阪神高速神戸山手線
 
区間
白川JCT〜駒栄出入口
出入口
◆供用中区間
白川出入口
妙法寺出入口
神戸長田出入口

◆未開通区間
駒栄(仮名)出入口
神戸市須磨区高倉付近 出入口
開通予定
湊川JCT〜駒栄出入口:未定
駒栄出入口〜南駒栄JCT(湾岸線):未定
高倉〜妙法寺(分岐線):未定(公団民営化時に阪神高速道路の整備路線から除外)
総事業費
約3,200億円
(神戸山手線建設事業誌(2009年6月発行)より)

路線概要
 31号神戸山手線は神戸市長田区から須磨区の北部の山間部を南北に通る路線で、現在、白川JCT〜湊川JCTが供用中です。山間部だけでなく長田区の市街地も地下トンネルとなっており、路線のほとんどがトンネルで構成されています。阪神高速道路のネットワークとしては3号神戸線と7号北神戸線と結びつける重要な路線で、北神戸線とあわせて第二神明道路のバイパス路線的な役割も果たしています。
 湊川JCT〜駒栄出入口が建設予定で、さらにその先で計画中の阪神高速道路5号湾岸線西伸部との南駒栄JCTを設ける予定です。この区間は用地買収などは着手されていますが湾岸線西伸部を建設する際に建設される予定になっています。湾岸線西伸部は都市計画決定済みですが、莫大な事業費が必要な為、西伸部の一括整備ではなく神戸山手線との南駒栄JCT〜六甲アイランド北間を先行整備する話も出ており、近い将来、神戸山手線が阪神間の大動脈の一部となる可能性もあります。
 

◆神戸山手線 概略図




計画の経緯 その1 神戸山手高速道路技術委員会 昭和44年答申 第1次計画案
 昭和45年12月に神戸市に「山手高速道路技術委員会」が設置され、当時建設中だった阪神高速神戸線(当時は神戸西宮線と呼ばれていました)の他に、東西方向の交通の機能分担をする路線として市街地山手に都市高速道路を建設する計画案が検討されました。これが神戸山手線計画の発端となり、『神戸山手線』という名称の由来でもあります。
 この阪神間の山手側東西方向に都市高速道路を整備する構想は以前にもあり、阪神高速道路公団が設立される前には、阪神地区高速道路協議会にて、神戸山手線とは異なる計画ですが『阪姫線』という名称の路線として計画案が出された事があります。この阪姫線は『31号神戸山手線建設誌』によると、阪急神戸線沿線の未整備市街地の再整備をねらった区画整備の起爆剤としての側面があったようで、概ね阪急神戸線沿いへの整備を想定されていた模様です。
 山手高速道路技術委員会による昭和44年答申の第1次計画案では、須磨区高倉から山間部を通って長田区蓮池町(現在の神戸長田出入口)に出て、山手幹線に高架道路を建設して市街地を東西に貫き、深江付近に至るものでした。途中の原田で山側を阪急神戸線沿いを通るルートと分岐していますが、恐らくは建設用地の関係から東行きと西行きを分けたものだと推測されます。この上下線をセパレートにする方法は次に出される第2次計画案でも別の区間で使われています。将来構想としては、深江からさらに東へ延ばして、現在の3号神戸線と共に山手沿いに阪神間を結ぶルートになるものでした。


◆神戸山手高速道路技術委員会昭和44年答申の第1次計画案




計画の経緯 その2 神戸山手高速道路技術委員会 昭和45年答申 第2次計画案
 この神戸山手線の計画が審議されていた頃は、全国的に公害などの環境問題が課題となっており、山手幹線沿いの商店などから神戸市議会に陳情や請願が出され見直しをする事となりました。そこで昭和45年秋に答申されたのが第2次計画案です。
 この第2次計画案では、長田〜三宮付近の区間を西行きと東行きでルートを変え、東行きを湊川沿いに少し山側を通るルートにし、西行きは山手幹線を通る計画としています。この答申から阪神高速道路公団で昭和46年度に高倉〜長田(長田区蓮池町)〜原田が、昭和47年度に白川(須磨区車)〜妙法寺が予算採択されて計画路線となりました。

◆神戸山手高速道路技術委員会昭和45年答申の第2次計画案

↑長田〜三宮付近は山側が東行き、海側が西行きとなっています。
※この2手にルートが分かれる点について資料では記載されてない事が多かったのですが、「昭和47年度通常予算に関する大阪市会計土木委員会第3回(昭和47年3月15日)会議録」で高速道路問題についての質疑の中で、神戸山手線の昭和45年秋答申の第2次計画案の内容説明があり、そこで「湊川沿いの東行き2車線とセパレートするという案が検討された」と記録がありました。


計画の経緯 その3 都市計画決定
 第2次計画案についても、西行きのルートとなる湊川沿いの沿線住民などから神戸市議会へ建設反対の請願が出され、市議会では公害起こり得るもにのついてはルート変更、その他公害がないように再検討する必要があるということで、反対の請願が採決されました。しかし、開発が進んでいる須磨ニュータウンと市街地を結ぶ長田〜白川・長田については事業化の手続きを進めることになり、この区間については都市計画が決定され、長田より東について市議会等の意見を尊重して検討するという事になりました。
 その後神戸山手線を役割について再検討がされ、昭和48年の近畿地区幹線道路協議会では、本来東西方向への交通需要に対応した路線として計画されていた神戸山手線の役割を、当時背山道路と呼ばれていた現在の7号北神戸線と、臨海部に計画中だった現在の5号湾岸線に代替させ、神戸山手線はその路線と一体となり南北方向の交通需要に対応する路線へと役割を変える事が提案されました。

◆昭和47年の都市計画決定区間




計画の経緯 その4 南北への延伸
 神戸山手線が南北方向への交通需要に対応する路線となり、都市計画が決定していた区間よりもさらに南北への延伸させる事が検討され、昭和49年に北神戸線とあわせて都市計画を決定させる方向で議論が進んでいました。しかし、都市計画決定済みの白川・高倉〜長田について建設反対の要望が相次ぎ、「高速2号再検討専門委員会」が設置されて議論される事となり、この状況下で延伸計画を進める事は、神戸山手線の計画自体に重大な影響を与える事が懸念され、当面見送られる事になりました。尚、都市計画が決定された北神戸線については、建設当初からまだ都市計画に入っていなかった神戸山手線との白川JCTの準備工事がされており、JCTの北神戸線の明石方面→神戸山手線の連絡路で北神戸線の下を潜るカルバートボックスは北神戸線建設時に既に用意されていたものです。
 昭和58年に都市計画決定済みの白川・高倉〜長田間について検討を行っていた「再検討委員会」で必要性が認められ、一部工事に着手する事になりました。さらに昭和63年には「明石海峡大橋関連地域整備計画」にて神戸山手線が関連道路に指定され、南北延伸部の計画が提案されることとなり、平成2年に都市計画が決定されました。

◆平成2年の南北延伸の都市計画決定




環境問題に対し先進的な手法がとられた神戸山手線
 前述の通り、神戸山手線は最初の計画が提案された昭和40年代当時の環境問題に敏感であった社会情勢もあり、都市計画が決定したにも関わらず、神戸市で市長の諮問機関として「高速2号線再検討委員会」を昭和50年4月に設置して審議する事になりました。
 このように車の排ガス・騒音等の公害を懸念した高速道路に対する反対運動で計画の進行が止められた事例はこの神戸山手線だけでなく、ほぼ同じ時期に大阪で計画を進めようとしていた阪神高速高槻線(第2環状線)、阪神高速泉北線でも起きていました。大阪地区のこの2件は、大阪府公害審査会という当事者間(反対者と阪神高速・大阪市などの行政)で話し合いを行う場を設けて妥協案を探るようなものでしたが、結局は両者の意見に合意が見られず、打ち切りとなりました。対して、神戸山手線で設けられた「高速道路2号線再検討委員会」は、委員(地元・市が推薦した11名の学識者)、特別委員(地元代表3名と市職員3名)、専門委員(気象関係者や風洞実験関係者の3名(昭和57年当時))にて検討を行うもので、こちらは昭和58年に結論を出しておりその答申内容は下記の通りです。

昭和58年9月19日の高速道路2号線再検討委員会の答申内容

〜答申内容〜
@高速2号線は必要である。
A騒音、二酸化窒素については、環境上何らかの配慮が必要である。
B建設、運営にあたっては、答申の趣旨が十分に反映されるよう要望する。
(阪神ハイウェイ75号 昭和58年12月5日発行 より抜粋)

 この答申で事実上、神戸山手線の建設は必要なものと判断され、時間はかかりましたが開通への道筋を立てる事が出来、現在は3号神戸線と7号北神戸線を結び、神戸地区の都市高速道路ネットワークの南北間を担う重要な路線となりました。
 神戸山手線が開通まで辿り付けた要因として言えるのが、独自の委員会で環境調査等を行った点にあると考えられます。この手法は、現在高速道路等を建設する際に行われるPIプロセスにも似ており、時間はかかりましたが結論を出した事で、大阪の2件のように大きく計画を変更したり廃止したりすることなく開通する事が出来たのではないでしょうか。特に、神戸山手線が計画された当時は、事業者や行政が高速道路計画の重要性や必要性をしきりに訴えていた事が多く、そこで何とか地元を説得して建設を進める方法がよくとられていたようですが、その中で神戸山手線は神戸市で学識者や地元代表を含めた独自の委員会で検討を行い、懸念される点について環境調査や騒音調査等の検証を重ねて建設するかどうかの決断や、建設の条件(環境への配慮等)を出した点で、現代の高速道路建設手法に近い先進的なものだったと言えます。




妙法寺〜高倉の分岐線について
 31号神戸山手線には、現在の白川南JCT〜湊川JCT以外にも妙法寺付近で分岐して、須磨区高倉台で第二神明道路に接続する分岐線の計画がありました。神戸山手線の当初の計画からある区間ですが、神戸山手線建設事業誌(2009年6月発行)のP7「2.1路線の全体概要」記載によると、「この分岐線は社会情勢が交通需要の動向を勘案し事業実施を見合わせていた」という事で、公団の民営化以前より見合わせていたようです。その後の民営化では「平成18年3月に締結された(独)日本高速道路保有・債務返済機構と阪神高速道路株式会社との協定において、会社が新設する高速道路区間から除外された。」(神戸山手線建設事業誌より抜粋)という事で、阪神高速道路として建設する道路ではなくなっています。
 また、阪神高速道路公団ではこのような本線から分岐するような将来計画路線がある場合は、分岐予定部分などを本線建設時に施行する事がありますが、この神戸山手線の分岐線では、本線からの分岐部分の施工どころか分岐線自体を考慮せずに建設されています。神戸山手線建設事業誌(2009年6月発行)P291によると、分岐線を考慮すると長田トンネルの勾配がきつくなる為、将来の技術進歩に期待するという事で、分岐を考慮せずに行ったという主旨の記載がありました。
 さらに、この分岐線についてはまだ神戸市の都市計画図に記載がありますが、「湾岸線と機能が重複、交通需要が見込めない」(みちづくり計画 神戸市 平成23年5月発行より抜粋)とされており、阪神高速道路での建設も神戸市での事業化も可能性としては皆無の状態です。


湊川JCT〜駒栄出入口とその先の南駒栄JCTについて
 湊川JCT〜駒栄出入口は、そのさらに南の南駒栄JCTで接続する5号湾岸線延伸部と合わせて整備される方針で、湾岸線の開通までおあずけ状態となっています。湾岸線の延伸部については、南駒栄JCT〜六甲アイランド北間を先行整備する案があり、駒栄出入口は湾岸線延伸部の工事と同時に着手される可能性が高そうです。



各年度の建設計画の予算
 神戸山手線建設事業誌の「表-3.1.2年度ごとの事業費」より、各年度の神戸山手線の事業費を記載しております。

◆阪神高速道路公団 昭和46年度事業費
神戸山手線 予算:約1億円
☆須磨区高倉台〜長田区蓮池町〜灘区原田の13.6km

◆阪神高速道路公団 昭和47年度事業費
神戸山手線 予算:約1億円
☆須磨区高倉台〜長田区蓮池町〜灘区原田の13.6km
☆上記に加えて 須磨区妙法寺〜須磨区車2.5kmを追加

◆阪神高速道路公団 昭和48年度事業費
神戸山手線 予算:約7億9千万円

◆阪神高速道路公団 昭和49年度事業費
神戸山手線 予算:約38億万円

◆阪神高速道路公団 昭和50年度事業費
神戸山手線 予算:約8億万円

◆阪神高速道路公団 昭和51年度事業費
神戸山手線 予算:約14億円

◆阪神高速道路公団 昭和52年度事業費
神戸山手線 予算:約1億9千万円

◆阪神高速道路公団 昭和53年度事業費
神戸山手線 予算:約3億8千万円

◆阪神高速道路公団 昭和54年度事業費
神戸山手線 予算:約5億円

◆阪神高速道路公団 昭和55年度事業費
神戸山手線 予算:約3億円

◆阪神高速道路公団 昭和56年度事業費
神戸山手線 予算:約5億円

◆阪神高速道路公団 昭和57年度事業費
神戸山手線 予算:約3億8千万円

◆阪神高速道路公団 昭和58年度事業費
神戸山手線 予算:約20億7千万円

◆阪神高速道路公団 昭和59年度事業費
神戸山手線 予算:約29億円

◆阪神高速道路公団 昭和60年度事業費
神戸山手線 予算:約26億円

◆阪神高速道路公団 昭和61年度事業費
神戸山手線 予算:約26億円

◆阪神高速道路公団 昭和62年度事業費
神戸山手線 予算:約34億円

◆阪神高速道路公団 昭和63年度事業費
神戸山手線 予算:約27億円

◆阪神高速道路公団 平成元年度事業費
神戸山手線 予算:約36億円

◆阪神高速道路公団 平成2年度事業費
神戸山手線 予算:約31億円

◆阪神高速道路公団 平成3年度事業費
神戸山手線 予算:約53億円

◆阪神高速道路公団 平成4年度事業費
神戸山手線 予算:約148億円

◆阪神高速道路公団 平成5年度事業費
神戸山手線 予算:約224億円

◆阪神高速道路公団 平成6年度事業費
神戸山手線 予算:約353億円

◆阪神高速道路公団 平成7年度事業費
神戸山手線 予算:約390億円

◆阪神高速道路公団 平成8年度事業費
神戸山手線 予算:約237億円

◆阪神高速道路公団 平成9年度事業費
神戸山手線 予算:約171億円

◆阪神高速道路公団 平成10年度事業費
神戸山手線 予算:約236億円

◆阪神高速道路公団 平成11年度事業費
神戸山手線 予算:約260億円

◆阪神高速道路公団 平成12年度事業費
神戸山手線 予算:約271億円

◆阪神高速道路公団 平成13年度事業費
神戸山手線 予算:約317億円

◆阪神高速道路公団 平成14年度事業費
神戸山手線 予算:約344億円

◆阪神高速道路公団 平成15年度事業費
神戸山手線 予算:約84億円

◆阪神高速道路公団 平成16年度事業費
神戸山手線 予算:約45億円

◆阪神高速道路株式会社 平成17年度事業費
神戸山手線 予算:約26億円

◆阪神高速道路株式会社 平成18年度事業費
神戸山手線 予算:約40億円

◆阪神高速道路株式会社 平成19年度事業費
神戸山手線 予算:約60億円

◆阪神高速道路株式会社 平成20年度事業費
神戸山手線 予算:約96億円

◆阪神高速道路株式会社 平成21年度事業費
神戸山手線 予算:約74億円

◆阪神高速道路株式会社 平成22年度事業費
神戸山手線 予算:約49億円



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