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 郵便局にたどり着き、役所からの手紙を受け取った。
 記されていた11桁の数字が、俺の事らしい。
 こいつをいくつか入れ替えれば、10の11乗分の1の確率であの娘達のうちの誰か一人になることが出来る。
 などと下らないことを考えながら、家路に就く途中、おもちゃ屋さんの店先にワゴンセールをやっているのを見つけた。
 一人暮らしが長いおかげで、主婦層の考え方が身に染みてしまっている。
 ワゴンセールだとかタイムサービスだとかに弱いのだ。
 一も二もなくチャリンコを停めて、早速品定めに。
 (ちなみに、この時点で「俺、別におもちゃ屋なんかに用事ないやん!!」というのは気付いているのだが、「安売り」という言葉にはとりあえず抗えないのだ。)
 益体も無いものばかりが並んでいた。
 50から、最大90バーセントの割引。叩き売りもいいところだ。  その山の中に、やはり山積みになって、小さなラジコンの「カバ」のおもちゃがあった。
 ピンク色でなかなか愛嬌のある顔をしている。
 定価は1800円だが、90パーセント引かれて180円。
 それでも売れ残って山積みになってる。
 可哀想な気がした。
 元々は1800円の価値を持って世に送り出されたはずなのに、時間の経過に伴い価値は下がり続け、ついには仕入値よりも安いんじゃないか? って値段をつけられて小雨振りしきる店先のワゴンに山積みにされて放り出されている。
 モノは自らを輝かせる為に努力しようったって、出来るものじゃない。
 時流に乗っているときには勝手に輝くが、そこから少し外れると途端にくすんでしまう。
 俺は、しばらくそのピンクのカバの入った、透明なプラスチックケースを手に取って眺めていた。
 ピンクのカバの笑顔。滑らかなプラスチックのボディー。コントローラーにはハートのマーク。薄く誇りの付いたケース。
 煙草が切れている事を思い出した。
 ピンクのカバをまた、その山に戻し、チャリンコにまたがり、牛乳と煙草を近所のスーパーで買って、にわかに強くなった雨足を気にしつつ、俺は家に帰った。

おわり。






   
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