超6話『妹よ、鳥になれ!』
超6話
『妹よ、鳥になれ!』
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チュンチュンチュンチュンチュラチュチュチュチュチュチュチュチュ・・・(以下、エンドレス)
「だぁーー!! うるさいわーー!!!!」
俺は叫びながらベッドから飛び起きる。
・・・というか、起こされた。
「…ったく」
毎度ながら、ネタとしか思えない鳥の囀りに目を覚ます。
半分呆れながらも、実は期待していたりする。
これから毎日、朝はどんなネタが飛び出すのかと思うと夜もグッスリ眠りすぎて寝過ごしそうだ。
「ふわぁ〜〜」
豪快に欠伸をすると、いつものように素早く着替えて一階に下りる。
ダンダンダンダンッ!
細かいことは短縮することにして、台所で朝食を頬張る俺。
「もぐもぐ……ごっくん」
「………」
いつもながら驚愕の顔で見つめるモナ。
それを見るたびに何を驚いているのかといついつ尋ねてしまう。
「どうした?」
「ううん、なんでもないんだけど……いっつも早いなぁって」
「そんなことはない。普通だ」
「普通の“人”じゃないけどね」
おいおい、酷い言われようだな。
するってーとなんだ? 俺は珍獣か?
「…っと、そんなこんなで遅刻しそうだぞ?」
「ええー!? だってまだ7時……」
そこまで言って止まるモナ。
壁に掛かっている時計を見つめたまま硬直してしまった。
今のモナなら押し倒しても固まったままだろう・・・
「そ、そんなことって…」
「現実を見ろっ! 今は8時15分だっ!」
「…ひ、酷いよ……こんな現実ヒドイわ〜っ!」
ちょっとばかし演技が入っているモナ。
床にペタンと崩れ落ち、指でのの字を書く。
こんな姿を見ていると、昔のドラマを思い出してしまうのだが、今はそれどころじゃない。
マジで時間がヤバイのだったりする。
「このままだと遅刻するぞ?」
「嫌だわ、こんな生活……私は自由に生きたいのよっ〜〜よよよ」
「………」
妹よ、お前は今のままでも立派に自由ではないか。
なのに・・・これ以上何を望むというのだ? 否、望みなどないはずっ!
今のお前は誰よりも幸せなのだ! 俺という立派な世界一素晴らしい兄がいるのだから・・・
「私は小鳥……籠の中に閉じこめられた可愛い雛鳥」
「………」
「羽ばたくことの許されない哀れな天使」
こうなっては誰もモナを止めることはできない。
それは、いかに素晴らしい、ナイスでグレートな兄である俺でさえ不可能。
だから俺は引っ張っていく・・・ただひたすらモナを引っ張っていくだけである。
ズルズルズル・・・
「はぁ……はぁ……」
学校への道を荒い息を吐きながら走り抜ける。
普段はこんな事はないのだが、モナを引っ張っていると結構疲れる。
俺としては珍しく息が切れそうだ。
「ああ……私の羽を返して…大空を羽ばたくために必要な羽を…」
モナはモナで自分の世界に浸っている様子。
これはこれで可愛いのだが、今はマジで時間がない。
周りに生徒の姿はなく、いるのは俺達兄妹だけ。
時間が時間だけに普通の生徒はみんな教室でダベっている頃だろう。
「ふぅ……モナ〜〜、兄ちゃんは疲れたぞ〜」
俺らしくない情けない言葉。
だが、そんなことを言っている場合ではない!
時間がマジ本気でヤバイのだぁ!
なんとしてでもモナの遅刻は避けねばならないっ!
でないと皆勤を目指して頑張っている妹が落ち込んでしまう。
兄としてはそれだけは避けねば・・・
「大空を羽ばたけるだけの羽がほしい〜」
・・・ぷちんっ
俺の頭の中で、すこ〜〜しばかり線が切れた。
どこの線かは知らないが、血管でないのは確かだ。
「ほほぅ……そんなに空が飛びたいか?」
「飛びたい、どこまでも遠くに…」
「じゃぁ…………飛ばしてやろうっ!!」
モナの首根っこを掴み、手にありったけの力を込める。
そして標準を合わせる。
ピピピ・・・ヒョウジュン・・・モナノキョウシツ・・・
ガガガ・・・カチャ・・・セットカンリョウ・・・ジュンビ・・・・・・OK!
俺の頭の古くさいコンピュータがGO!サインをだした。
「行って来いっ! お前のあるべき場所へ〜〜!!」
バビューーーーーーーーン!!
そんな俺の叫びと変な効果音と共にモナが青々と光る空に放たれる。
その姿はすぐに閃光となり、青空と同化したが・・・
『私は飛んでいる〜〜空を飛んでいるのよ〜〜』
・・・などと、そんな歓喜に満ちた声だけが地上に残る俺に聞こえた。
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