街乗りに使用している'88TZR250です。私にとってベストな街乗り車と言えます。一番良いところは「乗っていて楽しい事」であり、楽しいと思える要素を分析すると、パワー、出力特性、エンジンレスポンス、(チャンバーにもよるが)エンジンのリニアリティ、エンジントランジェント特性、ブレーキの効き、車重の軽さ、取り廻しの良さ、ハンドリング特性 コーナリングの楽しさ、などが上げられます。
シリンダー:ポート加工 シリンダーヘッド:左右分離加工、面研、燃焼室全面加工 チャンバー:オリジナル ラジエター:RCSUGO '86TZR250 F3用 エンジンマウントカラー:オリジナル クラッチ:フリクションプレート変更(面積アップ) +強化クラッチSP 電気:'86TZR250 ACGローター:切削軽量加工 YPVSコントローラー:RCSUGO '86TZR250 F3用 水温計:YECデジタル リードバルブ:6葉モノに交換(要加工) ロードコース向けエンジンの開発用にテストしています。チャンバーの特性上、シフトポイントは12000rpmくらい(後にCDIの変更で、12500rpmになりました)です。 ヘッド加工で2次圧縮比を上げ、トルクアップしています。 ラジエターは当時で12万(!)もしたモノですが、チューニングエンジンには必需品です。エンジンマウントカラーにより、エンジンをセミリジット化 しています。TZRのエンジン固定はラバーマウント+トルクロッド方式なんですが、パワーが上がると不具合が生じます(エンジントルクでエンジンが 斜めに傾き、伝達ロスやスプロケ偏磨耗他、伝達系にダメージを与える)。セミリジット化で多少体感振動は増えますが、ハイパワー対応の為に採用して います。クラッチも容量不足気味なので、フリクションプレート変更と強化スプリングを装着しています。電気はアナログの'86TZR250(1KT) にしています。パワーを出し易い点火特性をしている(2XTCDIよりも高速向きです)のと、YPVSコントローラーが別体になっていて、F3用コ ントローラーの使用(ノーマルコントローラーとの互換性あり)により、中速トルク向上に役立つからです。STDのコントローラーによるYPVSの開 き始め設定エンジン回転数が、約6000rpmなのに対して、F3用は約8000rpmになっています(後に前述の通りYPVSコントローラー一体型CDIに変更)。ACGローターの軽量化は、ピックアップ向 上に効果があります(但し、ノーマルエンジンでは、デメリットの方が大きいでしょう)が、スタート時には、エンジン回転が落ち込み易くなります。 Fブレーキパッド:メタリカ Fブレーキマスターシリンダー:VTR250 Fブレーキキャリパー:ヤマハ純正ブレンボ ブレーキホース:ステンメッシュ スロットル ASSY:TZR250RSP Fフォーク:シートパイプ加工 エアバルブ追加 信号・照明系スイッチ:TZR250R加工 キルSW:TZR250R加工 クラッチレバーホルダー RM80 色々試してきたブレーキですが、現在はVTR250マスター+ヤマハ純正ブレンボキャリパーの組み合わせになっています。ブレンボキャリパーの美点は、何と言っても、ブレーキタッチの良さです。キャリパーピストンの動きの良さに起因 すると考えているのですが、パッドが減っていっても、タッチの悪化を感じ難いです。過去に試した金MOSやSTD(共にマスターはVTR250)では、パッドスプリングを外しても、タッチの悪化は避けられませんでした。ブレーキの効き自体も 握り込む程に良く効きます。握り始めから「カンカン効く」タイプではありませんが、これ又良いフィーリングを生み出しています。(メジャーな改造方法にも関わらず)「もっと早くやっておけば良かった」と思わせるほどですが、注意点として、 マスターシリンダーの径の小さいモノと組み合わせないと、効きが悪く感じるでしょう。11mmマスターでも、十分良いタッチが望めますので、是非そうしていただきたいです。 メタリカパッドは、効きの良さと効力の立ち上がり方が好みなので、使っています。 VTRマスターに交換する事によって(スイッチホルダー・アクセル部をカットすれば)TZR250R-SPスロットルASSYがキレイに付けられて、ハイ スロ化が出来ます。私の場合、スイッチ系統を3XVの加工品(’91のみライトSW付きですが、元々設定の無いポジションは常時点灯にしました)に換え、右はキルSW のみにしました。仮組みしたところ、スッキリ加減が気に入ったので、そのまま採用しました。尚、集中SWは、社外品が売られていますが、安いのは避けた方が 良いと思います。又、3XV・SWを使う場合、(流通数は少ないですが)’91にしないと、加工が面倒になります(’92以降はハザードSWとなり、内部の加工が必要です)。 シートパイプは、加工する事により、ダンパーを効かせています(何とか、#10オイルを使える仕様にしています)。ほとんど格好だけですが、エアバルブも追加しておきました。 フレーム補強:ヘッド廻り スイングアームピボット部左右(左側はチェーンライン確保の為、インライン 加工&外側補強 ステダンボス溶接 昔のF3レーサー定番の、ヘッド廻りの補強をしています。ちょっと大き過ぎる感じなので、次号(レーサー)は、もう少し控え目にしようと思います。後、3XVホイール用にチェーンラインを確保すべく、インライン加工をしています。結構削らないと いけないので、補強は必須です。ピボット廻りは左右共補強するハメになりましたが、左側下部は、表からも補強しています。ついでにステダンボスも付けときました。 ドライブスプロケット:ザム特注オフセット スイングアーム:’90TZR250加工 Rホイール:TZR250R Rキャリパーステー:TZR250SPR加工 スプロケハブ:TZR250R加工 「3XVホイールをそのまま」装着出来る様に、してみました。ノーマルスイングアームのままでは、相当無理があるので、3MA・スイングアーム(ピボットは3MAベアリング+カラー仕様) に換装、フロントスプロケを特注オフセットタイプに、チェーンプラー&リアキャリパーの固定は3XV・SPタイプにしました。 3MAスイングアームを装着するのは初めてでしたが、ホイールベースが伸びるのが分かりました。3XV・SPチェーンプラー装着時は、穴を「後ろ合わせ(3XV・SPの方が前後に長い為)」にして、3MAアクスル穴の前方拡大しないと、 STD長に出来ません。 又、幅が広いので、ステッププレートとの隙間が少なくなります。2mmほど、スペーサーを入れて、クリアランスを確保しています。 ピボットベアリングは、3MAそのままで行く方法を採用しました。又、スラストベアリング(3XV−SP用)を使用していますので、カラーの計算が面倒でした。 ドライブスプロケナットの緩み止めをどうするか?アイデアに悩んだのと、ほぼチェーンプラーの溶接だけなのに、スイングアームの歪コントロールが必要でした。 ダイノマシンによるパワーチェック '10.5.29に「TZR250関西パワーチェックミーティング」があり、パワーチェックを行ってきました。大阪・箕面(当時)にある、 「J'rs Club」さんで、ダイノマシンによる計測です。結果から書くと、SUGO・F3手巻きコピーチャンバー(排気系改造)が1番良く、ピークパワー56馬力弱、トルクは約3.5Kgでした(通常、2回しか計測しないトコロを、データ比較の為に3回計測していただき、各仕様3回目のデータを表示しています。水温が上がったのもあり、2回目計測時の方が少しデータは良いです)。プリントアウト出来なかったので、デジカメによる画像のみですが、自分で分かれば良いと思ったので、左と中の画像が見難いのは、御容赦願います。グラフ上の3がSUGO・F3、6がSUGO・F3手巻きコピー(排気系改造)、9がSUGO・F3手巻きコピー改(排気系改造)、12がSUGO・F3(排気系改造)、15が6の条件+リードバルブブロック交換です。 今回分かったのは ・私のチューニングした2XTエンジンでは、SUGO・F3チャンバーそのままより、排気系改造(具体的には、テールパイプの太長化+ソレに見合ったサイレンサー)したモノの方が良い事(画像中央3と12から) ・SUGO・F3手巻きコピーの方が、SUGO・F3手巻きコピー改より、上が良い事(画像左6と9から) ・1〜3回目の計測データの変化の仕方や、設定パワーバンドなどから、SUGO・F3チャンバー近辺の寸法とのマッチングがまあまあな事(全てのデータから) ・SUGO・F3よりも、ソレをコピーし、手巻きで作ったモノの方が、上が良い事(画像中6と12から) ・リードバルブブロックを換えた方が、パワーバンド前半のトルクが上がった事(画像右6と15から)などです。 ピーク パワーはともかくとして、まあまあ狙った出力特性(8200〜12000rpmでトルク3Kg以上発揮しています)が出ているのを、確認出来たのが良かったです。上も、タコメーター上だけ(大体甘めに回転が出てます)でなく、ダイノ上で12000rpmまで使える感じです。狙いとしては、「サーキットで速いタイムを出せるエンジン」で、それを念頭においてエンジンチューニングを行っています。 SUGO手巻きコピー改より、SUGO手巻きコピーの方が良かったのは残念ですが、ほとんどチャンバー開発してないから、当たり前の結果ですね。前述の2本は、結構寸法が違うのですが、思ったよりも差は少なかったです。その事からも、まだまだ詰める余地はありそうです。パワーカーブを見ると、(特に)9500〜11000rpmでトルクが落ちるのを改善したいトコロです。今回のデータを分析し、以前のテスト結果と照らし合わせて、次期チャンバー開発に役立てたいと考えています。 今回の仕様は街乗り用で、吸気系は(15のリードバルブブロック交換時以外)フルノーマル(キャブ本体、キャブセッティング ※後日、SAJのみ違う事が判明しました。詳しくは後述してます 、エアクリーナーエレメント、エアクリーナーボックス、ブタ鼻、リードバルブ、リフト量など)、点火時期ノーマル、分離給油(オイルはヤマハオートルーブスーパー)、走行距離は腰下不明(?万Km)、ピストン系はO/H後約7000Km、エンジン仕様は上記にあります。レース用ならば、2次圧縮比をもう少し上げられます(現状より、0.8cc燃焼室容積が小さいヘッドでも、街乗りで1万Km以上乗れましたが、片側気筒だけピストンヘッドの排気側が溶けてました)が、マージンを考え、少し落としてます。又、パワーカーブから、(ストリート仕様で)これ以上2次圧縮を上げる必要は無い、と判断してます。 上記の街乗り仕様で、時々聞かれるのは「キャブセッティングはノーマルで大丈夫なのか?」という事です。結論から言うと、大丈夫ですし、支障もありませんし、セッティングし直す必要性も感じません。チューニングの仕方により、ノーマルキャブセッティング(元々壊れ難いように濃い目です)で大丈夫なのだろう、と考えています(同じキャブセッティングでも、実際に吸い込まれる混合気は、チューニング内容により変わります)。街乗り用なので、年中同じキャブセッティングですが、冬場でエンジンを廻す時は、「MJを上げた方が安心だろう」とは思います。又、キャブ口径が小さく、 負圧式のパワージェットが付いているのと、インマニの左右連結パイプ効果が一役買っていると考えられます。 今回は2XTエンジンベースでのチューニング例ですが、仮に1KTエンジンでも、同じ方向性でチューニングします。リードバルブの大きさと補助排気ポートの有無が大きな違いですが、チューニングの方向性を左右する事はありません。 パワーチェックでは、とかくピークパワーのみが取り上げられる事が多い(分かりやすく、アピールし易いから、仕方ない面もありますが・・・)ですが、サーキットランでは、出力特性も大事なんです。又、測定機器(同じ機器でも、個体差があります)や、測定方法(タイヤが滑らない範囲内で、負荷=タイダウンで引っ張ったり、人間が乗ったり・を減らした方が、測定値は良いです)、リヤタイヤ空気圧(前述と同じ理由で、滑らない範囲内で、空気圧が高い方が、良い数値が出ます)、当日の気候など、様々な要因で測定値は変わりますから、「ピークパワーが××馬力出た」というのは、絶対的な尺度では無いと考えます。 パワーチェック・後日追記 キャブセッティングがノーマルだと思い込んでいましたが、開けてみたら、SAJがなぜか1.4でした(1.4は1KT初期の設定。その後変更があり、全ての1KT&2XTのSAJが1.2になった)。気づかずにずっとSAJ1.4で乗っていて、寒い時はエンジンが温まる迄、下が薄めの症状が出ていましたが、ソレはキャブセッティングのせいと判明しました(後日、SAJを1.2にしたトコロ、良くなりました。ノーマルセッティングは流石です・・・)。まあ、パワーチェック結果に影響する程の事は無いですが、後日発覚したので、書いておきます。 その後、暫く乗っていたのですが、何となくエンジンに元気が無いので、リードバルブをチェックしてみました。少し開いていたので、交換したトコロ、又、下が薄めの症状が出たので、更にSAJを絞り(1.2→1.0に)、事無きを得ました。リードバルブにより、スロー系のエア量に影響が出るのは、興味深い事でした。 チャンバーのパワーチェック結果について、「RACERS・Vol7 マルボロYZR PART1」でも、似た様な事が書かれていました。OW86迄、下側気筒は楕円膨張室(と、右側はチェーン逃げの切り欠きアリ)の為、パワーが阻害されていたそうです。への字スイングアームにより、真円膨張室を採用出来、パワーアップに繋がったとの記載があります。(私の手巻きチャンバーは、リンク部の干渉を防ぐ為に凹ませており、真円では無いのですが)今回のパワーチェック結果とも符合し、興味深い内容でした。 TZR250のウイークポイント ・電装配線の金属製クランプが配線を傷める事がある → 保護用スパイラルチューブを追加、配線の取り廻し変更して対応 ・管ヒューズは受け部が弱くて耐久性に欠ける → プレートタイプに変更して対応 ・YPVSホルダー固定プレートが小さく、ホルダー接触面の磨耗が起き、症状が進むとホルダーが飛び出してくる → 形状変更した接触面の大きいプレートを新作して対応 ・オイルタンクレベルゲージの嵌め合いが緩くなって、オイルが漏れる → レベルゲージに液体G/Kを塗布し、十分乾燥(2〜3日放置するくらいがベター)させてから、組んで対応 ・チェンジペダルストロークが大きい、又はガタが出て大きくなる → チェンジペダル新作(レバー比変更)+ピロボールを交換式にして対応 又、ペダル支持部のスラスト規制を(一応)している ウェーブワッシャ(ペダル支持部・内側)を取り外し、シムにて再調整する事 その際、(見た目は悪くなるが・・・)接触面積の少ない外側に厚い(と言っても1mmか?)シムを入れ、内側に調整用シムを0.1mm単位で使用する事 又、シフトシャフトサポートの使用が望ましいが、入手が難しいので、ノーマルスプロケカバーにベアリングを仕込む事で、少し良くなる(元々の剛性が低いので、サポートに比べ、効果は落ちますが・・・) ・レギュレーターが壊れる場合がある → これはTZRに限らず、他のヤマハ車にも言える事(同一部品を使用)だが、対策品(に今はなってます)で対応(但し、それでもまだ万全とは言えず、対策を考えています)。レギュレーター問題に関しては、どのメーカーにもあるようで、色々な対策をされておられる方がいます。中には、冷却ファンを装着される方も居るようです ・初期(1KT)の頃のピストンは耐久性に欠ける → ピストンとリングは何度か仕様変更され、今は対策品になっています ・エンジンパワーが向上すると、(特に)後方右側のエンジンマウントステーにクラックが入りやすい → 私も経験しました(力の掛かる部分に、クラックが入りやすいようです)が、対策としては、捨てビードの延(スイングアームピボット鋳造部まで延長する。フレームの個体差で、鋳造部間際までビードがあるモノもある)とビード溶接盛りを併せると効果的(出来れば ステー下側に補強プレートを追加した方がベター。更にエンジンマウントカラーを使用して、セミリジット化し、応力を分散した方が良い。 ・アッパーラジエターステーが折れ易い → ステーそのものの強度不足やアンダーループの形状、固定方法に原因があると考えています。抜本的解決は難しいですが、現実的に打てる手として、ラジエターステー部の補強、アンダーループ・ロア固定部の補強が考えられます ・オイルタンクステーのリベットがヘタってガタついてくる → リベット打ち直しと接着剤などで補強し対応 ・リヤサスのバンプストップラバーは経年硬化で砕け散る → コレと言った対策は無く、サスO/H 時に別部品を入れてもらうくらいです ・YPVSからの排気漏れやジョイントの磨耗による ガタの発生がある → 定期的な点検&(必要ならば)シール交換、YPVSジョイントのアルミ部の加工(ヤスリ等で面を出し、更により強くホールド出来る様にする。又、ジョイントのゴム部の変形により、 YPVSバルブのスラスト方向に力が掛かる場合があり、作動が重くなる事例もあるので、 同時に修正しておいた方がベター)で対応 ・ウインカーがスグには点かない → SW操作をして、スグ点くタイプのウインカーリレー(配線加工も必要)に交換 ・スロットルバルブが磨耗する(相当な距離を走らないと起こりません)と、雨天時に、スロットルを戻してもスロットルバルブが戻り切らない(ステックするほどではなく、2000〜3000rpm付近をキープする)、若しくは、スロットル全閉からの開け始めに引っ掛かりが出る場合がある(スロットルバルブ・スリット部のサイドの磨耗により、キャブボディとのクリアランスが大きくなり、その隙間にアイシングによる氷粒が入り込んで、この現象を起こすと推察されます)。 → キャブボディ側の磨耗は、ほとんど無いので、新品のスロットルバルブに交換すれば大丈夫です 。後日追記:前述の内容は、(Y純正よりも安価だった為)某社純正エンジンオイルを使っていた時期の事で、Y純正スーパーオートルーブを常用する様になってからは、不具合は発生しておりません。多少なりとも(吹き返しガスに因る)オイルの潤滑性能が、スロットルバルブの摩耗を抑えているのかもしれません。 又、ステック気味になるのは、摩耗から推察するに、「ローリング方向」みたいです。 ・フロントフォークのオイルロックピースの精度が悪く、固定方法(ボトムケースに軽圧入)もあり、フルボトム付近で、フォークの作動が悪くなっている可能性が高い(フォークを組み立てる時、ボトムさせてシートパイプ固定ボルトを締めても、芯が出ずにリジット状態になり、仕方なくプラハンでボトムケースを叩いてフォークを伸ばし、作業を続けた経験が御有りだと思います)。 → 問題点は2点あり、オイルロックピ−スのテーパー精度向上と、固定方法の変更(ノーマルだと、オイルロックピース位置がボトムケース圧入に依存している為)が必要。後者により、樹脂製STDオイルロックピースの使用は危険(位置固定の為にボルトで締め込むと、多分割れます)なので、金属製オイルロックピースを新造し、固定方法も、シートパイプ固定ボルトと共締め(「ボルト穴の遊び」分芯出しする余地が生まれる)に変更する ・・・のが理想ですが、油面調整でフルボトムさせない様にするのが現実的でしょう。但し、油面を上げると、オイルシールへの負担は増えます。 ・スロットルケーブルのケース出入口部が破損する → 「お約束」レベルの出来事なんですが(苦笑)、出入口部に掛かる応力を分散すべく、柔らかいチューブでスロットルケーブルを覆い(分解して、ケーブルの上から覆えば、尚スマート) 、出入口部も含め、何か所かタイラップで縛っておいた方がベター(見た目は悪くなりますがね・・・) ・(長期の使用により)チョークレバーの固定ピンが飛び出てくる場合がある → ワイヤーロックにて、予防しておいた方が良い 他にもYPVSやアクセルワイヤー類の初期伸びがあるとか、オイルポンプ最小ストロークが大体多め(焼き付き対策でしょうが、マフラーからのオイル垂れが出やすいです。後日追記:R1−Zと部品統合分は、キッチリ調整されていました)等々ありますが、細かい部分ばかりで、対応・対策は十分可能です。もちろん、私のTZRは対策済みです。 レギュレーター考 ウィークポイントにも挙げたレギュレーター(当時の品番から、以下47Xレギュレーターと呼称します)ですが、熱でやられる場合が多いようです。47Xレギュレーターは放熱フィンが無い為、出来れば風通しの良い場所に配置したいトコロですが、現実問題として、スペース的になかなか難しいようです。また、アルミフレームをヒートマスとして利用して、熱を放出したいトコロですが、実際はフレームリベットナットが接しているだけで、あまり効果は上がっていません。改善策として、リベットナット頭径より大きな穴を(レギュレーターの取り付けピッチで)2つ開けたアルミ板を挟んで、レギュレーターを付ければ、少しマシにはなります(余談ですが、鉄フレーム車でも、47Xレギュレーターを採用しているバイクがあるようですが、その場合は少しでも風の 当たる場所に配置しておくべきでしょう。しかしながら、両者の相性は良いとは言えず、出来れば放熱フィンのあるタイプに換装した方が良いと思います)。ネットで情報を探ったところ、47Xレギュレーターにフィンが付いたタイプ(検証確認を私はしていませんが、Yなら3TJレギュレーター。Kならスーパーシェルパ用=コチラの方が3TJより安いです)があるらしいのですが、スペース的にギリギリの場合は付けられません(未確認情報ですが、タンデムステップステーとの干渉もある様です)。どうせなら(取り付け位置変更も視野に入れて)、もっと大きなフィンのついたモノに換装した方が、より効果的です。私の場合、良く流用されるXJR400R('95以降)のレギュレーターを使用し、良い結果を得ています(しかも47Xレギュレーターより安い)。延長コネクターと取り付けステーを作成(私は未確認ですが、 元の位置に付く事は付くらしいです)して取り付けていますが、充電特性が違うのか?マトモな47Xレギュレーターよりもバッテリーが長持ちします。 エンジンマウントカラー考 昔、SSイシイから発売されていたエンジンマウントカラーですが、私の入手したモノは手削りらしく、相当なサイズのバラつきがありました。機能的にも少し甘い寸法だったので、オリジナルのサイズで作り直したモノを装着しています。装着して少しの間は、特にステップに振動が出ますが、エンジンマウントカラーの磨耗(右後方の磨耗が1番早い)に伴い、少なくなります。又、トルクロッドは絶対残すべきです。エンジンチューニングやオフセットスプロケットを装着(てこの原理で、更にエンジンを動かす力が加わる)している場合には、装着は必須と思われます。 冷間時、始動直後のプラグかぶりについて 私個人の経験ですが、気温が低めの時、始動直後の走行中(100〜1000mくらい)に、プラグがカブる事が頻発しました。最初はプラグ交換で対応してい た(ソレで、カブる症状は暫く出ませんでした)のですが、さすがに1000Kmでカブられると、原因究明せざるを得ません。色々探りましたが、原因は、キャブ油面が高い事と分かりました。指定油面数値内(2XTのサービスマニュアルの数値は間違っているので、下記を参考にして下さい)で、低めにSETしてからは、今のトコロ大丈夫です。あと、IGコイルとシリンダーヘッド間のアーシングも効果的と感じました。私のはチューニングエンジンなので、プラグかぶりが起こり易いのかもしれません。 2XT・サービスマニュアル誤記について キャブ油面・H寸法ですが、2XTは四角タイプのフロート(R1−ZやTDR250、3XV・STD&RSと同様タイプ)が採用されているので、16mmの間違いです。マニュアル数値の21mmは、丸フロートタイプ用です(未確認ですが、1KTでも、四角フロートタイプのキャブ仕様があると聞きますので、参考にしていただきたく思います)。又、配線図ですが、メインSWのON時に黒−黒/白間導通も間違いと思われます(メインSW・OFF時&KILLSW・EngSTOP時に黒−黒/白間を導通させています)。 オイルポンプのエア噛みについて 長年、悩まされてきたオイルポンプのエア噛み現象ですが、新品に交換する事により、ようやく解決しました(余談ですが、最小ストロークの調整がバッチリでしたね)。以下、私の推論になります。エア噛み現象の原因は、キャビテーションの発生に起因するのでは?と考えています。更に、オイルポンプ内でキャビテーションが発生するのは、2つの要素が重なった為では?と推察しています。1つは、ある程度エンジンチューニングしている事。もう1つは、オイルポンプ・チェックバルブのバルブシートの劣化 (使用頻度に関わらず、ある程度の年月が経つと、そうなると思います)です。オイル供給量より吸入負圧(チューニングにより、ノーマル以上になっている?)が上回り、且つチェックバルブのシールが甘い(但し、本来の機能は果たしている様です)為、オイルポンプ内でキャビテーションが発生する・・・以上が私の導き出した推論です。 ・ある日突然エア噛みが発生する ・複数の中古オイルポンプをイジくり廻して(シール交換、チェックバルブスプリング交換など)装着してもダメ ・ノーマルエンジンの方には発生しない 、以上の現象も、一応の説明がつきます。後になって、別体チェックバルブによる方法も思いつきましたが、次回はソレを試してみたいと考えています。又、ノーマルエンジンの方からは、エア噛み現象の報告はないので、そんなに不安がる必要は無いと思いますが、用心するに越した事はないですね。 キャリパーピストンのアルミ化について 他社純正部品を流用し、STDキャリパーのピストン(カシマコートされたヤツ)化にトライしてみました。ところが、ピストンの動きが悪い上、ロールバック過大の症状が改善されなかったので、結局元に戻すハメになりました。 ネットで情報を拾うと、鉄とアルミの両仕様があるMOSキャリパーでは、シールの外径が違い、アルミ用の方が小さいそうです。キャリパーシールの変形量から、外径が小さい分、ロールバックが小さいと考えられ、アルミピストンを採用するには、そうした配慮が必要みたいです(シールとピストンが滑り難いからと推察されます。実際、入れ替え時に、押し込むのも、廻すのも、鉄ピストンより固かったです)。シールの材質違いもあると思いますが、元鉄ピストン仕様キャリパーに、アルミピストンを入れただけでは、ベストマッチングとは言えない様です。どうしてもアルミキャリパーピストンを使いたい場合は、元からアルミ仕様のキャリパーを使うべきでしょう。又、金MOS(元々アルミピストン)と2XTノーマルキャリパー(鉄ピストン)で、後者の方がピストン径が大きいにも関わらず、レバータッチが良い です(もちろん、同じマスターシリンダーで比較)。ブレンボは、そうでもないですが、アルミピストンはレバータッチが甘くなる傾向があるのでは?と感じました。 シートパイプについて 2XT(1KT)のフォークは、元々ダンパーがあまり効いていませんが、根本的な設計が、そうさせる様です。本来、シートパイプの孔をオイルが通ってダンパー効果を発揮させるべきなんですが、フリーバルブ等の設定により、そうはなっていません。 よって、シートパイプ孔を極端な設定にしないとダンパー効果に対する影響が少なく、(結果的に)オイル粘度に頼ったダンパー設定にならざるを得ない状況になっています。私が試した限りでは、#10オイルを使って、十分なダンパー効果を狙うのは難しいと感じました。又、#10と#15では、結構ダンパー効果が変わります。 エンジン懸架方式について STD状態のまま、エンジンパワーを上げていくと、色々不具合が起きてきます。エンジンマウント問題もその1つで、 エンジントルクにより、エンジンが傾きます。ヒドくなると、フレーム側のエンジンステーにクラックが入ったり、同ロア側サブフレーム固定部の磨耗(コレが決定打になり、私はフレーム換装を決意しました)が起きたり、サブフレーム・トルクロッド支持パイプの固定部が割れたりします。予防策として、フレーム側エンジンステーの補強、サブフレームの締結部の補強、エンジンマウントカラーの装着が考えられます。 (不具合が出る前に)対策を施した車体では、以前あったドライブスプロケナットの緩みが無くなり、効果が感じられます。又、エンジンを載せ換える場合、トルクロッド固定ステーの位置調整をした方が良いでしょう。 ホントは、フレームサイド部からステーを出して、エンジンフロント固定部を支えたい(昔、F3レーサーで、採用している個体がありました)のですが、整備性や製作法やスペースやコストを考えると、なかなか難しいですね。ステーを溶接でフレームに付けたい(前述のレーサーはボルト固定タイプです)と考えているので、余計に難しいです。 CDIついて ’17.2.26に、Jr’sCLUBさんにて、パワーチェックミーティングがあったので、手持ちの中古CDI5個(全て1KT用です)の検証をしてみました。結果は、ほぼドレも同じでした。’16年に、1KTでのCDIパンク初体験をしました(皆さん、スペアCDI は、常に携帯しておいて下さい)が、壊れる寸前まで、体感的にパワーダウンは感じなかったです。よって、1KTに関しては、CDI劣化によるパワーダウンは無いと判断しています。只、付けるCDIにより、影響を受ける1KTが存在するのも事実(その事に より、「検証すべき」と判断しました)で、その場合は、CDI以外に問題があると思われます。 又、パンクしたCDIですが、コンデンサー交換により、復活させる事が可能です。ネット上に情報があるので、詳しくは書きませんが、内部の充填剤を取り除くのが、1番厄介でした(私は、おススメ出来ない方法で作業したので、具体的には書けません)。あと、コンデンサーの足が、折り曲げられてはんだ付けされているので、外す時に注意が必要です。 点火時期について ’18.2.25に、Jr’sCLUBさんにて、パワーチェックミーティングがあったので、点火時期の検証をしてみました。1KT系エンジンのピックアップコイルは固定式なので、結構な加工をしないと、点火時期を変えられません。常識的な加工なので、せいぜい4度ほどしか進められないのですが、トライしてみました。結果は、9200〜12000rpmオーバーまで、全域トルクアップしました。 「主な原因は、チャンバーとのマッチングにあるのでは?」と考えていたトルク谷(ノーマルリードバルブ時には、特にヒドかった)ですが、点火時期の設定により、緩和される事も分かりました。 高回転域において、急激に遅角する特性(Y系2スト・2気筒車は、ほぼ該当します)が、チューニングエンジンにはマッチしない様です(まあ、ノーマルでも、遅角し過ぎていると考えていますが・苦笑)。よって、点火特性自体も変えないと、理想的とは言えません。 F3・CDIの点火特性(データは持っていませんが・・・)が良いかな?と考えています(現在、鋭意テスト中です)。 今回の結果は、私のチューニングエンジンの場合であり、ノーマルエンジンならば、又違った結果だったと思います。とは言え、「2MY−50」CDIは、「1KT−50」のより、2〜3度早い点火時期設定なので、良くなるかもしれません。 OSR−CDIについて 点火時期による、エンジン特性の変化については、改造スクーター時代から、頭では分かっておりました。それから時が経ち、点火時期を任意に変更出来るCDI(=OSR−CDI・私のは、RCDI2.4ですが・・・)を製作する事が可能となり、 街乗り2XTにて、試してみる事にしました(試すまでに、色々あったのですが、細かい事は、敢えて書きません・笑)。プログラムにもよりますが、効果は絶大でした。ノーマルCDIとの差が、こんなにあるとは、予想出来なかった位、改善される回転域 (パワーバンド前半)がありました。意外だったのは、体感ではパワーバンド手前のトルクも随分良くなっていたのですが、ベンチ上で、ほとんどグラフに表れない事です。コレは不思議でしたね。とにかく、(まだ、さほど詰めてない点火時期プログラムでも)パワーカーブの谷がほぼ無くなる程の効果があり、 「コレはスゴイな」と思わされました。ピックアップコイルの移動程度とは、全く比較にならないレベルで改善されます。 エンジンチューナーとしては、「出来るだけ点火時期に頼りたくない」のですが、これ程効果絶大だと、チューニングメニューに加えざるを得ません。当たり前ですが、チューニングエンジンには、ソレに合った点火時期プログラムが必要ですね。 現状、エンジンとチャンバーのマッチングがベストではないので、余計に点火時期による改善代が大きかったと考えています。 又、YPVSバルブの開度やタイミングも変更可能なので、更に可能性は広がります。コチラは、まだ試していないので、「楽しみ」は大きいです。 しかしながら、これだけ改善されると、エンジンチューナーとしては、複雑な気持ちになります。「不完全な」マッチングでも、点火時期を合わせる事により、それなりに良くなるからです。今回の改善も、チャンバーだけでやろうと思うと大変です。それほど、効果絶大ですね。只、考え方としてはまずはエンジンとチャンバーのマッチングを図り、その上で、点火時期を合わせるべきと考えています。 OSR−CDIを開発してくれた、利楽猿さんには、感謝したいです。今迄、手を付けられなかった分野に踏み込めるので、ノウハウの蓄積が嬉しいです。 OSR−CDIその後 ’20.2.23に、お馴染みJ'rs Clubさんにて、パワーチェックを行いました。街乗りでプログラムを詰めたRCDI2.4(現OSR−CDI)を試したのですが、これ迄の経緯も書きます。 前述の純正CDIを約4°進角させたグラフ(’18.2.25)が下左です。緑がSTD、赤が点火時期+4°、紫は同テールパイプ違い(残念ながら、あまり違いはなかった)です。点火時期の変更により、改善される箇所がある事が分かりました。 下中のグラフは、RCDI2.4初テスト時のモノ(’19.2.24)です。緑が純正CDI、青がRCDI2.4・RSタイプの点火時期、黄が同TZタイプです。ピーク過ぎまでは純正CDIより良いですが、レブ域はRSタイプでも純正CDI と同じ位です。約9300rpmから、違いが出ています。 下右が、街乗りでプログラムを詰めたRCDI2.4です。今迄で1番レブ特性が良かった純正CDI・4°進角と比べています。それぞれ3回ずつの測定が載っているので、見難いですが、「谷」のない方がRCDI2.4です。ほぼ全域良い事が分かります。ピークパワーも58馬力を超えました。 3種のグラフの横軸が、速度だったり、回転だったりする(回転がキレイに取れなかった事による)ので、比べ難いですが、ピークが約11600rpmです。12300rpmでも50馬力ほどですので、シフトポイントはその辺りですかね〜? 街乗りで、YPVSコントローラーの設定を色々試してみましたが、結局SUGO・F3タイプがベストでした(苦笑)。開度とタイミング設定をテスト出来たのは良かったです。 更に点火時期を詰める余地はあると思うのですが、チャンバーがベストではない現状では、これ以上求めてもあまり意味はないと考えますし、ベンチ上でないとピーク〜レブ域のテストは難しい(1速ではスグに回転が上がって判断し難く、ソレ以上の段数では、危険な速度域になる)と思うので、この辺りで妥協しています。 RCDI2.4とOSR−CDI1.30b(と、同600V仕様)比較 OSR−CDI1.30bと同600V(通常は400V以下)仕様を製作したので、RCDI2.4との比較を行いましたが、結果は「全て同じ」でした(苦笑)。色々勉強になったのは良かったです。又、点火時期により改善する領域は、ある程度充填効率の高い回転域のみ(RACERS誌にも、同様の事が書かれていました)という事も確認出来ました。 2スト車に思う事 現実問題として、今2スト車を維持する事が困難な状況にあります。年々、パーツ入手が難しくなる上、エンジンO/Hを受け付けてもらえないお店が増えている(表向きは「パーツが出ないから」と断るようです)そうです。従って、自分で整備出来る腕(と工具)を持ち、尚且つそれなりのスペースと、スペアパーツを在庫しておく財力と、(1番必要なのが)「2スト車に対する愛情」が必要となります(助けてくれる仲間が居れば、尚ベター)。 お分かりとは思いますが、改造は自己責任でお願いします。又、「TZR250のSUGO・F3チャンバーが欲しい症候群」や「エンジンをチューニングしたい症候群」などを発症されても、当方は責任を取れません。 総評:確かに細かい所を手直しした方が良いけど、良いバイクだと思います。バイクというモノは、軽くて、速くて、止まって、気持ち良くコーナーを曲がれる(コレが一番大事)べき、と考えるので、まずこの点でTZRは合格です。更に ・ポジションが楽(ハンドルがトップブリッジより上) ・カウルが付いている(高速道路を走る事を考えると必要) ・ハンドル切れ角も多い(フルロックして方向転換時に有利) ・耐久性が高い(特にエンジン。ピストン系を定期交換していれば、相当長持ちする) ・エンジンをF3仕様にしても燃費が落ちず、さほど耐久性も悪くならない(これは改造の仕方にもよります) などを考え併せると他に選択肢がないほどに思えてきます。実際、他に街乗りしたいバイクはありません。TZRに乗っていると楽しいと感じま すが、他のバイクはなかなかそうは思いません。これは非常に大事なポイントで、そのバイクに長く乗るかどうか?の基準になると思います。「おそらく、一生乗り続けるバイクになるな」と思わせるのがTZR250と言うバイクです。 |