超30話『プールで水着でバトルでキャンプファイアー!(前編)』
超30話
『プールで水着でバトルでキャンプファイアー!(前編)』


俺達一行は休みの日を利用してプールに来た。
メンバーは五月、モナ、キヨ、正二と俺を含む五人。
今が夏なのかどうかは知らないが、プールに来たら泳ぐしかないだろう。

「モナちゃん達遅いな〜」

「ああ、女は時間がかかるそうだ」

俺と正二はプールサイドの一角で敷物を敷いて、海パン一張羅で黄昏ている最中。
だが、実体は半分場所取りみたいなものだ。

「……今泳いでいた子、なかなか可愛いな」

「ああ…、中の上ってところかな?」

こうやって2人で暇な時間を“人間品定め”というもので潰す。
だが、2人とも心には決めた人がいるので何の面白みもなかった。

「……だけど、モナちゃんには劣るな〜」

「ああ、五月よりも劣る」

そんなこんなで30分経過。
やっとこさモナ達が来た・・・。

「お兄ちゃ〜ん」

「おうっ、こっちだ」

俺が手を振ると、モナとキヨが駆け寄ってくる。
五月はどうやらモナの後ろに隠れているようだ。

「マサトっ、モナちゃん達の水着姿……凄いなぁ〜」

「あ、ああ……あれは確かに凄い」

モナはちょっと大胆にビキニ姿。
キヨは清楚というかなんというか、王道過ぎて怖いぐらいのスクール水着。
だが、凄いのは2人は胸が大きいということ。
走るとあまりにも揺れるので、周りの男どもの視線の的だ。

んで、五月はモナの後ろに隠れていてよくわからない・・・。

「五月、どうしたんだよ?」

俺はモナの後ろに隠れて姿を見せない五月に声をかける。
五月は顔だけひょっこりと出して、赤い顔を俺に見せた。

「五月さん、お兄ちゃんはきっと誉めてくれるよ?」

「だ、だって……恥ずかしいんだもの…」

「自信を持ってよ。五月さんはとっても似合ってるって」

「わ、私……こんなの初めて着て……似合わないよ」

なにやら五月とモナで似合う、似合わないと言い張っている様子。
どちらでもいいが、見て見ないことには俺は判断をしかねる。

「五月、俺に見せてくれよ」

「マサト……絶対笑わない?」

「ああ、約束する」

「…う、うん。マサトが言うなら…」

観念した五月はスッとモナの背中から姿を現した。
それを見た俺はおもわず心の中で叫んでしまった。

(ご、ごっつー可愛いやんけぇっ!!)

五月もモナと同じようなビキニなのだが、一点だけ違っていた。
腰にスカーフのような布を巻き付けていて、それがいい感じで似合いすぎていた。
それに五月の照れた表情とモジモジとした仕草・・・マイハートブレイクっ!!

「あ、あの……どう…かな?」

「最高ですよ、五月さんっ!」

「お兄ちゃん……興奮しすぎ…」

「先輩、私のはぁ〜?」

「あ? キヨも可愛いぞ」

「五月先輩と違って、心がこもってないような気がするんですけど…」

キヨの非難の声は右から左に流す。
俺は五月の腰に巻き付けている布を見て思った・・・これの名称はなんだったのだろうと。

「正二、五月の水着はなんて言ったっけ?」

「え、えーっと……俺は詳しくないから」

「た、確か……“クレオ”とか“パトラ”とか言ったような…」

「“キリマンジャロ”じゃなかったか?」

「いや、それは違う」

そうやって俺と正二は平常心を気づかないところで押さえようとしていた。
見事にできあがったテントを閉めようとするのだが、これがまたしっかり建ててあったのだ。

「マサトの方はどうだ?」

「もうすぐキャンプファイアーが始まる時間だ…」

「そうか、俺は飯盒炊さんをしている真っ最中だ…」

そんなことを言いながら2人して三角座りで黄昏た。
五月達に気づかれないように・・・男の生理現象が治まるまで・・・。

………

バシャバシャバシャ!

飛び散る水しぶき、照りつける日差し。
俺は何をするわけでもなく、プールサイドに座り込んでいた。
その隣には五月の姿・・・俺はそんな五月に声をかける。

「五月は泳がないのか? モナ達も楽しそうに泳いでいるぞ?」

「うん…。私……その……」

「もしかして泳げないとか?」

俺はからかい半分で言い放った。
俺が記憶するには五月は小学校の頃はあんまり泳げなかった・・・。
けど、この年齢ならすでに泳げると思っていた。

「…うん。マサトの言うとおりだよ」

「は、はは…」

ビンゴっ!
そのあまりの衝撃に俺の笑いは乾ききっていた。

「ごめんね……私、泳げないから……マサトは楽しくないよね?」

「別にそんなことはないぞ」

五月の水着姿が見れただけで俺には満足だ。
それに俺だって泳ぎが好きなわけじゃない、どちらかというと面倒くさい。

「優しいね。そうやっていつも無理してる…」

「そんなことねぇーって」

「泳ぎだけはどうしても苦手で……水は怖くないんだけど…」

「それだったら、お兄ちゃんに教えてもらえばいいよ?」

いきなり現れたモナがそんなことを言った。

「おわっ、いつのまに?」

「お兄ちゃん、五月さんに泳ぎを教えてあげてよ」

「モナちゃん…」

「まぁ、俺は五月がいいのなら教えるけど」

「はいは〜〜い! 私も教えて欲しいです先輩!」

今度はキヨの乱入・・・話はこじれるばかり。

「現役の選手を“犬かき”で負かしたお前が言うんじゃねぇー!!」

キヨに一喝。
さっき見ていたら、キヨが“犬かき”である人をあっさりと抜き去っていた。
どこかで見たことのある人だと思っていたら、世界選手権に出てた人だと。
その人はプールから上がった後、グッタリと項垂れていたのは言うまでもない・・・。

「そ、そうですけど……“くろーる”とか“ばたふらい”とか教えてください」

「なぜカタカナではなく平仮名なんだ?」

どうでもいいが、俺は小さな疑問を呟いた。
だが、その答えは出ることもなく、あっさりと流されてしまった。






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