超11話『ドキドキ&お約束』
超11話
『ドキドキ&お約束』


今回は都合により、毎朝恒例の鳥の囀りはお休みします・・・


「ふわぁぁ〜〜」

読者様に断りを入れたので、これで気兼ねなく朝を迎えることができる。
そんなことを気にするほど俺の気は小さくはないのだが、礼儀はどこまでも必要だ。
現実は厳しいからなぁ〜〜。

「う……うん…」

「…?? なんだ?」

女性の声が聞こえたような気がする。
確か、ベッドには俺しか寝てなかったような・・・?

「…!? まさか忍者?」

だとしたらマズイ・・・俺は殺されてしまう。
時代劇みたいに美人でナイスバディーな人なら殺されてもいいかな〜♪
なんて恐いことを考えてみたが、やはりそれはそれで嫌だ!

「ぁ……ぅ…おにいちゃん……」

「その声は……モナ?」

毛布をめくってみるとモナの姿が現れた。
忍者の正体はモナだったのだ・・・モナは俺の妹に扮して我が家に潜り込んでいたいに違いない!

「…なわけないよな」

自分でも馬鹿らしくなってきたので考えるのはヤメ。
それはそうと、どうしてモナは俺と一緒に寝ているんだ?
それにそれに、俺はどうしてモナを抱きしめているんだ?

・・・わけわからんちん。

「まぁ、いいや。気持ちいいから抱きしめておこう」

短絡的な考えだとはわかっているのだが、俺はどこまでも欲望に忠実だった。

(女の子って柔らかいなぁ〜)

ふと、そんな考えが頭をよぎる。
モナを抱きしめていると言葉では言い表せないが、ギュッとしたくなる。

・・・ギュッ☆

思い立ったが吉日。
俺は即座にモナを抱きしめる手に力を込めた。
なんだか、このまま離したくないような気分になってくる。

(それにしても兄妹でこんなことしていいのか?)

俺らしくない疑問が浮かび上がった。
これ以上のことを沢山してきた俺が考えることではないな。

「お、お兄ちゃん……おはよ…う」

「あ? 起きたか」

「…う、うん」

俺の腕の中で今にも火山を爆発させてしまいそうな顔をするモナ。
その上、上目使いで見上げる姿は可愛いの一言に尽きるっ。

「熱でもあるのか? 顔が真っ赤だぞ?」

「そ、そんなことないよ」

それだけ言って俺の胸に顔を埋めるモナ。
俺はそんなモナを心配に思い、無理矢理こっちに顔を向けさせる。

「…あっ」

「ジッとしてろ」

・・・ピタッ。

自分の額をモナの額に重ねる。
古典的なやり方だが、確実性はあると俺は信じている。

「……どきどき☆」

「……うーん」

「…どきどき☆」

熱はないようだが、さっきから“どきどき”と変な効果音がうるさい。
自然になるのは構わないのだが、人為的なものはちっとばかし気になる・・・

「モナ、落ち着け」

「あ、うん……どきどき☆」

「………」

聞いちゃいない。
言ったそばからまた言ってるし・・・はぁ。

「…あっ、そうだよな」

やっとこさ気づいたぞ!
ズバリっ、モナがドキドキする理由がわかったのだぁ。
なーんてことはない・・・これだけ俺達の顔が近づいていれば当然だな。

俺とモナの離れている距離・・・約5p。

唇と唇はある意味ヤバイくらい近づいている。
モナがちょっとでも顔を上げると触れてしまいそうなぐらいの距離にあるのだ。

「悪い悪い、もう離れるよ」

俺はさっとモナから離れ、もぞもぞと毛布から這い出る。
そして気づいた、ここは俺の部屋ではなくモナの部屋だと・・・

(ああ〜〜、思い出した! 昨日はアレでああ〜〜)

完全記憶復活俺様。
これで恐いものなどなにもない、遅刻寸前の時間以外は・・・

「モナ、急がないと遅刻するぞ?」

カーテンを開け、朝日を浴びながら爽やかに言い放つ。
こういう現実はさらっと言うのが、聞いた方にも耳にいいのだ。

「あ、本当だ…」

「さて、急いで行くぞ?」

「うん!」

そんなこんなで急いで家を出た。

………

「はぁ……はぁ……」

そしてお約束のように走って投降する・・・じゃなかった、登校する俺達。
わざとらしい間違いを呟きながらも走る俺には余裕がある証拠。
だが、対するモナは・・・

「ふぅ……ふぅ……おにいちゃん…待ってぇ」

案の定、モナが待ったをかけてきた。
肩で息をしながら膝に手を当てて息を整えるモナ。
俺は足を止めてモナにズバッと言い放つ。

「遅刻するぞ?」

「わ、わかっているけど……はぁ…はぁ…」

「兄ちゃんが背負ってやろうか?」

「そ、それはいい。恥ずかしいから…」

恥ずかしがっている場合なのだろうか?
遅刻という留年の次に恐い恐い現実が目の前に迫っているというのに悠長な・・・

「それはいいとして、お約束はないのか?」

「はぁ……え? お約束?」

「そうだ! この手の話では登校する女の子はパンチラするだろう?」

「そ、そんなのしないよぉ〜」

「でもさぁ、ゲームとかには限りなく10割に近い確率であるぞ?」

「そ、それでも私は恥ずかしいからやだぁ」

うむむ、強情な妹だ。
この兄様の熱意がわかっていないと見える・・・俺はお約束が見たいのだ!
そう、全てはお約束のために世界はまわっている!
『パンチラ』こそ青い春と書いて『青春』と呼ぶものになくてはならないものなんだーー!!

「キラーーン☆」

閃いた・・・あらら、閃いちゃった〜♪

してくれないのなら、俺がその状況を作るまでのこと。
ふっ、我ながら素晴らしい考えだ・・・はーっはっはっは!!

「お、お兄ちゃん?」

「ふっふっふ」

俺は不敵な笑みを浮かべながら、どこからともなく団扇を取り出した。
そしてそれを大きく振りかぶり力の限りなぎ払った。

「さぁ! 舞え、純白のシンフォニー!!」

俺が叫ぶと豪快なまでの風がこの場に吹いた。

「きゃぁっ!?」

見事なまでにモナのスカートが風になびき、外界にその白い奇跡を降らせた!
モナは必死にスカートを押さえるが、前が隠れるだけで後ろから見るとバッチリ丸見え。
ここがポイント、お約束というのは前を隠すだけで後ろは隠さないのだ。

「ふむふむ、今日は清純派のだな」

「ふぇぇ〜〜ん」

モナは泣きべそをかきながらその場にへたり込んでしまった。

「ありゃ、少しやりすぎてしまったか…」

「ぐすっ、見られちゃったよ〜〜もうお嫁にいけない〜〜」

「おいおい、いつの時代だよ……まったく」

俺が呆れたように言うと、恨めしそうな目で睨んできた。
そんな妹に一瞬ひるみながらも俺はグッと見返す。

「お兄ちゃん…」

「な、なんだ?」

「責任取ってよぉ〜」

「せ、責任?」

責任ってなんだよ? たかが下着を見られたぐらいでどんな責任をとるんだ?
俺に慰謝料でも払えというのか?

「私、お嫁にいけなくなっちゃった…」

「………」

「だから私と結婚して」

「は!? おいおい、それは無理だ。俺達は兄妹だぞ?」

「じゃぁ、どうしてくれるの〜?」

「いや、その前にモナの下着を見たのは俺だけだが…」

「………へっ!?」

モナが変な声をあげたかと思うと、辺りをキョロキョロと見渡した。
だが、辺りには人っ子ひとりなく、ただ沈黙が充満していたにすぎなかった。

「まぁ、そう言うことだ。俺はすでにモナの裸を見ているのだが……その俺になにをしろと?」

「………ぽっ」

(あ、モナの顔に火がついた)

モナの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
なんだかヤバイ雰囲気のような気がするのは俺だけだろうか?

「きゃぁぁ〜〜☆ 恥ずかしい〜〜〜〜♪」

叫んだかと思うと、モナは手で顔を覆って走っていってしまった。
そしてポツンとひとり残された俺。

「ふぅ、これで大丈夫だな」

モナが遅刻を免れるのを心の中でひっそりと確信した・・・






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