超7話『五月より妹』
超7話
『五月より妹』


キーンコーン・・・(以下略)

面倒くさいチャイムはカットするにして、俺もなんとか遅刻せずに済んだ。
モナは俺より早く教室に着いているに違いない。
五体満足の保証は無いが、遅刻は免れただろう。

「ふぃ〜〜」

「今日も朝から元気ねぇ〜」

一息吐く俺に隣の胸なし暴力女が声をかけてきた。
俺はそんな女に適当に手を振って無視をする。

「すっごい失礼なヤツね…」

俺の心を知ってか知らずか、見抜いたような言葉を返してくる。
そんな五月に少しばかり恐怖を憶えずにはいられなかった。

………

いつものように退屈な授業が始まる。
教師は教卓に立って、白いチョークで黒板に意味不明な羅列を書き殴っていく。
なんとなく見ていてもサッパリわからん。
よーく見ていてもチンプンカンプン。
真剣に見ていても眠気を催してくるだけだった。

「ふわぁ〜」

始業開始から、たったの5分で暇になった。
欠伸がでてきて俺の眠気を促す。

(寝ちゃダメだ……寝ちゃダメだ……)

心の中で某ダメダメな主人公のような台詞を呟く。
俺はあんな軟弱な奴とはわけが違う!
シロなんて恐くないっ!! ポチが好きなんだっ!!!!

(それにしてもサキニカエルは衝撃だったよなぁ…)

ありゃぁ〜、マジで驚いた。
初めの敵が『第3のシロ』だなんてどーなってんだ?ってな感じだぜ。
ポチはどうした? なんならクロでもいいぞ〜って俺は思ったぞ。
いや、それより第16777216のシロは凄かったな。
『ダニエル』って、どう考えても外人だぜ? あれは・・・何かの教科書で見たことあるぞ?

思い立ったが吉日。
俺はガサゴソと机をひっくり返し、出てきた教科書を適当に見てみる。

「ちょっと、何をやってるのよ?」

俺の行動を不審に思ったのか、五月が声をかけてくる。

「新生児オカンゲリラの最後のシロを探しているんだ」

それだけ言って俺は作業に戻る。
気になりだしたら止まらない・・・見つけたくなるのが人間の性。
俺は欲望に忠実だった。

パラパラパラパラ・・・

手を振って踊りたくなるような音を響かせながら教科書をめくる。
なにを躍起になっているのか、食い入るように教科書と睨めっこをする俺。

(確かに見たことあるんだよなぁ〜)

自分の勘を信じて俺は突き進む。
どこにあるのかわからない答えを求めるために。

俺は教科書を見た・・・見まくった・・・限りなく・・・

それは時間をわすれるくらいに・・・

………

「お、お兄ちゃん…」

弱々しい声をかけられて俺は現実に戻される。
いつの間にか昼休みになっていたらしい。
体中、包帯と絆創膏だらけのモナが俺の目の前にいた。

「モナ? その姿はどうした?」

「お兄ちゃんのせいだよ」

「俺? 俺はモナを遅刻させないように学校に送り届けただけだぞ?」

「そ、そのせいだよ…」

今にも倒れてしまいそうにフラフラとふらつくモナ。
心配になった俺は隣の椅子を無理矢理引っ張って妹を座らせる。
その椅子に座っていた人物も忘れて・・・

・・・ガタンッ!

「…きゃわっ!!」


声が聞こえた方を見てみると、そこには床に尻餅をつく五月の姿。
俺はそんな五月を不思議に思い、尋ねてみた。

「なにやってんだ?」

「そ、それは私の台詞よっ! なにすんのよ〜」

「なにって?」

「私の椅子を勝手に取らないでよっ」

俺は自分の手に視線を持っていくと、そこにはしっかりと握られた五月の椅子。
そこに座っているモナ。

「それは済まない。お前よりモナの方が数倍大切だったから気づかなかった」

「あ、あんたねぇ〜(怒」

「お、お兄ちゃん……それは言いすぎだよ」

「いや、事実だ」

俺は胸を張って、堂々と答えた。
それが法律と言わんばかりに・・・

「あっそ!」

五月は呆れたように言い放つと、ドタバタと大股を開きながら教室を出ていった。

「五月さん、怒っちゃったよ?」

後ろ姿を見送るモナが心配そうに言う。
そんなモナに俺はヒラヒラと手を振って答えた。

「大丈夫、大丈夫! あいつはいつもあーだから」

「ふぅ……五月さんも大変だね」

モナが呆れたようにため息を吐く。
どうしてそんな顔をするんだマイシスター!?
お前は俺の同士ではないのかぁーー!!

「俺は悪くないぞ?」

「………」

「信じてくれ、マイシスター!!」

「………」

そんな哀れみを帯びた目で見ないでくれー!!
本当なんだっ! 俺は無実だぁーーーーー!!!!

「ふぅ、仕方ないなぁ」

「おお!? さすがは…」

「でも、お兄ちゃんが悪いよ」

「Noォォォォォォォォォォォォォォォーーーー!!!!」

そりゃないぜ・・・セニョリ〜〜タ〜〜






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