二股男VSロリコン男
それは村上達がある橋の上を歩いたときのこと。
誰が想像しただろうか・・・
主人公同士のバトルが今始まろうとしている!
「ねぇ、お兄ちゃん」
琴美が甘えたように政広の腕にしがみつく。
「あ、わ…私も」
それにつられるように美夜も腕に抱きついた。
「こら、2人とも…」
「両手に花だね?」
「………」
政広は無言で2人をくっつけたまま歩く。
すると橋の上であるカップルを見つけた。
「………」
「どうしたの?」
少女が青年に尋ねる。
青年の態度が変わったことに気づいたのだろう。
「お兄ちゃん?」
「先輩?」
琴美と美夜も政広に尋ねる。
2人も政広の態度が変わったことに気づいたのだろう。
「あ、こんにちは」
「こんにちは」
2人は前にいるカップルに気づき、ペコリとお辞儀をする。
「えっと、こんにちはっ!」
少女は元気に返事を返す。
だが、政広と青年は睨み合ったように動かない。
しばしの沈黙。
そしてどちらからともなく言葉が吐き出された。
「……優柔不断な奴」
「なに!?」
青年の言葉に政広はカチンときた。
そして青年に言い返す。
「ロリコンか?」
「………」
政広の言葉に青年は無言を返す。
だが、その姿からは怒りが吹き出している。
「き、きみ? どうしたの? ケンカはだめだよ?」
少女が青年の怒りを抑える。
「……わかった」
青年は大人しく下がる。
しかし、政広は青年を逃がさない。
「子供に止められるようじゃ、ダメだな」
「……キサマ、それ以上言ったら殺す」
「わわわ、だからケンカはダメだってば」
「お兄ちゃんも抑えて」
「落ち着いてください、先輩っ」
3人がそれぞれを止める。
事はそれで収まったように見えた・・・が!
やはり、そこは吹っ飛んだお話。
終わるわけがなかった。
「二股をかけるようなヤツなど、男の恥だ」
「な、なんだと!?」
青年の言葉に政広が反応する。
それこそが青年が狙っていた展開だった。
「こいつを子供呼ばわりした落とし前はつけてもらうぞ」
青年が少女を片手で抱きしめて言う。
「ちょ、きみ? 人前でなにをするの?」
少女は青年の腕の中でバタバタと慌てる。
「お前の方こそ、言ったことを後悔させてやる」
政広は低い声で言い放つ。
そして戦いの火蓋は斬って落とされた。
「美夜と琴美は俺にとって大事な存在なんだ」
「…そうか。だが、どちらか1人を選べないなんて優柔不断だ」
「くっ」
政広は言葉を詰まらす。
青年の言葉に反論できないらしい。
「……情けないな」
「ロリコンなヤツに言われたくない」
「……黙れ! あいつは立派な大人だ。お前よりな」
青年は勝ち誇ったように言う。
「ちっ、口の減らない男だな」
「………」
「どうし……ぐふっ」
ドフゥッ!
青年の拳が政広の腹部をえぐるように捉えた。
その攻撃に政広は膝をついて崩れる。
「ぅぅ……な、なんて力だ」
政広は腹部を抱えたままうずくまる。
その姿を青年は冷ややかな眼で見下ろす。
「きゃぁー、お兄ちゃんっ」
「せ、先輩っ!」
2人が政広の元に近寄る。
「ちょ、ちょっと! 人を傷つけちゃダメでしょっ」
少女が青年に怒鳴る。
すると青年はそっぽを向いて呟いた。
「…こいつがお前を侮辱したからだ」
「ええ? そ、そうだったの?」
少女は驚いたような声をあげ、政広を見下ろす。
「私のために怒ってくれたことは嬉しいけど、それでも人を傷つけちゃダメ!」
「………」
「そんなきみは嫌いだよ?」
少女のその言葉に青年の心がズキっと痛む。
「……次からは気をつける」
「うん、素直でよろしい」
少女は嬉しそうに微笑み、青年の背中を軽く押す。
「さぁ、仲直りの握手して」
「…わ、わかった」
青年は政広に近寄り、声をかける。
「すまなかった」
「くぅ……い、いや」
政広はゆっくりと立ち上がり、青年を見据える。
そして一言・・・
「お返しだっ!」
ドムッ!
政広の拳が青年の腹部を貫く。
「……くっ、その程度か?」
「な!? 効いてないのか?」
「その程度ではな」
青年は哀れみを帯びた眼で答える。
「はいはい、これでお互い様だね」
少女が2人に割ってはいる。
「…ああ」
「そうだな」
そう言う2人の顔は何故かスッキリしていた。
私が思うには、主人公同士は仲が悪いのだろうか?
それとも良いのだろうか?
謎は深まるばかりである。
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