終章〜日本列島大返し〜
8月22日 大間町〜横浜町
 強い風がテントを叩く。外に出て空を見上げると物凄い勢いで雲が流れていく。とうとう台風がそこまでやって来ているみたいだ。今日は焦らず行けるとこまで。まず、キャンプ場のすぐ裏、観光客皆無のめちゃ淋しい大間崎に立ち寄って、急に降り出した雨の中、いざ本州を南下する。こんな状況下で、かの霊場恐山にトライして、トラブルでもあったらマジシャレならないので今回は「触らぬ神に…」ということでもちろん素通り。

 むつを過ぎたあたりから、ますます横風が強くなり始め、たまに危うく反対車線に流されそうになる。さらに小雨なのに雨粒が加速されて顔面が痛い。ハンドルにしがみついて、「そろそろ限界かなあ」と思っていると、後ろからやってきたライダーが声をかけてきた。「どっか泊まるとこないっすか〜?」久々に聞く関西弁だ。とりあえず道脇にバイクを止め二人で地図を覗き込む。この先の横浜というところに道の駅があるみたいなので、とりあえずそこで情報収集してみることに。

 彼を先に送り出し、南に走ること三十分、とうとう風もやばいくらいになってきて、道の駅「横浜」にたどり着いた。早速、道の駅のオバチャンを捕まえてわざわざ役所まで電話してもらっていろいろ聞いたところ、この辺は野営施設が結構充実しているみたい。しかし、この風ではキャンプは命がけだし、いくつかのコテージもベラボウに高い。すると、ここのトイレで寝ていけとのことで、早速、見てみると、エントランスがかなり広い休憩所みたいになっていて、その上自動ドアで隙間風すら入ってこない快適空間。即決する。早速、荷物を搬入していると、表でバイクの音が。さっそく声をかけると何と女性ライダーで、北海道に向かう途中で台風に追いつかれ、途方にくれているとのこと。結局彼女もここで台風をやり過ごすことになる。台風とはいえまだ日も高いし、何と言ってもここはトイレという公共スペース。ベンチにかけて時間を過ごす。

 やがて日も沈み、道の駅でふんだんに食材を購入。そして外はとうとうどえらい暴風雨と化し、もうほとんど人はやってこなくなったのでエントランスに荷物もおっぴろげて、占拠状態。宴会モードに突入。大阪弁の彼は日本一周中の大学生、勝間さん、ゴッツイオフ車の彼女は元OLの吉田さん。二人ともかなりのツワモノで話題も尽きない。やがて一人の老人がどこからともなく現れ、「あまりモノやけど食って」とメロンとパンを置いてすぐに消えていった。こんな豪雨の中、地元の人だろうか、もちろんありがたくいただくことに。しかもこのメロン、甘くて、涙が出るほどうまい。三人とも無言でむしゃぶりつく。台風のさなか食ったこのメロンの味はわすれられないものとなるだろう。ラジオでは明日の朝まで、雨も風も強いらしいので今晩は遅くまで騒ぐ

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Y.K