むかえに行くにゃ
☆ むかえに行くにゃ ☆





「では、行ってくる」
「うにゃ」
「5時ぐらいには帰ってくるから」
「おいしい料理を作って待ってるにゃ」
「ああ」

バタンっ
主人は出かけていった。





ポツ・・・ポツ・・・ポツ・・・
「うにゃ?・・・雨が降ってきたにゃ」
ポツ・・ポツ・・ポツ・・ポツ・・
「ご主人さまはカサ・・・持ってなかったにゃ」
ポツポツ・・・ザ〜〜
「早く雨止むといいにゃ」


4時30分



ザ〜〜〜!!
雨は強く降っており、止む気配がない。

「雨止まないにゃ・・・。うにゃっ!ご主人さまをむかえに行くにゃ」
そう言ってニィナは主人をむかえに行った。
・・・主人のカサを持たずに・・・


そのころ主人は・・・



木の下で雨宿りをしていた。

「ふぅ・・・。止む気配がないな」
一つため息をつく。
「このままでは5時までに帰れないな」

ザザ〜〜!
雨は相変わらず降っている。

「ふぅ・・・」
また一つため息をついたとき・・・
「ご主人さまぁ〜〜」
「ん?・・・ニィナ?」

どこからかニィナの呼ぶ声が聞こえた。

「気のせい・・・か・・・」
主人があたりを見渡すと・・・
「ご主人さまぁ〜〜!」
そこにはこちらに走ってくるニィナの姿があった。
「ニィナっ!」
「ご主人さまぁ〜〜〜!!」
タッタッタッ・・・ツルッ
「にゃっ!?」
ニィナは泥濘に足を滑らした。
「あぶないっ!」
ぎゅっ
主人はこけそうになるニィナを抱き止めた。

ドサッ・・・コロコロ
カサが地面を転がる。

「・・・・」
「ふぅ」
「・・・・」
「?・・・ニィナ?」
「にゃ・・にゃぁ・・・」
「?」
ニィナは主人に抱きしめられたためか、顔を真っ赤にしている。
「大丈夫か?」
主人が心配そうな顔で尋ねる。
「だ、大丈夫にゃ」
「そうか」
「・・・・」
「・・・・」
2人の間に沈黙が流れた。


しばらくして



「そろそろ帰ろうか?」
「うにゃ」
ニィナは地面に転がっているカサを取る。
「?」
ふと、主人が何かに気づく。
「・・・ニィナ、カサは?」
「えっ?・・・あっ」
ニィナは主人のカサを持ってないのに気づく。
「ご、ごめんなさいにゃ」
ニィナはすまなそうな顔をする。
「いや、気にしなくていいよ」
「で、でも・・・」
ニィナはうなだれる。
「ふむ・・・。一緒のカサで帰るか」
「えっ?」
ニィナは一瞬驚く。
「しかし、このカサだと濡れてしまうな・・・」
確かにニィナのカサは女性用で小さかった。

「・・・よし」
そう叫ぶなり、主人は自分が着ているコートをニィナに羽織らせた。
「にゃっ?」
ニィナはすっとんきょんな声を上げる。
「ご主人さま?」
「これだったら、そんなに濡れないだろ?」
「でも・・・ご主人さまは・・・」
「私のことはいいから」
主人はニィナが持っているカサを取る。
「さぁ、帰ろうか」
「は、はい」


帰る途中



「ニィナ。もっと中に入りなさい」
「う、うにゃ」
返事はするがあまりカサの中に入ってこない。
「ニィナ」
主人はニィナの肩に手をまわし、体を寄せる。
「にゃっ」
「・・・・」
「ご主人さま?」
「・・・・」
グッ
「あっ」
主人は答える代わりに、ニィナの体を強く寄せる。
「・・・にゃぁ・・・」
ニィナは顔を赤く染めながら、主人に体をあずけた。
「・・・・」
「・・・・」

2人は雨の降る中、小さなカサの中で寄り添いながら館に戻っていった。


☆おわり☆

戻る