法話19
「やさしい法話1」
報恩講は門徒の行事
そろそろあちこちで報恩講が勤まる頃どなりました。浄土真宗の門徒にとっては、極めて大切な行事です。京都の西本願寺では、一月九日から十六日まで、年ごとに、御正忌報恩講としてお勤めします。
その御正忌に先立って、各寺でお勤めすることになっておりますので「おとりこし」ともいいます。いずれにせよ、御開山親鸞聖人の教えに遇えた幸せを感謝して、年に一度まごころをこめて先輩達がお勤めして来た法要に接して、子供心に何らかの思い出を残している人も多いと思います。
今もなおこの行事は全国各地の真宗門徒の中に残っています。しかし次第に門徒の行事ではなく、お寺の行事になっているような気がします。年間通じていろいろな行事や法要が行なわれましょうが、そのいずれもみんな大切なものにちがいありませんが、とくに報恩講は門徒一同が親鸞聖人をお客様としてお迎えして、年に一度お礼を申しあげる集いでなくてはなりません。
お寺から御案内を受けて、皆さんがお客様のつもりでお参りになるというのが一般的な形のようですが、報恩講はそうであってはなりません。
少なくとも、お礼を申しあげるからには、多少でもそれなりに身に覚えがなければお礼は言えません。そのためには日頃から聖人の教えに遇い、その教えを通して、自分自身の中に深く信心のよろこびを味わう身にさせていただくことが何よりも大切なことであります。
蓮如上人は、報恩講をお勤めする心がまえをお示し下さいましたが、その一部に、
「ただ人目・仁義ばかりに名聞のこころをもつて報謝と号せば、いかなる志をいたすといぶとも、一念帰命の真実の信心を決定せざらんひとびとは、その所詮あるべからず」(註釈版聖典一二二三n)
といましめられております。
どうぞ今年の報恩講はお一人ひとりが、その意義を充分かみしめてお勤めいただきたいと存じます。