8月26日 楢葉町〜東京都江東区
 今日もまた朝から霧が立ち込める。その霧のせいか、特に海からの風が肌寒い。勝間さんとガッチリ握手をして前に見送る。彼とならまた、どこかでひょっこりと会いそうだ。そして今日もマイペースで国道六号を南下する。さらに雲が厚くなり今にも雨がきそうな天気。

 日本一面積のデカイマンモス市であるいわき市を過ぎるとすぐに茨城県に入る。これで長かった東北とお別れ。いよいよ首都圏へ。首都といえども茨城県、スタンドのニイチャンと話しても感動するぐらい訛ってる。今日も見所も皆無なのでひたすら先に進む。あの日立グループの城下町日立市、最近ではもう珍しくも何ともない「ひらがな市」のひたちなか市を過ぎ、国道六号も水戸あたりから車も家もかなり多くな、り注意しての走行が続く。幸い、このあたりから天気は回復に向かい、急に蒸し暑くなる。関東地方はまだまだ現役の夏なのである。

 右後方に筑波山を見送り、土浦を過ぎると、ここからは広大な関東平野を走る。行けども行けどもだだっ広い平地に農地と宅地が混在する、錯雑とした典型的な郊外の風景が続くのである。取手を越えると、広い川幅を持つ利根川を渡る。 これで早々と千葉県に入りる。実にハイペース、が柏市を過ぎたあたりから車が全く動かなくなる。そう言えば今日は日曜日、地方から都心方面に戻る車だろうか。さすがにこの荷物だと、すり抜けはかなりのリスクを伴うので、車の間に入って、歩くような早さで少し進んでは止まり、また進んでは、止まりを繰り返す。結局柏から松戸までのほんの十数キロ抜けるのに、実に二時間を要してしまった。ほんとに東京の渋滞はすさまじい。

 さてさて松戸をやっと抜け江戸川を渡ると、なぜか一転して急にハイペースになり、アオリ地獄になる。しかもここ東京では誰がどう考えても原チャはアブネ―だろ!という高架橋がどうゆうわけか、走れちゃうので、ここでも何度か死にかけた。日もかなり傾き、ここで重大な問題が浮上する。「東京までやってきたはいいが、こんなイイ時間でどこで寝ればいいの?つーか東京で野宿はアブネ―だろ」。東京には親戚、知り合いのうちが何軒かあるが、何の連絡もしてないし、ここまでコネなしで続けてきた旅、最後までそのスタイルは貫きたいもの。それは最終手段として、泊まれそうなところを地図で探すと、あった!なんと東京湾のど真ん中に「若洲海浜公園キャンプ場」とある。とりあえずそこに行ってみることに。

 荒川を渡り、明治道りを右折、海を目指す。日も暮れかけたころようやくその埋立地、若洲へ。しかしである、キャンプ場への道に百メートルおきぐらいに「キャンプ場は要予約」旨の看板が立ち始めたのだ。にわかに雲行きが怪しくなる。「そりゃこんな腐るほど人間のいる東京、都心になんかキャンプ場あったらそりゃ殺到するわ」また同じ看板が目に入る。「うるせー。こうなったら直談判だ!!」

 とりあえず管理棟へ腕をまくって乗り込むと、入り口には早速イカツイガードマンが立ちふさがる。中に入らないと埒もあかない、まずこいつを説得。「当キャンプ場は事前の予約が必要となっております」と予想どうりの開口一番のマニュアル攻撃。「いや〜何とかなりませんかね〜そこを何とか!」似たような問答が数回続いたのち「…ワカリマシタ、少しお待ちを」と奥へ。責任者らしい人間となにやらヒソヒソ。すかさず子羊のような視線で攻める。するとその管理人「ホントはダメなんですけどね。今回だけは例外です。なんかお金もなさそうだし…」最後の一言はメチャメチャ余計だが、事実だから仕方あるまい。

 子羊作戦が功を奏したのかどうか、めでたく許可証を受け取りサイトへ。やはり多い多い、ファミキャンだらけ。こんな密度の高いキャンプ場も初めて。静かになるまで、軽くなったコレダで夜の東京ベイを流す。今日東京に入ってから都会の雑然とした風景を眺めているとなぜか地元に帰り着いたような安堵感みたいなものを覚える。都会生まれの都会育ちのせいだろうか、おそらくそうだろう、北海道の雄大な風景よりなにかしらこの景色がしっくりきてしまう。そして旅ももうすぐ終わりを告げる。やがてファミキャンも寝静まり、今日はひっそりと眠りにつく…が?体中がカユイのだ!?蚊である!しかも無数である!ふと見るとテントに穴が…。キャンプ場には夜遅くまで「パチン!パン!」という音が鳴り響くのであった。

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Y.K