第6話『ふたり』
第6話
『ふたり』


ザァァァ〜〜!!

一緒に昼食を食べた後、俺達は再び浜辺に来ていた。
何をするわけでもなく、ボケーッと座りながら海を眺める。
さざ波の音に耳を傾け、黄昏ている姿はまさに世間に負けた人間。
そんな辛いことにも負けず、頑張って立ち直ろうとも見えるに違いない。

「俺ってさ…」

「…え?」

「よく『若くない』って言われるんだよ。
 考え方がどうも普通の若者とは違うらしい…、自分でもわかっているんだけど」

「…そうなんだ」

女の子はゆっくり頷き、続きを促す。
俺はそのまま海を眺めながら話を続けた。

「どんなに明るく振る舞ってもどこか醒めてるんだ…。
 努力になんて意味はない、どんなに頑張っても報われない……そんなことばかり考えている。
 “努力ができないのは理由がないだけ”、“頑張れないのは希望がないだけ”。
 それはわかっているんだけど、どうしてもそれを見つけることができないんだ」

「でも、その悩みって若者の…」

「いや、俺の場合はここで終わらないんだ」

「え?」

「それらを全て踏まえて、何もかもがどうでもよくなっているんだ」

「全てが嫌ってこと?」

女の子は少し首を捻り、聞き返してくる。
それに俺は頭を横に振った。

「別に“嫌”でも“好き”でもない。
 どうでもいいんだ…、何もかもが……自分のことも他人のことも…」

「そんなこと……悲しいよ…」

「自分でもそう思う」

「…うん」

「だからわからないんだ…。自分が何をしたいのか? 何を求めているのか?」

俺はそれらの答えを常に求めてきた。
そしてその答えがでることは常になかった。
永遠に求め続ける答えなのかもしれない。

『人は常に悩む生き物である』・・・うまい言葉だ。

「だったら全てをふっきろうよっ!」

「…え?」

女の子が握り拳を作りながら俺に言う。

「どうでもいいことは忘れて、頑張ろうよ〜」

「………」

「人生ファイトっ〜」

その声にファイトという単語は似合わなかった。
妙に間延びした語尾は逆に気怠さを催す。

「…って、私も言いたいんだけどね」

「……そうか」

俺にはそう言う女の子の気持ちがわかった。
たぶんそれは俺と同じような人だからだと思う。

何かをしたいわけでもなく、何をするわけでもない。
ただ日々を時間の流れのままに生き、なんとなく過ごしていく。
とくに不満を感じず、充実感を感じることもない。
何もかもが意味がなく、全てのことが無いことのように流れていく。

「この旅で何か見つかるといいね?」

「お互いな」

俺はすでにひとつ見つけているのかもしれない。
俺のことを理解し、話に耳を傾けてくれる“人”を・・・。




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