8月18日 釧路市〜広尾町

 明け方ころチャリダーサークルの人達が慌ただしく準備を始める。列車と飛行機を乗り継いで、今日中に東京に帰るつもりらしい。僕等も表に出て彼らの無事を祈り見送る。この時期また一人、また一人と現実の世界に帰していくの見ると複雑な気分になる。

 彼らのように時間に追われていない僕等は久々の都会ということで、近くのホームセンターに行くことに。今日は久々にいい天気。雲が去ってここ道東も、はや高い秋の空。買い物を済ませ、久々マクドで朝食。「今日って、平日ですよね?」「…いえ今日は土曜日でゴザイマス…」「うそ、マジ!?」こんな会話が続く。ライダーハウスに戻り、オーナーと裏のおばさんに挨拶。そして昼前に釧路を出発。
 
 それにしてもいい天気だ。でもせっかく道東にやってきて、去る日に晴れるとは…せっかく景色の良い道東は、晴れないとイマイチ、そしてなんといっても寒いすぎだ。さてここからは太平洋岸、襟裳岬を通って道央方面に戻る予定。国道38号を今回道東へやってきたのとは反対方向西へ進む。やがて豊頃へ抜ける国道は右に分かれ、ここから十勝川河口までは、海沿いの町道へエスケープする。

 断崖が頭上まで迫り、海のすぐそばを走る。波も高くしぶきが飛んでくるほどだ。いくつかの海沿いの集落を抜けると、やがて断崖は海へ落ち込み、細い町道は行き場を失ったように急勾配で高い断崖上へと駆け上がる。しかもここからはダート。タイヤをとられないように慎重に登っていく。やがて目の前がぱっと明るくなる…バイクを停めエンジンを切り、崖の上から目にした眼下の風景にしばし立ち尽くす。限りなく青い海と空、そしてそれらを真っ二つに分ける、わずかに湾曲した水平線。聞こえるのは海を渡ってきた風の音、そして周辺の波が奏でる和音だけ。そこには海と空しかない、そしてその圧倒的な存在感を前に、自分が無に帰してしまいそうな錯覚にすらおちいってしまうのだ。

 そしてコレダのエンジン音が再び我を取り戻させる。再び断崖絶壁の砂利道を行く。もちろんガードレールなどなく、その上、まっさかさまに落ちても二度と発見されないような海からの高さ。慎重に行く。やがて崖を降りダートも舗装道路に変わると、眼前には広々とした十勝平野が広がる。

 そして豊かな水量で太平洋に注ぐ十勝川を越えたころ異変に着付く。走っている自分の影がどこかおかしいのだ。バイクを止めてみてみると、何と後ろにくくりつけたハズの釣り道具を落っことしているではないか!!あのでこぼこダートの衝撃で落ちたのか?と、思ったがここは冷静にデジカメで先ほどダートで撮ったコレダの画像をチェックしてみる。するとまだ荷物はくっついてる。まだ近い、とりあえずその地点まで戻ることに。しかも路肩を注視しての走行。再び十勝川を越え、結局先ほどの撮影ポイントまで戻ってはみたが、誰かに拾われてしまったのか、結局見つからなかった…。数々の思い出の詰まった自作ルアーや、これまた思い出のリール達…重度にへこみながら、また戻ってきた来た道をゆく。竿がまだ生き残っていたのも不幸中の幸いといったところであろうか。

 実に四度目の十勝川を越え、放心状態に近い危険な状態で、さらに南下しているうちに、日も傾き広尾という街に出た。

 今日はここの広尾キャンプ場に入ることに。サイトに入ってみると、ファミキャンの量が半端じゃない。しかも盆過ぎ&人気薄のこの地方ということでライダーは全く見当たらない。ファミキャンの中で一人だけポツンとシングルのテントを建てるのは死ぬよりも寂しい。なんとか唯一のチャリダ―を見つけ、声をかけ横にテントを張らせてもらう。彼は日本縦断中の神奈川から来た大学生。数日前、宗谷を出発し、はるか鹿児島県の佐多岬を目指して走っているそうだ。やがてライダーが一人加わる。やがて海のほうからドンと一発。すぐ前の十勝港で花火大会が始まったようだ。花火大会に出くわすのは昨日に引き続き今回の旅で実に三度目。花火を見ながらささやかに乾杯。今日は人が多いので、おとなしく早めに寝る。

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Y.K