超27話『聖獣院清子の災難』
超27話
『聖獣院清子の災難』
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いつものように昼休みは廊下を歩くのは俺の仕事。
なにやら意味不明で説明的な理由を述べてブラブラと廊下を歩く。
「お? あの廊下に髪を引きずっているのはキヨだな」
キヨは俺に気づくはずもなく、ズルズルと髪を引きずりながら歩いていた。
俺はその後ろに近づき声をかけようとしたのだが・・・
ぐきっ!
「あうっ!」
おもいっきりキヨの髪を踏んづけてしまった。
その結果、キヨの首が鈍い音を立てて反り返ったのは言うまでもない。
「すまん、髪を踏んでしまった」
「うぅ……首が痛いです」
本当に痛そうに首をさするキヨ。
それを見た俺は謝罪の意を込めて、キヨの首筋を撫でてやった。
「せ、先輩…」
「すまん。本当に悪かった」
「いえ……いいんです」
そう言って俺の方に振り返ろうとしたキヨだが・・・
ぐきぃっ!!
「あうぅっ!!」
再び鈍い音がしてキヨの首が今度はねじれた。
「す、すまんっ! また踏んでしまった」
「せ、せんぱ〜〜い!」
「本当に悪気はなかったんだ」
「うぅ……私に恨みでもあるんですかぁ?」
目尻に涙をためながら訴えてくる。
俺はそんな顔に弱かった・・・。
「そ、そんなことない!
胸が大きくて可愛い後輩を恨むなんてあるはずないだろうっ!?」
「先輩っ! 声がおおきいです〜」
「……あ」
辺りを見渡すと、キヨに言われたとおり他の生徒達が一斉に視線をこちらに向けていた。
俺はそれを一人一人睨み返す・・・すると皆怯えたように引っ込んでいった。
「いやいや、二度も踏んでしまってすまなかった」
「痛かったですけど……先輩だから許してあげます」
「そうか? ありがとよ」
「ただし、私を先輩の彼女にしてくれたらです」
そう言って屈託のない笑顔を向けた。
「おいおい、その話は前に終わっただろう? 俺にはもう彼女がいるんだ」
「それはわかっています。でも、私だってまだまだ諦めるつもりはありませんよ?」
「…んな滅茶苦茶な」
「なんと言われても構いません、私だって先輩のことがずっと前から好きだったんですから…」
「………」
まぁ、キヨの気持ちもわからなくもないが、俺の心は決まっている。
後はキヨに諦めてもらうのを待つだけか・・・。
「私は簡単に諦めませんからね?」
「………勘弁してくれ」
「先輩だって胸の大きな子が好きですよね?」
「……う。ま、まぁ……嫌いではない」
「小さいよりは大きな方が好きですよね?」
「そ、そんなことは……ちょっとだけあるかも」
俺は正直に言った。
そんなことは言わなくてもいいのにバカ正直だった。
「ふふふっ、私にもまだまだ可能性がありそうです」
「………さらばっ!」
なにやら雲行きが怪しくなってきたので俺はその場を逃げ出そうとしたのだが・・・
ぐきぃぃぃ!!!
「!?!?!??!」
またまた鈍い音が響き、キヨの首が意味不明な方向にねじれた。
そのとき俺は気づいた・・・自分の靴にキヨの髪がくっついていることに・・・。
「…なんだ?」
俺は足の裏を見てみると、どこかで踏んだであろうガムテープが引っ付いていた。
そしてそれにキヨの髪が絡まっていたのだ。
「すまんすまん、今のは……キヨ?」
「………」
キヨから返事はなく、そこには泡を吹いて倒れている後輩の姿。
俺はその前で手を合わせ、一言。
「成仏してくれ」
それだけを言ってその場を去った。
だが、自分の教室に戻る足取りはひどく重かった。
罪悪感なのか、それとも剥がすのを忘れたキヨの髪を引っ付けたままだったからか・・・。
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