超15話『スーパーならぬハイパー』
超15話
『スーパーならぬハイパー』


今日一日のノルマをこなした俺は帰路につくことにした。
すると、途中で前方に妹を発見!

「モナ〜〜」

タッタッと駆け寄りながら声をかける。

「ん? あ、お兄ちゃんっ」

気がついたモナが後ろを振り返ってこっちに軽く手を振る。
俺はすぐさま隣に着くと、どちらともなくゆっくりと歩きだした。

「ふぅ、それにしても今日は大変だった」

「そうなの?」

「ああ、いろんな事があったぞ?」

授業中に寝てたら変な夢を2つも見るわ・・・。
最近見ないと思っていたら、突然、正二のヤツが現れるわ・・・。
そしていつものように俺様の大事な妹を口説くわ・・・。
いきなり可愛い後輩ができるわ・・・。

なんだが、今日は絵に描いたような一日だったな。

「それはそうと、キヨってなかなか可愛いな」

「あれ? お兄ちゃんって清子ちゃんみたいな子が好みなの?」

「別にそう言うわけじゃないが、誰が見ても中の上は軽くいっているだろう」

「ふふ、よかったね。そんな可愛い子に好かれて」

うーん、本来なら嬉しいことなのだろうが、なにぶん実感がない。
俺ってばモテるタイプじゃないからなぁ・・・。

「そう言えば、お兄ちゃんって意外と人気あるんだよ?」

「“意外”って言うのが引っかかるけど、どうしてだ?」

「ほら、お兄ちゃんって勉強はともかく、スポーツは万能でしょう? だからなの」

「万能ってわけじゃないぞ? さすがに俺様でもマリアナ海溝を潜りきることはできない」

「それできたら人間じゃなくて超人だよ…」

妹が呆れたような、嬉しいような顔で言う。
こういうときのモナは兄である俺でもうまく読みとれないことがある。

「太平洋を泳いで渡ることはできるけどな」

「…テレビにでれるよ」

「面倒だからヤダ」

「残念。そうすれば、たくさんモテるのに…」

「モナは俺にモテてほしいのか?」

「え? その……どちらかというと…嫌……かな?」

「どうしてだ?」

「だって、私が側に居づらいから…」

我が妹ながら嬉しいことを言ってくれる。
俺様は今! モーレツに感動しているぞーーーーーー!!

「…と、話は変わるが、モナはよかったのか?」

「なにが?」

「キヨに料理を教えるの」

俺が勝手に言いだして決めてしまったことなのだが、やはり気にしてしまう。
妹の気持ちを考えずに話を進めてしまったからな。

「うん……別にいいけど…」

「歯切れが悪いな。やっぱりダメか?」

「私はいいんだけど、“ハイパーモナちゃん”がなんて言うか…」

「“ハイパーモナちゃん”??」

聞き慣れぬ名前に俺は首を傾げる。
だが、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、モナはガサゴソと鞄を探ると中からなにかを取りだした。
そしてそれを手に付ける・・・、どうやら人形らしい。

「そ、それは……“聖天使・エンジェルモナピー♪”!?

俺は自分の目を疑った。
妹が手に付けた人形は、夢でみた天使とまったく同じだったのだ。
主に服装と翼あたりが・・・。

「え? これは“ハイパーモナちゃん”だよ?」

「そ、そうか…。どうやら俺の勘違いのようだ」

そう言って俺は自分自身を納得させた。

「んで、その人(?)はなんて言ってるんだ?」

「うん、ちょっと待ってね」

モナは人形に聞き始めた。
その姿はお茶目を通り越して、アブナイ人だったのは言うまでもない・・・。

「ねぇ、私はいいと思うんだけど、どう思う?」

『別にいいんじゃないかしら?』

「そうだよね?」

『お友達を助けるのはいいことだわ』

「うんっ」

「………」

俺はただ、その光景を無言で眺めていた。
器用に声色を変えながら一人二役こなす妹はスゴイを遥かに越え、いっちゃった人にも見えた。

「お兄ちゃん」

「…あ?」

「ハイパーモナちゃんもいいって」

「そ、それはよかったな」

今の俺にはそれだけ言うのが精一杯だった。
なぜかは理由は言わずもしれたことだが・・・。

『それでは帰りましょうか?』

「そうだね」

「…あ、ああ」

そして俺達は再び帰路についた。
俺とモナとハイパーモナちゃんという、いつもと違うメンツで。

「ボソボソ…」

「ヒソヒソ…」

そんな俺達を周りが変な目で見るのは当然のことだった。

「はぁ…、今日は厄日だ」

そして俺は頭を抱えるのだった・・・。






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