。

  同一労働同一賃金の実施、パート・派遣労働者に対する社会保障の充実、オランダ型ワークシェアなどを実現して構造的失業を解消する総合的政策を進めるべきだが、そうした社会構造の変革に先駆けて、不況期に適する経済政策を実施することを念頭に置き、緊急に就労によるセーフティネットをつくるべきである。

  緊急に就労によるセーフティネットを。

  労働者のうち5%を超えている失業者が仕事に就くことができるならば、ひとり当たりの生産量が一定であると考えた単純計算ではあるが、現在のGDP約500兆円の5%、すなわち毎年25兆円以上の価値がつくられることになる。

 失業させられる人口が増加し、就業していても失業の不安が広がっていては、消費意欲が減退し、モノが売れない状態が続く。モノが売れないから、企業は設備投資を控えている。リストラで規模を縮小し生き残った企業が、需要の見込みなく、投資をすることはない。この点を含めると失業の経済に対するインパクトがわかってくる。

  不況期には、好況時に実行できなかった事業を、国と地方行政が実行に移すことで、失業問題の解決(労働資源の有効活用)、内需の拡大、社会生活の質を向上させ、地球環境の維持に貢献する部門の成長、いずれ見込みのある市場を拡大するための基盤整備を図るべきである。

 より戦略的な新しい公共事業を、従来の重厚長大型事業にかえて実施し、雇用の安定をまずもって確保すべきである。

  5%を超える率で400万人規模の失業がある現在、失業率を3%台まで引き下げるとするなら、100万人から150万人の雇用を生み出す必要がある。

 150万人を雇ってひとり当たり年で250万円を払ったとしても総額は3兆7500億円ですむ。 

   就労によるセーフティネットの計画・実行については、失業手当や生活保護費を含む社会保障費が増大し、支えきれなくなっているのに新たに予算を必要とするものなど実施できないという主張もでてこよう。

 財務省は、社会保障予算の増大を抑えるため、失業手当受給資格の条件締め付けや生活保護費の切り下げ方針を打ち出しているが、社会不安を助長してさらに消費を冷え込ませかねないこうしたやり方を持ち出そうとする背景には、「市場で生き残れず失業するのは、労働者の能力の低さに原因があり、こうした失業者のための社会保障を十分なものにすると、全体的な働く意欲の減少につながり、経済の活力が低下する」という誤謬がある。

不況期に社会保障費は増大するが、その原因は働く場がないからである。経済・労働問題に責任を持つことから、国、地方行政は逃避できない。「国は国民を解雇できない」という大原則にかえるべきである。

社会保障費の抑制と不況からの脱出という大問題を解決するためには公的就労によるセーフティネットがきめ手である。

  関西圏の失業―野宿問題について

  関西圏の失業問題はさらに深刻である。近畿2府4県の4月失業率は全国平均より2%以上高く、7.3%に達している。3月より0.2ポイント悪化し、2ヶ月連続で過去最悪水準を更新している。南関東(1都3県)が前月比0.2ポイント減の5.5%になったのと比べると近畿の雇用情勢の厳しさが目立つ。産業構造の転換が遅れているための地盤沈下と説明されるが、それだけではない。全体的な経済規模が縮小しているなかでは、本社機能が東京へ引き上げられてしまう。そのため東京の景気はさほど悪くはならないが、地方経済の荒廃が進む現象がおこる。米国主導のグローバリゼーションの影響も看過しえない。中小の製造業が中心を占めている大阪経済では、大企業の合理化が、直接中小企業の経営悪化→不況へと直結する。地域の中で支えあって失業の発生を抑えてきた社会機能が破壊される結果、失業の深刻化がおこっているのだ。

  地方行政は、グローバリゼーションと競合しうる自律した地域経済の確立に責任をもって臨むべきである。まず不安定雇用に従事してきた労働者を中心に貧困化が進められ、野宿生活を余儀なくされる者が増加していることに対してしっかりとした公的就労によるセーフティネットをつくり、失業への不安を解消するとともに、中小企業があたらしい分野に展開していけるような素地をつくるべきである。公的就労によるセーフティネットを創設することで、地域に密着した環境や社会生活の質の向上に資する分野でNPO・事業協同組合等の成長を促し、自律した地域経済および社会をめざすべきである。

  これまで雇用問題は、行政的には国と都道府県が担当する課題として位置づけられてきたが、国の雇用対策推進法等が改定され、市町村においても地域の実態に見合った雇用施策を行うことになっている。この改定は国、府、市がそれぞれ労働政策について責任を担うというものであるはずだが、現実には、3者が責任のなすりつけをする口実とされてしまっている。国・府・市が、行政カテゴリー内での調整を行なうだけの現状を越え、失業−野宿問題の解決に向けて、綿密に政策検討を行なって相互に責任を担い合っていく態勢の早期確立が望まれる。

  大阪府下に1万5000人の労働者が野宿生活を余儀なくされている。堺市や枚方市など大阪市以外でも野宿生活者の数は増加している。野宿生活者が活用して野宿からの脱出の足がかりとなるサービスが府下全域でつくられていく必要がある。各市町村の実状に即した特別就労事業の実施を促すとともに福祉窓口による支援の充実を図り、野宿生活者の支援活動を行なうNPOを育成するなど、大阪府が主導的役割を果たすべき課題は多い。

  野宿への防止をはかるため釜ヶ崎日雇労働者の就労対策の拡大が焦眉の課題

  大阪市が大阪市立大学都市環境問題研究会に委託して実施された「野宿生活者(ホームレス)に関する総合的調査研究報告書2001年1月」によると野宿生活者の6割が釜ヶ崎での就労経験を有し、日雇労働者から長期失業状態へと転落、野宿を余儀なくされていることがあきらかになっている。野宿生活者の多くが現在も釜ヶ崎のセンターを求職と仕事のための情報交換の場として活用していることからも、野宿対策における釜ヶ崎の比重は重い。

  相対制度では、就労意欲があり、必死に求職をしていても、簡単に仕事にありつけない現状がある。景気回復を待望して民需を頼んでも、建設労働市場が大幅に縮小しようとしている現在にあっては、釜ヶ崎で野宿しなくともすむだけの求人が今後出てくることは全く予測できない。また公共事業を含む建設出来高(近畿)と日雇(現金)求人数の相関を示すグラフを見ると、90年代に入ってからは、出来高と求人数は比例していない。90年代の不況を通じて、建設労働者の全数は、近年微減傾向ではあるが維持されていることをみても、釜ヶ崎の日雇労働者が雇用対策から切り離され、放置されている現状が浮かび上がる。

  また、釜ヶ崎労働市場の機能が低下しているにかかわらず、釜ヶ崎への新たな不安定就労・失業層の流入が、続いていることにも注目せねばならない。社会全体から労働力として不要とされた層が集中して通過する場所、いわば野宿へと送り出す漏斗の役割を現在釜ヶ崎が果たしている。その意味で、大阪府域において野宿への防止を図るには、社会全体の安全網の張りなおしに先駆け、緊急に釜ヶ崎における就労対策を行うことがもっとも効果的である。

  長期失業から野宿へと至り、野宿から路上死へという連鎖をたちきるため、今こそ、日雇労働者に対する直接の就労支援・仕事の保障に乗り出すときである。

  求人数が激減する中、働いて失業保険給付を受けることができない労働者が増加している、いわゆる白手帳による失業保険の空洞化は、不正受給の規制だけで対処しきれる問題ではない。失業保険を維持できるだけの就労面でのバックアップに積極的な踏み込みを果たす時期にきている。かつての日雇労働者雇用奨励金は長期失業を余儀なくされている日雇労働者には届かず、直接的な就労支援を実施しうる仕組みを構築せねばならない。今後も野宿生活者の増加が予測される緊急の事態において環境保全等を目的とする新型公共事業に日雇労働者が大きく参与できる仕組み、他成長分野への転換支援を実状に即して実施する仕組みを早急に確立すべきである。

  まちづくり・ソーシャルインクルージョンの視点で

  野宿生活者は、産業構造の転換と構造的不況・失業に社会の紐帯が耐え切れなくなったため生み出されてきた。それゆえに野宿生活者は、今も社会の一員であり、これからもそうである。

  非市場領域である人間相互の社会生活の営為が、競争原理によってつらぬかれようとしてしまっている現在、野宿生活者は敗残者として社会から排除されている。本来、相互連帯によって解決され、市場の支配をゆるさない領域をいかに育み、「人の切り捨てをゆるさない」社会をつくるかという問題が、都市における公共地占有・治安の問題として浮上してしまうことが、社会的排除を端的に表しているといえよう。

  社会的排除にかえて、社会再包摂(ソーシャルインクルージョン)の視点をもって失業−野宿問題に取り組むことが、重要である。

  ソーシャルインクルージョンの視点から見ると就労によるセーフティネットの別の意義が明らかになる。仕事による社会参加、コミュニケーション、自己実現。この3つがポイントである。

 この3本柱は、今後の「成熟した福祉社会」の土台をなすものである。すなわち公的就労によって非市場部門のサービスと価値を育成するとともに、それによって守られ、維持されるボランティアや生きがい労働によって、社会的孤立をさけ、人生のいついかなる時においても再出発と自己実現が可能である社会である。

  ソーシャルインクルージョンは、市場を相対化し、地方分権を進めながら、地域社会の再生を進める社会再統合を抜きにしては実現不可能である。この課題は「大きな政府」か「小さな政府」か、行政主導か民間主導かという問題を越えた第3の道の選択によって実現しうる。それはNGO・NPOなど民間セクターと公共セクターとの連携とネットワークによって可能である。社会再統合の問題が現在まちづくり運動として地域住民の手によって取り上げられつつある。

  短期の目標として釜ヶ崎を始めとする野宿生活者の集住地域で、ソーシャルインクルージョンの理念に基づくまちづくり運動を総合的に支援する行政の態勢を早急に整える必要がある。

  野宿生活者および野宿経験者が救済の対象として固定化されてはならない。仕事による社会参加の道が開かれるべきである。

  財源の確保

  全国の野宿生活者数は、バブル崩壊以降急速に増え始め、現在も増加傾向は変わらない。全国5万人の野宿生活者の野宿からの脱出を支援する総合的な施策を実施するため、必要な財源を準備する必要がある。

野宿生活者、あるいは野宿へといたる恐れが間近に迫った者が活用する、就労によるセーフティネットのため全国で年間2000億円程度の財源が最低必要である。

加えて、生活困窮者が野宿へいたることの防止、福祉施策の充実、ソーシャルインクルージョンすなわち野宿生活経験者が社会の一員として生活し自己実現していくことをサポートする仕組みと環境づくり、野宿生活経験者が集住するであろう地域の街づくり支援等のための財源を確保する必要がある。

 (失業−野宿対策としての就労によるセーフティネット整備に年あたり2000億円という試算は、2%失業率を減らすために公的就労事業を行うとして年間3兆7500億円必要であることは前文で述べた。2%に相当する150万人のうち5万人が野宿生活者だとすると4%を占めているから3兆7500億円×0.04=1500億円。公共事業における人件費が7割を占めることを目安として事業全体の予算規模は1500億円÷0.7=2142億円となる。)

   以下、緊急を要する失業−野宿問題の解決に向けて要求する。

T ホームレスの自立支援法の今国会での早期実現を求める要請を府・市共同でおこなうこと。

  地域の実状に即した実効性ある野宿生活者の自立支援のシステム作りと財源の確保のためには、特別立法が必要不可欠である。ただちに要請されたい。

  U 就労対策

  (1)大阪府下及び大阪市全域の野宿生活者に対する就労対策

  @野宿からの脱出・野宿の防止を可能とする特別就労事業を各自治体において実施され たい。

A野宿生活者および生活困窮者を対象とする長期職業訓練的内容をもつ公的就労制度を確立、実施されたい。

・働きながら必要な技能を身につけることを可能とする公的就労制度を確立されたい。

・各職業安定所に野宿生活者および生活困窮者を対象とする長期訓練受け入れ窓口を設置、福祉行政とも連携をとりつつ当面野宿しなくともすむ生活を確保するとともに、自立を目標とする技能訓練を実施されたい。

B野宿生活者の実状に即した就労支援を行なうNPO等を育成するため、国が失業―野宿対策に特化した助成金制度をつくるよう要望されたい。

C野宿生活者のための公的就労を実施するにあたり、環境や社会生活の質の向上に資する事業に対するニーズ調査を実施されたい。

D自立支援センター入所者が@Aの公的就労制度を活用して就労による自立を果たせるようにされたい。

  (2)釜ヶ崎における就労対策

  @高齢日雇労働者のための特別就労事業を大幅に拡大されたい。

 

A日雇労働者を対象とした特別就労制度を作られたい。

 

BAの特別就労契約期間を終了する労働者のうち希望者を対象とする長期職業訓練的内容をもつ特別就労制度を実施されたい。

習熟に一定期間を必要とする職種での技術取得を支援する仕組みが、日雇労働者の転職支援、就労機会の確保のために欠かせない。日雇労働者に安定した居住状態を持つ者が少ないことを顧慮し、就労しながらの長期訓練制度を整備し、もって野宿への防止策を雇用の面から実施することが可能になるようにされたい。職種によって必要な訓練期間の長さは異なるだろうが、営繕・造園技術を求職の際、求められているレベルまで高めるには最低二年程度の期間を要する。

 

C建設労働からの転出を希望する日雇労働者に対する長期職業訓練的内容をもつ特別就労制度をつくり、受け入れ窓口をあいりん労働公共職業安定所または西成労働福祉センター等に設置されたい。

   ・ 建設労働から将来性のある他職種へと転職を図るには、高度な技能を習得し、就労機会を確保しやすくする必要がある。そのためには、必要な期間を職業訓練に専心することが可能でなければならない。失業保険が短期間しかつづかない日雇労働者が、そうした職業訓練を受けるためには、長期職業訓練的内容をもつ公的就労制度をセットすることが不可欠である。すでにUにおいて契約型特別就労制度から長期職業訓練的内容をもつ公的就労制度への移行の仕組みについては述べたが、それ以外に、建設労働を中心とする日雇労働からの延長性を持たない新たな成長産業部門への労働力移動助成のためのシステムを早急に確立すべきである。介護やコンピューター作業等の長期職業訓練を実施するとともに、職種転換にともなう精神面でのケア・マナー教育等訓練に盛り込んで行なわれたい。

 

D長期に渡って野宿状態が固定されている日雇労働者に対して、実状に即したケアつき職業訓練、仕事紹介をおこなわれたい。

     失業‐野宿が長期にわたって続くと、精神・身体両面にダメージが重なり、即座には一般的な仕事に復帰しにくい。ダメージが長く大きければ、その数倍の時間とケアが必要である。福祉行政による住居の確保・生活保障とリンクして、就労面においては(1)都市雑業的就労の開拓と斡旋、(2)長期野宿生活経験者を対象とする授産事業を実施されたい。徐々に働きながら生活できるようになる就労支援プログラムを立案、実行されたい。

 

E南職安跡地等を利用して、野宿生活者のための就労・生活支援センターを開設されたい。

      特別就労制度の大幅拡大に伴い、センターでの紹介及び特掃事務所の受け入れ機能を飛躍的に向上させる必要があることを考慮して、野宿生活者の就労支援をより実情に沿ってていねいに推し進めることにフィットする就労紹介事業、寄り場機能、職業訓練場、リサイクル事業所、授産施設、労働および生活相談所を併せ持った就労・生活支援センターをあらたに設置されたい。

 

F現行掛け捨てともなりうる雇用保険支給条件の緩和を、引き続き強く国に要望されたい。

      働いて月13枚以上印紙を貼れる労働者と、努めて求職に励み、ぎりぎり可能なだけ仕事で働いても印紙を張り切ることができず失業保険を全く受給することができない労働者との間の格差が是正されるべきである。貼った印紙の枚数が月13枚以下であっても枚数に応じて失業保険を受給しうるよう制度改革をおこなわれたい。もって日雇労働者の就労意欲・能力の維持に努めるとともに、就労による野宿への防止策とされたい。

  V 野宿生活者の社会再包摂のための施策

  @野宿経験をもつ生活保護受給者を対象とする生きがい労働の開拓

 

  A野宿経験者が集住する地域での福祉サービスの充実

  ・高齢に至った野宿経験者が利用するデイケアセンターを設置されたい。

・社会的孤立を回避する訪問活動を行われたい。

  ・宅配食事サービスを立ち上げるとともに野宿生活者のための就労確保の場とされたい。

  B住居への入居支援

 

C野宿生活者ケアセンターの設置

 

 

  D自立支援センターの居住性を改善されたい。

  ・長期滞留を避けさせ、就職による自立を促すため、厚生面を削ることは、人のサポートにおいては逆効果かつ非効率である。就職活動への意欲増進を図るにはゆっくりと鋭気を養う個人スペースおよびプライバシーの確保が欠かせない。U、(1)、Dの公的就労によって出口問題を解決することで自立支援センターの機能向上がはかられるべきである。

以上