8月27日 江東区〜静岡県相良町

 朝、体中がまだかゆい。たまらずテントからはいだす家族連れファミキャンが目を覚まさないうちに、ささと飯を食ってキャンプ場を後に。ハンドル握りながら欠伸をするも、なんか懐かしい都会の空気。どこか新鮮。

 弱肉強食通勤ラッシュの湾岸道路(三回死ぬかと思った)を抜け、まずは都心方面に向かう。フル野営装備で銀座の和光前を通過し、皇居前をかすめ、官庁街を抜ける。スーツ姿のエリート達が薄汚い物体が道路の端を突き進んで行くさまを目をむいて見てくる。どこか快感。

 やがて東京タワーが見え、国道1号に合流、大阪まで600km、もうすぐだ。しかし渋滞が出鼻をくじく。横浜の先までずっとトロトロと渋滞。やっと抜けたかと思うと、今度は大型地獄が待っていた。一般国道1号も今や高速並に整備され、不景気のせいか、トラックト・レーラーが異常な数。何度も引っかけられそうになる。

 途中茅ヶ崎あたりで久々の雨、夕立。あの何とも言えない黴臭さが立ちこめる。夏の終わりの匂い。街路樹の下でしばし空を眺める。

 湘南海岸をいい感じで抜け、立ちはだかるは、天下の難所、「箱根」。迷わず旧道へ入る。さすがに新車のテストの場でもある箱根旧道、べらぼうに坂がきつい。ちょうど雨も本降りになりツルツル前輪もかなり限界。全く雨をはかない。まさに歩くスピードで上を目指す。口吟むは「箱根八里の半次郎」。この余裕、僕も逞しくなったななんて思う。やっと芦ノ湖が見え、今度は下りに。しかも新道と合流してさらにトラックの雨嵐が加わる。この辺は自己の生命を守るのが精一杯であまり記憶に残ってない。

 やっと左に駿河湾が見え隠れし、右には…やはり今日も富士が見えない…。旧東海道をトレースするのはまたの機会においといて、今回はひたすら本線で大阪を目指すことにする。超ハイペースで三島、富士、清水、静岡と工業都市をすり抜け、日も暮れかけた頃、袋井市のとある公園に入り、今日はここで寝ることにする。

 ふとベンチを見ると、なんと本州ではもう絶滅したかと思われたかに見えたライダーがいるではないか。早速声をかけると、彼は大阪から来ている自称「東海道マニア」で東京と大阪を何往復もしていて、この公園も何度も寝たことがあってお気に入りの寝床らしい。久しぶりの会話に花が咲く。

 しかし彼いわく、このあたりはホームレスやヤンキーが比較的多く、物を取られたこともあるそうだ。ちょうどその時、自転車に乗った、いかにもあやしい奴が公園の周りをグルグル周り始めた。いつもの偵察パターンらしく、彼は僕によそで寝ることを勧めてくれた。背に腹は替えられないということで、仕方なく疲れた体に鞭打って、安全そうな海沿い、御前崎方面に走らす。一時間くらい走ったところ、相良というところに良さそうな堤防があったのでそこで倒れる。

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Y.K