法話7
「やさしい法話2」
有名な『平家物語』の冒頭に
「祇園精舎の鐘の声」
という言葉ではじまる文章が出てくることはよく知られていることと思いますが、その中に、
"おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし 猛き者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ〃
とありますように、どんなに生きている間に権勢を誇り、そして財産を築いた人であっても、さらには、どんな美男・美女でも、やがてはすべてを此の世に残して死んでゆかなければならないのです。
〃平家にあらざれば人にあらず〃
といった、まことに傲慢な態度をとるほどに栄えた平家も、結局は源氏によって滅ぼされ、しかもその源氏も、間もなく北条氏にその権力をとって代わられた、というのが比の世のならいなのです。
だからといって、此の世における栄耀栄華が無意味である、という必要
はないでしょう。
せっかく人間として此の世に生まれた以上、だれもが金持ちになりたいのですし、だれもがより美しくなりたいと願うものなのです。しかしながら、こういった現象的・物質的なもののみを追いかけていますと、いつの間にか死の瞬間がしのびよってきて、
「こんなに早いとは思わなかった」
と後悔することになってしまうのです。ですから、あの蓮如上人が「白骨の章」でまことに明快に、
「たれの人もはやく後生の一大事を心にかけて」(註釈版聖典一二〇四年)
と述べておられますように、一日も早くその事実に気がついて、二度とない人生を、悔いのないものにするように努力するべきなのです。