番外編『夢が夢で終わるように』
番外編
『夢が夢で終わるように』



「ふぅ、間一髪だったな」
雅人がアパートに着くと、次の瞬間、豪快な雨が降り注いだ。
大学の講義も終わり、今日はバイトが休みなので早く帰ってきたのが幸いである。
とくに濡れることもなく、安心した雅人はドアを開けると部屋に入った。
「そういえば、今日は茜が来ると聞いていたが、大丈夫だろうか?」
雅人の心配は空振りになることはなく、10分後に的中した。
「――ああ、もうっ!雨が降るなんて聞いてなかったよ!」
ドアが開くなり、びしょ濡れの制服を着た茜の姿が飛び込んできた。
雅人はタンスからバスタオルを取り出すと、茜に手渡す。
「大丈夫か?」
「全然だよ〜!パンツまで濡れちゃった」
「こらこら!年頃の女の子がそんなことを言うんじゃない」
呆れた顔で雅人が怒ると、茜は悪戯っぽく微笑み、
「そんなこと言って…。濡れた私も綺麗でしょう?」
スカートの裾を持つと、チラッと太股を見せつけた。
茜の行動に雅人は不意に心臓が高鳴り、見る見るうちに顔が赤くなっていく。
「顔が赤いよ?もしかして興奮した?」
「バカっ!兄をからかうんじゃないっ!」
「そんなに怒らないでよ。こんな姿、大好きなお兄ちゃんにしか見せないから――ねっ!」
「そ、そう言う問題じゃ…」
「いいからいいから。それじゃぁ、お風呂借りるね」
雅人の言葉を遮ると茜は濡れた服のまま脱衣所に入っていった。
少し頭をかくと、雅人は茜が着替えを持ってないことに気づき、なにか着るものを探しに再びタンスに向かった。
「――ああっ、いいお湯だった」
濡れた髪をタオルで拭きながら茜が脱衣所からでてきた。
それに気づいた雅人は茜の方に視線を向けると、その姿に見とれてしまった。
風呂上がりの茜が着ているのは、ダボダボのシャツ一枚だけなのだが、それは雅人のだから仕方がない。だが、胸元のボタンを留めていないので、茜が長い髪を拭くたびにチラチラとその隙間から胸元が雅人の目に飛び込んでいった。
「…ん?お兄ちゃん、どうしたの?」
「………」
「…?どうしちゃったの?」
「…え?」
我に返った雅人の目の前には、不思議そうにのぞき込む茜の顔と、はだけた胸元が大きく目に入った。
「あ、茜っ!ちゃんと着なさいっ!」
「え?あ、やだ…」
さすがの茜も恥ずかしいのか、雅人に言われて急いで胸元を閉じた。
「ひょっとして、さっきからずぅーっと私のこと見てたの?」
「いや、その、つい見とれてしまって…」
「ふーん。男の人って、こういうのに憧れるのかな?」
茜は長すぎる袖の部分をダブつかせながら、少し飛び跳ねたりしている。
その仕草に雅人はギュッと胸を締め付けられると、我慢できなくなり、手招きした。
「なに?」
なんの疑問も持たずに近づいてくる茜を、雅人は強く抱きしめ、その額にそっとキスをした。
「きゃっ、お兄ちゃん?」
「可愛いよ、茜。綺麗になったな」
「きゅ、急になに?」
少し困惑している茜を雅人は抱きしめながら、その長い髪を優しく撫でた。
「なんだかくすぐったいね?でも、とても心が落ち着く…」
茜は静かに目を閉じると雅人の背中に手を回し、自分の体を預けた。

「茜?なにをしているんだっ!」
雅人の目の前で茜が微笑みながら包丁を握っていた。
そしてその白銀の刃を自らの手首にあてる。
「待てっ!早まるんじゃないっ」
「ごめんね。私にはこうするしか道はないの」
「なにを言っているんだ!俺達はもう、兄妹なんかじゃない!恋人同士じゃないかっ!」
ふと茜は涙を零す。
「優しいね。でも、優しさだけじゃダメの。それだけじゃ私たちの関係は変えられないの」
「お前、なにを言っているんだ…?」
「もう、お別れなの。元気でね、お兄ちゃん」
茜が刃を握る手に力を込めると、静かに腕に食い込んでいき、赤い滴が溢れだした。
「やめろっ!茜っ!」
雅人の叫びもむなしく、茜は自らの人生に幕を閉じようとした。
「――あかねっ!」
雅人は叫びながら飛び起きると、そこは自分の部屋だった。
ハァハァと荒い息をつき、視線を手のひらに向けると、小刻みに震えていた。
「大きな声を出してどうしたの?」
「あ、あか…ね?」
朝食を作っていたのだろう、エプロン姿の茜が驚いた顔で駆け寄ってくる。
「なにか怖い夢でも見たの――あ、泣いているの?」
「…え?」
茜に言われて雅人は自分の顔に手を当てると、確かに涙の跡があった。
「ちょっと待ってね、なにか拭くものを…」
台所に戻ろうとして背を向けた茜の手を雅人は不意に掴むと、その華奢な体を後ろから強く抱きしめた。
「お、お兄ちゃん?」
「行くなっ!俺の側にいてくれ」
「タオルを取ってくるだけだから…」
「そんなのはいいからっ!行かないでくれ」
困惑する茜だが、自分を抱きしめる雅人の手から震えを感じると、優しく微笑み、雅人の手に自分の手を重ねた。
「――落ち着いた?」
数分後、雅人の手の震えが止まったのを確認すると、茜は静かに尋ねた。
「ごめん。その、不安になって…」
「なにか怖い夢でも見たの?」
「茜が死んでしまう夢を見た」
雅人の言葉に茜はビックリしたが、それを表に出さないように努めた。
「大丈夫。私はお兄ちゃんを残して死なないから」
「わかってる。わっているんだけど…」
茜は抱きしめられている手に力が込められると、少し苦しそうな顔をした。
「お兄ちゃん、ちょっと苦しいな」
「ごめん。でも、不安で不安で…」
「ふふっ、今日のお兄ちゃん、なんだか子供っぽいね」
「か、からかわないでくれ。自分でも自分自身がコントロールできてないんだから…」
「まぁ、そんなことより、朝食でもしましょう」
――ふたりは朝食を終えたが、雅人は茜を離そうとはしなかった。
「せっかくのお休みだし、お天気もいいから外にでようよ?」
「いい。茜が側にいてくれたらいい」
雅人に後ろから抱きしめられている茜は小さなため息をついた。――だが、その顔はどこか嬉しそうである。
「お兄ちゃん」
「うん?」
「今日はずっとこのままなの?」
「…嫌か?」
恐る恐る尋ねる雅人に茜は嬉しそうに答えた。
「ううん。なんだかお兄ちゃんが甘えん坊さんで可愛いな」
「………」
「顔が見えないからわかんないけど、照れてるのかな?」
雅人は答える代わりに茜の頭を優しく撫でた。
「――あの、お兄ちゃん?」
しばらくして、不意に茜がモゾモゾと動き出した。
「うん?」
「ちょっと、離してほしいな」
「………」
雅人は答える代わりに抱きしめる手に力を込めた。
「お、お願いだから!少しだけ離して」
「ここで離したら、お前がいなくなってしまうかもしれない」
「ならないから。本当に大丈夫だからね?」
「茜、そんなに俺が嫌なのか?」
「そ、そうじゃなくてぇー!トイレに行きたいんだってばぁー!」
茜の叫びに雅人は解放した。
子供のように俯く雅人の頬にチュッとキスをすると、茜はトイレに駆け込んでいった。
「――ふぅ、助かったぁ」
トイレから出た茜は雅人に視線を向けると、そこには寂しそうに俯いている姿があった。
茜はふぅっとため息をつくと、台所まで行き、引き出しの中から耳掻きを取り出すと雅人の元に戻った。
「はい、お兄ちゃん」
茜は雅人の前に正座すると、自分の太股を軽く叩いた。
「茜?」
「ほら、ここに寝て。耳掃除してあげる」
「…うん」
雅人はごろんと横になると、茜の太股に頭を乗せた。
「お兄ちゃん。もしかして、最近、掃除してないの?」
「そう言えば忘れてた」
「みたいだね。ここは私がしっかりと綺麗にしてあげましょうっ」
鼻歌を歌いながら耳掃除をする茜。
そのメロディーと心地よさに雅人はいつしか睡魔に襲われていった。

「――で、茜ちゃんはどうして男装をしているわけ?」
雅人がグッスリ眠るのを確認した茜は、今のうちに買い物に行こうと出かけたが、その帰り天宮に出会い、そのままふたりして喫茶店へと行くことになった。
そして店に入って開口一番、天宮は茜にそう尋ねた。
「昨日の雨で制服が濡れちゃって、そのうえ着替えまで忘れちゃったんですよ」
「…?それって、昨日は高原くんのところでお泊まりしたってこと?」
茜は小さく頷くと、顔を赤く染めながら俯いた。
「愛し合うのはいいけど、程々にね?」
「え、あの…。そ、そんなことは…」
「え?してないの?」
「いえ、その…しましたけど…」
しどろもどろの茜に天宮は微笑みを向けながら注文したコーヒーを一口飲んだ。
雅人の服装をしている茜は少し浮いていた。――だが、それは悪い感じではなく、なかなか様になっているようで注目を浴びている。
そのことに茜も気づいたのか、早く店内から出ようと思い、
「あの、帰ってもいいですか?」
と、控えめに口にした。
唐突の事に驚いた天宮は、
「ど、どうして?」
「その、視線が気になって…」
「それは仕方ないわよ。茜ちゃん、その服装似合っているから」
「それに…」
まだ言葉を続けようとする茜に天宮は少し残念そうな顔をした。
「それに…なに?」
「早く帰らないと、お兄ちゃんが起きちゃうから…」
天宮の目が点になった。
「なにそれ?」
「今日のお兄ちゃん、その、とても甘えん坊で離してくれないんですよ。今だって、寝ちゃったから買い物に出られたんです。起きてたら外出させてくれないよ、絶対に」
「ふーん。高原くんって、そんなイメージ無いんだけどな〜」
「いえ、普段はそんなことないんですよ。今日はなんか怖い夢を見たらしくて、それからなんです」
「どんな夢なの?」
興味津々に聞いてくる天宮に茜は少し俯いて答えた。
「私が、死んでしまう夢です…」
「………」
茜の答えにさすがの天宮も黙ってしまった。
「私が自殺しようとしたことが、まだ忘れられないんだと思います。お兄ちゃんは悪くないのに、こんなに悲しませるなんて…」
不意に涙を零す茜に天宮は慌てて口を開いた。
「あ、茜ちゃんは悪くないから!ねっ?だから泣かないで」
「いえ、悪いのは私なんです」
涙を拭きながら力強く言う茜に天宮は優しい笑みをこぼした。
「だったら、今日は思いっきり甘えさせてあげなさい。それが今の茜ちゃんがしてあげられることじゃないかな?」
「そうですね。がんばりますっ」
茜は笑みを返すと、静かに席を立った。

「――ただいま〜」
日も暮れ、茜がアパートに帰ると、そこには寂しそうに佇む雅人の姿があった。
「起きてたの?ごめんね、遅くなって。ちょっと買い物に行ってたの」
「うん。わかってる」
茜は自分が残していった書き置きを強く握りしめている雅人の手が目が入ると、すぐ側まで行き自分の手を重ねた。
「ごめんね?不安だった?」
「少し…。でも、茜は帰ってくるって信じていたから」
「ありがと」
茜はそっと雅人の頭に手を伸ばすと、自分の胸に抱き寄せた。
「…あかね?」
「嫌なことはぜーんぶ忘れて、私に甘えていいよ。いっぱい甘えさせてあげる」
「…うん」
小さな声で頷くと、雅人は茜の背に手を回した。
「茜の匂い、鼓動、とても気持ちよくて落ち着く…」
「うん、そうだね。私もお兄ちゃんの鼓動が伝わってくるよ」
雅人は茜の胸に耳を寄せると静かに鼓動を確かめる。
「少し高鳴っている」
「お兄ちゃんといるといつもそうなの。ドキドキして押さえきれないのよ」
「俺と一緒だ」
目を細める雅人の髪を茜は優しく撫でる。
そしてしばらく撫でていると、不意に雅人が茜の服のボタンを外していった。
「お兄ちゃん?したいの?」
「ううん」
首を振る雅人に茜は不思議に思いながら、兄の好きなようにやらせようと止めはしなかった。
そして雅人が全てのボタンを外すと、静かに服が両側に開き、茜の綺麗な肌が外気に触れた。
「茜」
「うん?」
「おっぱい吸ってもいい?」
「…くすっ」
茜は笑みを零すと、雅人の顔を自分の胸に寄せた。
「いいよ。たくさん甘えていいからね」
「うん」
雅人が赤子のように吸い付くと、茜の体がピクッと反応した。
「んっ…。強く吸わないで、逃げたりしないから――ね?」
雅人は小さく頷くと静かに目を閉じる。それを見た茜は雅人の頭を優しく撫でながら、懐かしいメロディーを口ずさんだ。

翌朝、朝食の用意を終えた茜はまだ寝ている雅人の側に行くと、
「こら〜!起きなさーい!」
叫びながら布団をひっくり返した。
「…うーん」
だが、雅人はそれでも起きず、まだ寝ていたのか寝ぼけながら布団を引っ張った――が!
「きゃっ!スカートを引っ張らないでよぅ!!」
それは茜のスカートだった。しかし、雅人はそんなこととは気づかずに引っ張る。
「もう少しだけ寝かせて…」
「ちょっ、だからそれは布団じゃなくてスカートだってば……やっ、そんなに引っ張ったら脱げちゃうよ…」
茜の叫びもむなしく、雅人はズルズルとスカートを引っ張った。
「――ん?朝か?」
目が覚めた雅人が顔を上げると、そこには茜の姿があった。
「おはよう、目が覚めた?」
「ああ、それよりスカートは履いた方がいいぞ。朝から下着を見せられるのは刺激が強いからな」
雅人の言葉に茜はニッコリ微笑むと、
「だったら、寝ぼけながら私のスカートを脱がすのはやめてくださいね?とーっても恥ずかしいだから…」
優しく言うが、目が笑っていなかった。
茜の言葉の途中で自分がスカートを握っていることに気づいた雅人は、ただただ黙ることしかできなかった。
「ま、それはいいとして早く朝食を食べてね。遅刻しちゃうよ?」
スカートを履き直した茜が雅人に背を向けたとき、不意に後ろから抱き留められた。
「お、お兄ちゃん?」
「昨日はその、悪かった。あんな子供みたいな態度で迷惑をかけたと思っている。でも俺は――」
「なにも言わなくていいよ。お兄ちゃんの気持ちはわかっているつもりだから」
「茜…」
茜は雅人の腕を優しく振りほどくと、顔を合わせた。
「さぁ、今日からはいつものお兄ちゃんでいてね?甘えん坊さんは昨日で卒業だよ?」
「わかった」
「それと、責任はちゃんととってね?」
「俺、なにかしたか?」
訝しげな表情を浮かべる雅人に茜は悪戯っぽい顔をする。
「昨日、たくさん私のおっぱい吸ったこと忘れたの?」
「あ、いや、それは…」
「あんな恥ずかしい事されたら、もうお嫁にいけないよ」
「責任は俺がとる!お前を絶対、幸せにするからっ」
茜はふっと笑みを零すと、雅人の首に抱きついた。
「うんっ、信じているから」
「ああ」
「それとね、お兄ちゃんったら私が胸弱いの知ってるのに、あんなに吸うから下着が濡れちゃった」
「………」
「それも責任取ってよね?」
まさに殺し文句である。
茜の言葉に耳まで真っ赤に染めた雅人は強引に茜の唇を奪うと、そのまま押し倒した。
「んんっ……。はぁ、だ、ダメだよ…」
「今、とてもお前が愛おしい。我慢ができないんだ、お前を抱きたい!」
「え、あの、でも…」
雅人の強い眼差しに茜はうまく言葉にできず、強く胸が高鳴る。
ああ、私はこの人を心から愛している――そして抱かれたいと願っている。兄妹なんて関係ない、私は今、愛する人から求められているんだ。
「お、お兄ちゃん…」
「うん?」
「ち、遅刻しちゃうからダメ。それに、明るいから恥ずかしいよ…」
「わかった。茜がそう言うなら…」
素直に引き下がる雅人に茜は胸が痛んだ。
「――お兄ちゃん?怒ってるの?」
朝食を終え、部屋を出た雅人と茜。
先の出来事以来、言葉を出さない雅人に茜はしびれを切らし、思い切って尋ねた。
「いや、怒ってない。その、声をかけづらくな」
「ふふっ、そーだったんだ。心配して損した」
茜の顔に笑顔が戻ると、元気よく雅人の手を握った。
「俺の手の先には茜がいる。この感触は本物だよな?」
「当たり前だよ。なに言ってるの?」
「いや、なにが夢でなにが現実なのか区別がつかなる時がある。あの夢のせいか、とても不安になる」
「大丈夫だよっ!夢は夢、覚めない夢はないよ。今、お兄ちゃんの目の前に映っているのが現実。私がお兄ちゃんを好きだという気持ちは夢じゃない、現実だよ。お兄ちゃんの気持ちは?夢?それとも現実かな?」
そこまで言って茜は雅人から手を離すと十字路を左に向かう。
「私、こっちだから」
「そうだったな。じゃあ…」
軽く手を挙げて道を真っ直ぐに進む雅人に茜は声をかけると、
「お兄ちゃんっ!その、今日も泊まりに行っていいかな?」
彼は返事の代わりに手を振った。

「あ・か・ね・ちゃーんっ!」
登校中、不意に肩を叩かれた茜は悲鳴を上げた。
「きゃっ!な、なんだ美紀ちゃんか…。おどかさないでよ」
安堵のため息をつく茜に美紀と呼ばれた子はニヤニヤと不気味な笑顔を浮かべながらのぞき込んだ。
「それより、さっきの男は誰?もしかして彼氏?」
「…え?見てたの?」
「もちっ」
美紀はウインクすると手を握りしめ親指を立てた。
「格好いい人じゃない!それに優しそう。大学生?」
「うん。私より5歳上だよ、とっても優しくて頼りになる人」
「へぇー……ってことは彼氏なんだね?」
「え、その…。実はね、お兄ちゃんなんだ」
茜は照れたように頭をかいた。
「あれが茜ちゃんのお兄さんかー。そういえばよく言ってたもんね、自慢のお兄さんがいるって」
「うん。さっきのがそうだよ」
「そっか。でさ、お兄さんって彼女いるの?」
「えっと、多分いない…」
咄嗟のことに度惑う茜だが、とりあえずそう答えることにした。
「じゃぁ、私、告ってみようかな?あんな素敵なお兄さん欲しかったんだ〜」
「それはダメ!」
「な、なんでよ…?」
美紀の言葉に茜はなにも答えず、急に走り出した。
「ちょ、待ちなさーい!茜ちゃんっ、どうしてダメなのよー!」
「どうしてもだよー!」
そう答えながら茜は心の中で呟いた。

『だって、お兄ちゃんは私を選んでくれたのだから…』




< Fin >





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