8月21日 熊石町〜青森県大間町

 強い日差しと騒がしいカラスの鳴き声で目を覚ます。おそらく北海道最後の朝。今日も快晴、気温もグングン上がりはじめる。僕は、昨日仕入れたとうきびを茹で、みんなと食材を分け合って楽しい朝食。こんな賑やかな風景も今日で最後かも。

 まず旭川のあんちゃんを見送り、管理人が来る前に、僕も今日は比較的早めの出発。おそるおそる管理棟を覗き込んでみると、ヤバイ、管理人がもう来ている!隙を見計らってたまらずフルスロットルでキャンプ場を後にした。

 それにしてもここ数日、特に今日は良い。空も高く、澄み切った青さ。まるで秋の空。交通量も皆無だし今日は松前半島をぐるっと回って函館まで行ければいいので、のんび〜りマイペースで行く。旧松前藩の町、乙部、江差、上ノ国は北海道でも早くに開けた町。北海道ではかなり珍しい神社や寺などの類もあって、かなり本州の雰囲気に近い。しかし昼過ぎ、松前を過ぎたあたりで事態は一変する。

 突然強い南からの風が吹き始め、先ほどまでの穏やかな海も一変して白波大荒れ。台風が来ているとは聞いていたが、もうそんなに接近しているとは。帰省シーズンは終わったものの、フェリー乗り場で足止めはまずい。今日中の便で本州に渡らねば、少しペースを上げる。とはいうものの強烈な向かい風で、フルスロットルでも一向に前に進まない。何とか白神岬をこえ風裏に入るとかなり、しのげるようになる。

 そして道南のビッグスポット「青函トンネル記念館」に到着する。青函トンネルは言わずと知れた本州北海道を結ぶ世界一の長大トンネル。北海道側の抗口がここ福島町にある。残念ながら鉄道専用で車両は通行できないが、全長五十キロメートルものスケールは「巨大建築物マニヤ」の僕を引き止めるのに余りある。早速入場料を払って人気のない館内をじっくり観覧。青函トンネルのすべてがわかりやすく展示され、さらにそこには役目を終えた今にも動き出しそうな橙のマッドマシーン達が鎮座する…(中略)…。

 記念館を後にし、函館へ急ぐ。風裏で強烈な追い風が吹く。荒れる波の向こうにようやく函館山が見え、やがて日も沈む。信号待ちで横に並んだライダーに声をかけると、彼も今日中に大間に渡りたいらしく、出航までの時間もあまりないそうだ。大急ぎでフェリー乗り場に到着すると、すでに車は長蛇の列で満車状態。ほとんどが青森行きらしいが、だいぶ大間行きに流れてきているみたいで、早急に乗船書類を作成し列に加わる。幸いバイクはまだ余裕があるらしく、難なく切符を購入、それでも出航15分前ギリギリで間に合った。

 そして出航。デッキに出て徐々に遠ざかる函館の夜景を見つめる。カモメたちがすぐ近くまでやってきて僕達を見送る。何かドタバタした北海道の最後であったが、しばしの間、今年も無事に北海道を回れたという軽い安堵感に浸る。こらから海上1時間40分、ちょっとした船旅。やはり波が高くかなり揺れの激しい。少しベンチに横になり眠る。起きるとすでに大間に着いていた。

 そして下船、再び旅へのモチベーションがふつふつと湧き上がる。とはいってももう周囲は真っ暗、先ほどのライダーに先導されて大間崎テントサイトへ。一見すると空き地のようだが、ログハウス調の炊事場にはテーブル、椅子も備わる。ここでも寝れそうな勢い。しかも無料。いつもより遅い晩飯を食い、今日は早めに寝ることに。それにしても台風が心配だ。

次の日へ

戻る


Y.K