超5話『妹と一緒』
超5話
『妹と一緒』


ガツガツガツガツ・・・ごっくん。

「ふぅ〜〜、ごっとうさん」

「………」

飯を食い終わった俺を、妹が驚愕の目で俺を見つめる。
俺は爪楊枝で歯の隙間を掃除しながら尋ねた。

「どうした?」

「ううん。なんでもないんだけど…」

「……だけど?」

「2秒で食べちゃうなんて早いね」

なんだ、そのことか。
俺は時間をかけるのが大っ嫌いな性格だからな。
なんでも早く済まそうとしていしまう・・・アレ以外は・・・

「お料理の味わかっている?」

「おうっ! モナの料理はいつも美味しいぞ」

「うーん、それはそれで嬉しいだけど…」

「心配するな、五月の料理よりは100000000万倍ましだ」

あいつの料理は食えたもんじゃない。
一度食ったことがあるのだが、一週間入院させられた・・・
あれはあれで凄い才能だと思う・・・いろんな意味で。

「あはは、五月さんが聞いたら怒るだろうねぇ」

「怒るどころか、巨大ハリセンでメッタ切りにされてしまうぞ」

「そのときは毎日お墓参りに行くね?」

「おおー!? さすがはマイシスター!」

………

そのころ五月さんは・・・

「くしゅんっ! 誰かが私の噂をしている……はっ!? さてはマサトか?」

五月さんの勘はたいそう鋭いそうです・・・

………

「ってな具合で五月がくしゃみをしたそうだ」

「衛生の実況中継みたいで楽しいねぇ」

「世の中、便利になったよな〜」

「うん」

そんな会話でこの場は撤収。

………

「暇だな」

テレビをボーっと見ていても面白くない。
モナはモナで風呂に入ったまま出てこない。
ひとりだと本当につまらんな。

「昼間の恩もあるし、モナの背中でも流してやるか」

昼間のことを思いだした俺は、テレビの電源を切ってそそくさと風呂場に向かう。

パタパタパタ・・・

スリッパの情けない音を立てながら廊下を歩く。
脱衣所の前まで来ると、ガラガラと豪快にドアをスライドさせた。

『お兄ちゃん? どうしたの?』

風呂の中からモナの声。
俺はそれにこう答えてやった。

「兄ちゃんも入るぞ?」

『え? ええーー!?

モナの驚きの声もなんのその。
俺はそんなことは関係なくズカズカと中に入っていった。

ガチャッ・・・

「きゃぁっ」

中に入ると湯船に浸かるモナの姿。
胸元を手で隠して恥ずかしそうな顔をこちらに向ける。

「お、おおおおお兄ちゃん?」

「なに恥ずかしがってんだよ? 兄妹だろ?」

「で、ででででも……」

そう言って俺に視線をチラチラと向けてくる。
それも特に下の方に・・・

(あ、俺ってば丸出しだった…)

「せ、せめて下は隠してよぉ…」

「わはは、小さいことは気にするな! 下は大きいがな、わはは!」

「ひぃーん」

我ながら切れ味抜群なオヤジギャグをかます。
モナは顔を真っ赤にしているが、恥ずかしいんじゃなくて上せているのではないだろうか?

「モナ、さっさとあがれ」

バンバンと腰掛け椅子もどきを叩く。

「え? ど、どうして?」

「背中を流してやる」

「急にどうしちゃったの?」

「つべこべ言わず、あがってこいっ〜」

俺は小柄なモナの体を無理矢理湯船から引き上げ、腰掛け椅子もどきに座らす。
ちなみに『腰掛け椅子もどき』とは、よく風呂場で見るあの小さな椅子のことである。
正式名称は知らないから、俺はそう呼んでいるのだ。

「べ、別にいいよぉ〜」

「兄ちゃんの好意だ、大人しく受け取っとけ」

ゴシゴシとタオルに石鹸を擦り泡立てる。
そして読者様ご待望の背中流しの開始であ〜〜る!
ふっふっふ、ただの背中流しで終わるといいがな・・・

ごしごし・・・

「気持ちいいか?」

「うん…」

モナの狭い背中にタオルをゆっくり走らす。

(モナの奴、小柄なくせにスタイルはいいよな…)

「………」

「お、お兄ちゃん?」

「………」

「あ、あのね…」

「あ? なんだ?」

ふと我に返る。
やばいやばい、妹の体に見惚れてしまうとは・・・

「せ、背中に……あたってるよ…」

「兄ちゃんだって男なんだよ」

「…うん」

「だからな、揉ませてくれ」

「…はい?」

モナの返事も聞かず、俺は後ろから胸を鷲掴みにした。

もにゅっ☆

「あんっ」

すると妹が小さな声で可愛く鳴く。
俺はなんだか楽しくて何度も何度も揉みまくった。

「モナの胸って大きいな」

「お、お兄ちゃん……ぅん……そんな…あ……」

「何カップあるんだ?」

「エスカップぐらいかな?」

こんな状態でも冷たいギャグを言う妹。
俺は胸から手を離し、再び背中を流しはじめた。

「寒いな」

「うん。その証拠に湯船にシロクマが泳いでいるよ?」

「ほんとだ」

モナの言うとおり、湯船にはシロクマがぷか〜と浮いていた。
たぶん幻覚であると思われるが、その姿は妙に生々しい。
息継ぎをしながらクロールで泳ぐ姿は微笑ましいを通り越し、爽やかすぎて不気味だ。

「んで何カップだ?」

「うーんとね、ワールドカップぐらい」

「それは凄いな」

「優勝できたらいいね」

そう言ってクスクスと笑うモナ。
俺もつられて笑った。
風呂場になんとなく響く俺達の笑い声。

そして・・・

今度は湯船にゴマアザラシが現れたのは言うまでもない・・・






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