法話14
「心に響くことば」
仏教では、人生根本の苦しみとして、生老病死の「四苦」が説かれます。年を取ったり、病気になったり、死んでしまうのは、誰だってイヤなことです。アンチエイジングや健康法が流行っているのが、その証拠でしょう。
若さ、健康、生きることにこだわり、執着するところに、自ら苦しみ悩みを生み出しているのだ、といわれても、なかなか執着を離れて、苦悩から開放されるわけにはいきません。
むしろ、不老不死のいのちを手に入れたら、幸せになれるのではないかと考えてしまう私がいます。でも、それは違うのでしょうね。
中国の高僧、曇鸞大師のエピソードです。
不老長寿の神仙術を学んだ曇鷲大師は、帰る途中で、三蔵法師に出会われました。
「中国にはこんな不老長寿のすばらしい教えがある。インドにはあるのか?」
と自慢気に尋ねると、三蔵法師はこうお答えになったのです。
「いくら不老長寿だ神仙術だといっても、百年も二百年も長生きできるわけではなかろう。仏教では、むしろ生と死を超えていくことが一番問題なのだ。本当にいのちの問題を解決しようと思ったなら、これを読みなさい」
そう言われ、浄土の教えを授けられた曇鷲大師は、浄土教の教えに帰依されて、仙経の巻物を焼き捨ててしまわれました。
自分の思い通りにならない老・病・死を抱え、苦悩にあえぐ私のために、「あなたを救う仏に、私が成る」との願いを成就されたのが、阿弥陀さまでありました。
その願いが私の中に入り満ちて、南無阿弥陀仏とこぼれ出てくださいます。
本当にいのちの問題を解決してくださるはたらさに出遇えた時、老いを抱え、病を抱え、死を逃れられない私のいのちが、そのままで輝いているのだという、阿弥陀さまのいのちのまなざしに出遇うのです。
老いや病や死が、人生を輝かせてくださることを、お念仏に生きた高僧がお示しくださいます。
私たちはお念仏申しながら、阿弥陀さまの願いをよりどころとして、輝く人生を歩ませていただくのです。