安全運転の極意 〜洗練されたドライバーに成る為に〜

 

「安全運転」とは何か?運転テクニックのことか?それともちんたら走ることか?それともペーパードライバーでゴールド免許を貰うことか? 私はこれらを指して「安全運転」とは定義しない。安全運転=テクニックとは思わない。もちろん運転はヘタクソより上手い方が良いだろう。車庫入れなどでモタモタして塀や電柱に擦ったりしないだろう。

しかし、走行中に事故らないのはタダ単に車をコントロールするだけでは事足りないし、ましてや反射神経でもない。
二つ目のちんたら走る(ゆっくりと恐々走る)というのもいただけない。何故なら後続車をイライラさせてしまって、あおり行為などの危険運転にはしらせてしまう恐れがあるからだ。
また、三つ目のペーパードライバーは無免許とほとんど同義だ。

ではどういったことが「安全運転」なのか?

 

それは・・・

 

いかに危険予知するか」だ。

あなたも教習所で習ったことだろう。「危険予知」の時間は数時間あったはずだ。これが「安全運転」に必要不可欠の知識であり、最大のテクニックであることを知っている、あるいは意識している人は少ないように思う。
少し運転テクニックに興味を持っていたり、運転歴数十年の経験を持っていたりすると「自分は人よりも車の運転が上手い」「自分は長年車に乗ってきているので大丈夫」などと思ってしまい、本当の安全運転テクニックを学ばなくなってしまう。

何度でも言うが事故を回避する本当の安全運転テクニックは「反射神経」でもなければ「ドライビングテクニック」でもない。ひたすら危険を予測する「危険予知」だ。

なぜ私がこのように断言できるかと言うと、それは鈴鹿サーキットでのレース経験があるからだ。
ここで私のことを少し話そう。私はプロレーサーに成るのが夢でレーシングカートや自動車レースを経験してきた。その夢は志なかばで断念せざるを得なくなったが、ふつうの人よりは運転技術のことについて真剣に取り組んできた。もちろん、公道での運転経験も仕事などで乗っているので豊富にあるつもりだ。
このページでは、そんな私の知識と経験上感じたことを包み隠さず披露しようと思う。あなたの今後の運転人生にきっと役に立つだろうと自負している。どうか最後まで読み進んで欲しい。


ドライビングテクニックをもっていれば、反射神経が発達していれば事故を回避できると勘違いしている人は多い。いくら車をコントロールするテクニックを持っていても、反射神経が良くても物理的な運動法則を曲げてしまうことは出来ない。

それは物体には「慣性の法則」が働くからだ。「慣性の法則」とは動き続ける物体は動き続けようとする。その反対に止まっているものはその場所にとどまっていようとする自然の法則だ。 この慣性の力があるからこそ「車は急に止まれない」のである。

また、コーナーリング途中の車には遠心力という力も働く。回転の中心から外へ外へと飛ばしてしまう力だ。高速道路のカーブなどで曲がりきれずに事故ってしまうのはこの力が働いているためだ。「車は急に曲がれない」のである。

このように走行中の車には様々な物理的な力が働いているので、小手先の運転技術や反射神経などは本当の安全運転テクニックには役に立たない。これはレースでも同じで、目の前で突然スピンされたらほとんど回避することは出来ない。(もっともレース中は危険だとわかっていてもアクセルを踏まなければならないのでこうなってしまう。練習走行では無理に危険を犯してまで頑張る必要はないので危険を予知して回避する。)

やはり、「危険予知」こそ最良のテクニックなのである。 この「危険予知」の能力を身に付ける最良の方法は教習所でもやっていた「事故が起こる時のパターン」を数多く学ぶことだ。このパターンを多く知っていれば知っているほど、事故を回避できる可能性が高くなる。以下にその具体的なパターンを挙げる。よく見て欲しい。

←右の図を見て欲しい。街中を走っていてよくあるパターンだ。片側一車線の道路だ。あなたは矢印に向かって走っている。反対車線は渋滞している。歩行者が止まっている車をすり抜けて道路を横断しようとしている。歩行者と言うものは、いちいち横断歩道を渡ったりしない。車の陰に隠れている歩行者は発見が難しい。乗用車ならガラス越しに見えるかも知れないが、荷台のあるトラックならば発見するのは不可能だろう。もし、あなたが何の注意も払わず減速もせずに走っていたなら、タイミングが悪ければ確実に人を跳ねてしまうだろう。子供の自転車の飛び出しなど最も恐ろしい状況だ。「こんな所から飛び出てくる方が悪い」と思うのが人情だろうが、車に乗っている方が過失が重いのが普通である。こういったシュチュエーションの場合は、いくら自分の車線が空いていようとスピードは出すべきではない。

←これも街中を走っていてよくあるパターンだ。あなたは交差点を右折しようをしている。反対車線は渋滞中で信号は青なのに停止している。その隙にあなたは右折をしようとするが、バイクが車の横をすり抜けて交差点に進入した。青信号なのでバイクにとっては当たり前の行為だ。しかし、あなたからはバイクが見えにくいので×印のところでバイクを跳ねてしまうかも知れない。また、バイクは注意しているが、その後の横断途中の歩行者に対する注意が抜けているかも知れない。しかも、歩行者は左右から来るのでさらに注意が必要になる。自転車だって走っている。注意深く左右を何度も確認し、ゆっくりと進むしかないのだ。

←これは片道三車線の広めの道路、あるいは高速道路だ。あなた(青)は左側二車線の前方に遅い車があるので、それを避けようと一番右側の追い越し車線にウィンカーを出し移動しようとしている。その時によくやる間違いは、ウィンカーを出しっぱなしで@の場所まで一気に移動しようとすることである。これをやると後方から来る車(緑)はあなた(青)が真ん中の車線(Aの位置)に移動するのか、右端(@の位置)まで来るのか判断に迷うのである。もちろん、緑の車もあなたの車線の前に遅い車が立ちはだかっているのは見える。あなたが右側まで一気に来たがっているのは想像がつく。しかし、そんな注意深いドライバーばかりでないのも事実である。あなたは他人まかせの運転をしてはいけない。この場合はAの位置まで来たらいったんウィンカーを戻し、再度ウィンカーを出すようにしなければならない。私はこういう時は車線の幅の半分まで移動したら、ウィンカーを戻すようにしている。そうすれば自分が一気に右端まで移動しようとしていないことが相手に分かるからである。

←これは上の図と同じ様な状況であるが、この場合はあなた(青)も相手(グレー)も同時に車線変更をしようとしている状況である。この場合もある程度は予想がつく。あなたの前方にも相手の前方にもそれぞれ緑と黄色の遅い車がいるからである。お互いにそれを避けようとして車線変更しているのである。こんな時は賢明なあなたは相手に車線を譲るべきである。相手が譲ってくれるだろうという判断は、他人まかせであって真の安全運転テクニックではないのである。あなたはあなた自身の気持ちとクルマの両方をコントロール下に置くべきなのだ。

←右折レーンが無いような狭い道路でのひとコマ。あなた(青)が右折しようとしているが、対向車がきているので道路の中央で停車した。この時に図@の様に車体をななめにして停車すると、赤線で囲った部分が出っ張って対向車や後続車の往来の妨げになる。直進車が優先なのでこれは危険であるし、マナー違反だ。この場合は図Aの様に前方に向かってまっすぐ停車するのがベターだ。こうすれば後続車の妨げにもなりにくい。そして、ウインカーは早めに出すこと。急に出したのでは後続車が回避しにくくなる。今は物騒な世の中なので、こういったマナー違反が原因で無用なトラブルに巻き込まれないとも限らない。洗練されたドライバーとしてはスマートにいきたいものだ。

※また、夜間などでライトをつけっ放しで右折待ちしているドライバーをよく見かけるが、対向車はまぶしくて仕方がない。右折待ちの時はライトを消していた方が良いだろう。そうしておいて、いざ動き出そうとした時にライトをつければ、対向車に「これから動き出しますよ」というアピールになるので正面衝突事故を未然に防ぐ効果がある。

 

他に気付いた点を上げてみると・・・

☆夕方、まだ見えるからといってライトを点灯しない。試しにバックミラーをのぞいて欲しい。後続車の色が白・シルバー・グレーなどであったら、道路の色に混ざって後続車が見えにくくなっているはずだ。あなたのクルマもきっと見えにくくなっているに違いない。早めのライトオンは自分が見るためではなく、相手に発見されやすくして事故を未然に防ぐためにつけるのだ。バイクなど小さな車両は昼間でもライトオンする方が安全だ。

☆ウインカーを出さない。出したとしても直前に出す。出さないのは論外。直前に出しても、後続車は面食らう。教習所で習ったとおり、30m手前から、車線変更は3秒前からウインカーを出そう。

☆大型トラックの直後を走っていて、前方が良く見えない時でも車間距離をとらない。トラックで隠された前方に何が有るかあなたからは見えない。落下物があるかも知れない。それを避けようとして急ブレーキを踏んだトラックに、追突してしまうかも知れない。見えないといっても方法がないわけでは無い。昼間であれば影、夜間であれば中央分離帯の壁に映ったブレーキランプの赤い光などである程度は判断できる。しかし、100%確信がもてるわけではないので、過信してはいけない。

○ 数パターンの危険予知を見てきたが、勿論たったこれだけではない。危険予知のパターンは無数にある。出来るだけ多くの危険予知が出来るように、普段から注意深く観察すべきだ。要は「見えない所は危険が潜んでいる」「バックミラーを含めて、見える所は出来るだけ見る」よう心がけ油断しないことだ。クルマの運転は楽ではない。ものすごく神経をつかう作業なのだ。

-すべてはあなた自身やあなたの家族のためなのだ!

 

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著者が鈴鹿サーキットでやっていたFJ1600レースの車両
鈴鹿での最高時速220km/h、平均速度150km/hのハイスピードレースだ。