超26話『白い液体X【エックス】』
超26話
『白い液体X【エックス】』


昼休み。

俺がいつものように自分の席で黄昏ていると、隣でモナと五月の会話が聞こえた。
少し悪いと感じたが、「自然に聞こえたから自分は悪くない」とこじつけて会話を耳にする。

「……でね、その白い液体が先から飛び出してくるの」

「へぇ〜」

「これがまた困るのよ。ビチャってついて何となく糸を引く感じ…」

「不思議ぃ〜」

「でも、それを舌で舐め取るとおいしいの」

「………」

い、いったい何の会話をしているんだ?
めちゃくちゃヤバそうな会話に聞こえるのは気のせいか!?

「モナちゃんもどう? マサトに頼んでみたら」

「うん、聞いてみる」

いい!?
お、俺ッスか?
会話の中身からすると・・・アレだしょ? マジでやばいって。

「お兄ちゃん、お願いがあるんだけど」

「だ、だめだ! そそそそ、そんなことは許可できんっ!」

五月の席からお願い事をするモナにすかさず不可の返事をした。
なんてったって、中身がアレだから・・・いくら妹でもダメだ!

「そんなぁ〜、お兄ちゃんしか頼めないのに…」

「……うぅ。だ、だがしかし」

「お願い、お兄ちゃん」

今にも泣きそうな顔で哀願している妹。
その顔はやめてくれぇ〜〜俺はそれに弱いんだ〜〜!

「モナちゃん、私からもお願いしてあげる」

「五月さん…」

「ねぇ、マサト。モナちゃんのお願いもたまには聞いてあげて?
 マサトだって沢山お世話になってるでしょう? それにたったひとりの妹なんだから…」

「そ、それはそうだが……それでもだな…」

「優しくないマサトは嫌いだよ? 私はマサトが嫌いになりたくないからお願い」

さ、五月まで・・・。
俺はいったいどうしたらいいんだー!!

ひとり悩む俺に五月がひとつの提案を出してきた。

「じゃぁ、私も一緒にいいかな? そしたらマサトはいいよね?」

「………」

俺の中の思考がフル回転した。
可愛い妹と好きな彼女・・・ダブルのアレはさぞかし気持ちいいだろう・・・。
その快楽やまさに天国!
地獄に仏! 馬の耳に念仏! 七転八起! 喜怒哀楽!
諸行無常! 一期一会! 色即是空!  パ○チョ伊藤!

様々なことわざや四文字熟語では語れないくらいのモノであろう。
それを断るのは男のすることではない!

「わ、わかった。五月の頼みなら断るわけ………はっ!?」

俺は気づいた。
五月は俺の彼女、だったら五月は誰にアレをしたのだっ!?
俺以外の男・・・そ、それしか考えられん。

「さ、五月っ!」

大きな声で名を呼ぶと、俺は五月の肩をグッと掴んだ。

「ひゃっ!? な、なに?」

「お、お前……それ…いつの話だ?」

「え、えっと……昨日だよ」

き、昨日だとっ!?
俺と五月はとっくの恋人同士じゃないかぁー!!

「あ、あの……(ぽっ)」

ど、どうしてそこで顔を赤く染めるんだ!?
や、やはりそうなのか・・・っ!?

「マサト…、そんなに見つめられると照れちゃうよ…」

「………」

な、なーんだ。
そういうことか・・・・・って、解決はしてねーぞ!

「お、お前……俺というのがありながら…」

「マサト? な、なに急に泣き出しているの?」

「あ、あのお兄ちゃんが泣いてる…」

「も、モナちゃん……それはあんまりだよ」

「猛獣の目にも涙だね」

モナの非道な言葉も耳には入らず、俺はがっくりと項垂れた。
あまりのショックに本当にヘコんでしまった・・・。

「そ、そうだ! マサトも一緒にね?」

「…俺も?」

「うんっ、3人で食べたら楽しいよ?」

「………………食べる?」

俺は自分の耳を疑った。
食べるだと? まぁ、そう言う表現もするが、俺も一緒にとは・・・?

「あのアイスはなかなかイケるよ」

「………」

ま、まぁ・・・アイスという表現もなくはない。
だが、俺はどうやら勘違いをしているようだ・・・。

「噛んだときにね、練乳がでてくるんだって」

これはモナのセリフ。
練乳・・・? 練乳というと白いよなぁ。

「白い液体がおいしいの」

「五月さん、練乳って言った方が理解してもらえるよ?」

「だって白いんだもの」

「………」

俺の脳は真っ白になった。
今まで悩んでいたのは一体なに?

それが頭の中をグルグルと駆けめぐっていた。






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