超19話『豹変』
超19話
『豹変』
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「ふんふふんふーん♪」
「なんだかご機嫌だね、お兄ちゃん」
次の日の登校中。
鼻歌を歌いながら歩く俺にモナが嬉しそうに声をかけてきた。
「ま、まぁな」
「なにかいいことあったの?」
「う、うん……その……あれだな」
「うん?」
「マンモスラッピー♪ってな感じだ」
「よくわからないよ」
いや、まさか五月と恋人同士になったって言えないしなぁ。
今までの俺達を見てきたモナにはショックが大きすぎるだろう・・・いろんな意味で。
「…あ、五月さんだっ」
「ぐはっ!?」
な、なんちゅーお約束的な展開だ・・・先がものすごーーく心配になってきた。
「五月さーん」
妹が手を振って前を歩く五月に声をかける。
これまたお約束。
「え? モナちゃんに……ま、マサト…」
こちらに気づいた五月は俺を見るなり、ほんのりと頬を赤く染めた。
その姿がまだ可愛いのなんの。
今までの五月とは雲泥の差ってヤツだな、ありゃぁ・・・。
「五月さ〜〜〜〜〜ん」
「ご、ごめんね。私、急いでいるから…」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!
五月はそれだけ言って脱兎のごとく去っていった。
「っていうか、あれは神速だな」
「ふぇぇ…」
気持ちはわからんでもないが、そこまであらか様に逃げることは無かろう。
これじゃぁ、余計に他人に怪しまれるもんだ。
「五月さん、どうしたのかな?」
「さ、さぁ? 急いでるんじゃないのか?」
「どうして?」
「日直とか…」
「私達の学校って、日直はないよ?」
「そ、それだったらテスト前の勉強とか…」
「テストはもう終わったよ」
「……う」
言葉に詰まってしまった。
理由を知っているだけに余計に詰まってしまう。
変に言い訳みたいなのを言っていると俺まで怪しまれてしまうのではないだろうか?
「お兄ちゃんはなにか知ってるの?」
「俺? い、いや……俺は知らないぞ〜」
「ものすっごく怪しいんだけど?」
「し、失敬だな、チミッ! なにを根拠にそう言うことをいうのかね?」
「お兄ちゃんのそういう態度」
「……ぐ」
…となれば、俺も逃げるのみっ!
「さらばっ! 俺様ターボダッシュっ!!」
バビューーーーーーン!!
そして俺は面白い効果音を残しながら、疾風のごとく去っていった。
モナに余罪を追及される前に・・・
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