超1話『スパークな始まり』
超1話
『スパークな始まり』


チュンチュンチュンチュンチュラチュチュチュ!

「………なんだそれ?」

どこかで聞いたことがあるような、ネタとしか思えない鳥の囀りに起こされた。
なんだか、ムショーに気分が悪い。

(ネタなら、もっとキレが無くてはな…)

心の中で毒づき、のろのろと布団から這い出る。
気温は低くもなく高くもない。
まさに超快適!ってな感じの気温だ。
今の季節がいつかなんてのはタブーだな・・・
このテの話は小さいことを気にしないのがマナーである。

「それ、いつものようにちょいと叫ぶか…」

窓の前まで行き、ガラガラと開く。

俺はすぅ〜〜と息を吸い、肺をパンパンに膨らませる。
そして解放・・・

「あんたらなんばしよっとかねぇーーーー!!!!」

寝た子も起きるような爽やかな声がどこまでも響く。
すると外からはいつものように感謝の言葉。

『うるせぇ〜〜!』

『いつもいつもなに考えてんだーー!?』

『今日は仕事休みなんだっ! ゆっくり寝かせろーー!!』

(うんうん、今日も世界は平和だ)

ひとり満足した俺は適当に着替えると部屋を出た。

ダンダンダンっ!

豪快な音を立てながら階段を下りる。
主人公の部屋は二階にあると相場は決まっているものだ。
だが、なぜ二階にあるのかは不明だ。

「なぁ、モナよ」

「なーに?」

「どうして二階なんだ?」

台所に着いた俺は、そこにいる妹にさっきの疑問を投げかける。
すると妹は少しも考える素振りを見せず、キッパリと答えた。

「主人公だからだよ」

「ふーん、そうか」

・・・だそうだ。
納得したが意味は不明のままだったりする。

「飯だ飯っ〜」

「はい、できてるよ」

そう言って妹がテーブルに座った俺の前にドンドンッと豪快に朝食を置く。
俺はそれを口に持っていくと瞬間で食べ終えた。

「…ふぅ、食った食った」

「お兄ちゃん、早いのはいいんだけど…」

「ん? どうしたマイシスター?」

「お皿とコップも一緒に食べるのはやめてよっ! 数が減っちゃうでしょ?」

「それは気づかなかった、スマン」

俺としたことが、つい勢いで食べてしまったらしい。
いやはや、妹の不機嫌そうな顔がちょっと面白い。
皿とコップを食ったぐらいで大袈裟だよな。

「さて、もうすぐ家を出ないと遅刻するぞ?」

「え? そんなはずは…」

パッと首を振り、時計を見るモナ。
するとその顔が見る見るうちに青ざめていく。

「ど、どうしてぇー!? さっき見たときは全然、余裕あったのに…」

「それはお約束だからだ」

「………」

「このテの話は、主人公は走って登校するものだと決まっておろーが!」

そんなお約束な状況にハッと気づく妹。
すると事は早い・・・バタバタと暴れるように用意をし始める。

………

少しタイムスリップして登校中。
なぜか走る俺達兄妹。

「はぁ……はぁ……」

「………おりゃぁ〜〜」

「……ふぅ……ふぅ…」

息が遠い昔に切れている妹。
これぽっちも息切れしない俺様。
さすが格が違うということか・・・

「ちょ、ちょっと待って……お兄ちゃん…」

「わかったわかった」

そう言って走ることから歩くことに切り替える。
ここまで来たら遅刻は免れるだろう。
これもなぜかお約束。
このテの主人公はなぜだかどうしても遅刻をしないのだ・・・まれにするけど。

「ふぅ……はぁ……ん…ふぅ」

「妹よ」

「ふぅ……はぁ……なに?」

「息を整えるのはかまわんが、そのイッた後のようなのはなんとかならんか?」

「なにバカなこと言うのよっ!」

そう叫ぶと、また艶っぽい息を吐く。
なんだか聞いているだけで変な気分になってくる。

「なぁ、妹よ」

「今度はなに?」

「俺様の妹でよかったな」

バンザーイだマイシスター!
お前が妹ではなく、義妹だったら俺は襲っていたに違いない。
隣でそんな声を出されたら理性の壁が崩れてしまう。
いや、崩れている! 反語。

「お兄ちゃん、朝から元気だね」

「おうっ! 息子も元気だぜぃっ」

「はぁ…、恥ずかしいなぁ」

「Noっ! なにを言うか同士よっ」

俺とお前は血で結ばれた関係。
いわば同士っ! 最強の絆っ!!
これ以上の繋がりはあるだろうか? いや、無いっ! 反語〜〜〜!!

「んで、どうして三階はないんだ?」

「え? さんかいって?」

「部屋の話だ」

ふと思い出した疑問。
主人公の部屋は二階が多いが、どうして三階じゃダメなんだろうか?
二階にこだわる理由はなんだ?

「三階も作ると設定が増えるからじゃない?」

「そりゃそうか、ただでさえ面倒なのに余計なものが増えると大変だわな」

「そゆこと」

さすがはマイシスター!
魂の兄妹っ!
それこそ俺が望んでいた答えだー!!

「あ、学校に着いたよ」

「なに? イベントとかは無いのか?」

「初日からあるわけないでしょ…」

「ガビーン!」

開いた口が塞がらないとはこのことかぁー!!
くそっ、なんか面白くないぜ。

俺は釈然としないながらも校門をくぐった。






トップへ戻る 超2話へ