日本のスローフードらしさ

                       阪神給食株式会

                        前代表取締役 羽生一喜

日本人の食生活を取り巻く環境は、近年急速に変化しています。

グローバルな経済による食の近代化は、日本はもちろん世界各地の食を均一化しているだけでなく、食を取り巻くさまざまな関係性を破壊しています

《どこで食べても同じ味》《安くて効率が良い》《出てくるのが早い》というファーストフードの便利な特徴をすべて否定するのではなく、@消えていく恐れのある伝統的な食材や料理を守り質の良い食材を食べよう。A質の高い素材を提供してくれる小生産者を守り地場産の食材を積極的に食べよう。B子供たちを含めた消費者全体に味の教育を進めよう。というスローフードの思想を大切にしながら、忙しすぎる現代生活における「食」の画一化や極端な簡素化の流れに歯止めをかけたいと思います。

まず第一に、この《飽食》の時代の中での食に対する基本的知識の低下と、手軽なサプリメント等の健康食品への過大評価を見直し、少なからず「食」に携わる者として「食」について問い直していきたいと思います。

このような姿勢が、農業の活性化や子供たちの感性を育んでいくことにつながり、又、BSEや食肉偽装表示、遺伝子組み換え食品への説明不足などによる

食品への不信感を取り戻し、豊かな人間関係や信頼関係を築いていくものと信じています。そして、きっとその延長線上に《豊食》があるに違いないと思います。

つまり、現状における子供たちを含めた消費者全体の基本的知識を高め、その知識を活用することにより、食生活を豊かに健康的なものにしていきたいのです。

例えば、「イワシにはIPA(イコサペンタエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多い。IPA、EPAやDHAは、ある種の生活習慣病の予防には有益である。」という知識はあっても「イワシ」そのものを知らなければ、その知識は生かせません。

やはり、「食」に対する関心を高め、私たち日本人が日本の伝統的な食文化と食材をもっと見直す中で、日本のスローフードらしさを進めていきたいと思います。

まずは一汁三菜とごはんで日本のスローフードを実践してみませんか!

けれども、日本の伝統的な食生活を見直す中で信じられない危険性に注目しなければなりません。それは、健康食として又、低カロリー食として安心感を受ける日本的な食品や食材を、安心感ゆえに過剰に取ることによりカローリーオーバーになり心とからだのバランスをくずしているという現状。その上、生活習慣病に対する過敏反応により動物性たんぱく質を極端に制限し病気に対する抵抗力を弱めているという現状です。

次にもうひとつの危険性であるぬるま湯状態にある現代の食生活に気づきながらも変えるための行動を起こさないという現状です。

今こそ、ぬるま湯状態にある現代の食生活を見直し、「いい素材を使って、家庭に伝わる味をじっくり作って、楽しみながら適切な質と量をいただく。」というシンプルでベーシックなスローフードに目を向けて、心とからだをリフレッシュし、元気を取り戻しましょう。

あの「茹で蛙」のお話の中で、カエルは熱湯ではなく水から徐々に温められると、ぬるま湯状態の危険性に気づかずにやがて「茹で蛙」になって死んでしまいます。ですが、私たち人間は今こそ《名ばかりの飽食》に疑問をもって《豊食》について考え行動する努力を惜しまずに、正確な情報のもとスローフードを実践していきたいと思います