超31話『プールで水着でバトルでキャンプファイアー!(中編)』
超31話
『プールで水着でバトルでキャンプファイアー!(中編)』


「よし、そうと決まれば…」

俺はスクッと立ち、五月の手を掴んで引っ張った。

「マ、マサト?」

「俺が泳げるようにしてやるから」

「……あ、ありがとう」

「私も教えてください〜」

「だから、お前は“犬かき”でも“猫かき”でもしとけっ!」

「せ、先輩……あんまりです」

「お兄ちゃん、“猫かき”なんてないってば…」

モナのささやかなツッコミが嬉しかった。

………

「五月、お前も入ってこい」

俺達は少し深い場所で練習することになった。
浅い場所は子供だらけで無理だったのもあるが、子供に混じって練習するのを五月が嫌がったから。

「ねぇ、深くて怖い…」

「大丈夫だ、俺が支えてやるから」

「うん……えぃっ」

バシャ〜〜ン!

可愛いかけ声をひとつ、五月が俺の方に飛び込んできた。
俺はそれを受け止める。

「よっと」

「……なんだか不思議な気分だね」

「そうか?」

「マサトの体……大きいね」

五月が俺にギュッと抱きつきながら呟く。
頬をうっすらと朱に染めながら見上げてくる五月・・・それを俺は見つめ返した。

「先輩達〜! ラブラブはダメです〜」

バシャバシャバシャ!!


そう言ってキヨが俺達の周りを犬かきで泳ぎまくる。
そんなキヨを俺は軽く手であしらった。

「キヨはそれだけ泳げるなら教えることはないよな?」

「うぅー! そんなことありますけど……ないですぅー!!」

「だったら勝負するか?」

「勝負? 私が勝ったら、私にも教えてくれますか?」

「ああ、何でも言うことを聞いてやるよ」

俺はそう言い放つと、五月を連れてプールサイドにあがった。

「ただし、俺が勝った場合は俺の言うことを聞いてもらうぞ?」

「…はい。でも『やらせろ』なんて言わないでくださいね?
 私の初めては先輩をこの手で落としたときに捧げるんですからね?」

そこまで言うキヨの手がメラメラと燃え上がった。

「よし、俺が勝ったら『やらせろ』」

「先輩……ぽっ」

・・・ぎゅぅ〜〜!

「いたたたた!」


不意に背中をつねられた。
誰かはわかっている・・・冗談で言っただけなのに・・・。

「マサト……胸が小さいとダメなの?」

「じょ、冗談で言っただけだ…」

「………ほんとう?」

「ああ、それに五月の胸は好きだぞ」

「えぇ〜? だって先輩、前に確か大きい方……ムググ」

「さっ、勝負を開始するぞ〜!」


俺はキヨの口を塞ぎながら、そそくさとこの場を去ることにした。
そんな挙動不審な俺に五月が一言。

「がんばってね」

「ああ、これが終わったらゆっくり教えてやるからな」

………

「さぁーて、用意はいいか?」

「先輩こそ、私に泳ぎを教える覚悟はできていますよね?」

なかなか強気のキヨ。
どうやら俺に勝つ気でいるようだ・・・あの実力ならそれも当然か。

「よし、勝負だ」

俺とキヨが飛び込み台に立ったときのこと。
モナと正二がこっちに駆け寄ってきた。

「お兄ちゃんと清子ちゃん…、なにやってるの?」

「見てわからんか? 勝負だよ」

「そうですっ! 先輩をかけた勝負なんです」

キヨの語弊のある言葉にモナが首を傾げる。
そりゃそうだ、俺をかけた勝負なら俺が戦うのは不自然である。

「違う、負けた方が勝った方の言うことを聞くんだ」

「へぇ〜、私も出ていい?」

「モナちゃんが出るんなら俺も…」

モナに続き正二も参加したいと申してきた。
こうなったら全員で勝負だ・・・それならルールも変更せねば・・・。

「よし、だったらこうしよう。
 上位2名は下位2名のうち1人に命令できるってルールに変更する……いいな?」

「わかった、1位は無理だけど2位なら俺にも可能性が…」

「私はどっちでもいいよ。何となく面白そうだから参加しただけだもん」

「望むところです! でも、私が勝ったら先輩は2位でも言うことを聞いてくださいよ?」

「わかった。それは最初の約束だからな」

そして4人が飛び込み台に並ぶ。
皆、それぞれの泳ぎ方があるようで構えが違うのが見てわかる。

「(くそっ、正二のヤツ……なかなか泳ぎが早いんだよな、俺も全力でいかないと)」

「(あのマサトに俺はどれだけ追いつける? だが、勝ったらモナちゃんと……ぐふふ☆)」

「(私が勝って、先輩をギャフンと言わせるんですっ!
 そして五月先輩より私の方が良いと思い知らせてあげます)」

「(私は絶対勝てないけど、面白そうだから参加……は、いいんだけど。
 お兄ちゃんが勝ったら私になにか言ってくれるのかな? ドキドキワクワク♪)」


そんな思惑が各自にあったかなかったかは別として、勝負はまもなく始まろうとしていた。
・・・が、合図をする人がいないことに俺は気づいた。

「お〜い、五月! 適当に合図を頼む」

『ちょっと待って、そっちに行くから』

そして俺達は五月の到着を待った・・・。






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