超33話『モナちゃん危機百発!』
超33話
『モナちゃん危機百発!』


今日はモナと出掛ける日。
前にプールでの勝負で負けたから、約束通りモナと出掛けるのだが・・・。

「モナのヤツ……どこに行った?」

朝起きると、家に中にモナの姿はなかった。
俺は腹が減ったので台所に向かうと、テーブルの上に朝食と一枚の紙切れが置いてあった。

「なになに……駅前に来てくれだって?」

中身を訳すとそんな感じだ。
駅で待っているから来てくれだなんて・・・一緒に出掛ければいいのに。

「まぁ、とにかく食ってからだな……ガツガツ」

瞬間で朝食を平らげた俺は素早く着替えて家を出た。

………

ガヤガヤガヤ・・・。

日曜なので駅前が人だかりで賑わう。
そんな中、俺はキョロキョロと辺りを見渡し、それこそ不振人物みたいに妹を捜した。

「モナは………あっ、いたいた…!?」

見つけたモナは男達に囲まれていた困り果てている様子だった。
俺はすぐ側まで駆け寄り、問答無用に拳を振り上げた。

「俺の妹に手をだすんじゃねぇーー!!」

ボッコーーーーーーン!!

「ぎゃふぁぁぁ〜〜」

悲鳴を上げながら男のひとりが遙か彼方に飛んでいった。

「お兄ちゃんっ!」

「モナっ、大丈夫か?」

「ああ〜!? なんだお前は……って、マサトっ!?

残った男達のひとりが俺の方を振り向くやいなや、驚いたように俺の名を叫んだ。
こいつら・・・どこかで見たことあるような・・・?

「…お兄ちゃんの知り合い?」

「いや、どっかで見たことあるような…」

「この子はマサトの妹だったのか!?」

「お前達……ああっ! 俺と同じクラスのヤツじゃねぇーかっ!?

「気づくのが遅いっ!!」

クラスメートに怒鳴られてしまった。
そんな俺達をモナはキョトンと目を丸くして交互に見る。

「…で、俺の妹に何をしようとしていたんだ?」

「い、いや……そのぉ……ちょっとナンパを……な?」

「ほほぉ〜、そんなに俺の拳が欲しいのか?」

ポキポキ・・・

「し、失礼しましたーっ!」


俺が拳を鳴らすとクラスメート達は脱兎のごとく立ち去っていった。

「ありがとうっ、お兄ちゃんっ」

「うおっと」

嬉しさのあまり腕に抱きついてくるモナ。
そんな妹を嬉しくも感じ恥ずかしくも感じる・・・。

「あははっ、お兄ちゃんってカッコイイ〜」

「おいおい、そんなにはしゃぐなよ」

「さぁ、一緒に出掛けよう?」

「はいはい…」

俺は行き先も知らず、ただモナについて電車に乗った。

………

ガタンゴトン!

電車の中は満員で、俺とモナはすし詰め状態にされた。
俺はモナを守るため、ギュッと小さな体を抱きしめる。

「……お兄ちゃん」

「くっ……これは苦しいな。モナは大丈夫か?」

「うん…、お兄ちゃんが守ってくれるから」

モナは俺に体をピッタリと寄せ、恥ずかしそうに俯く。
そんなモナにイタズラ半分で耳に息を吹きかけた。

「ふぅ〜〜」

「あんっ☆ ダメだよ……お兄ちゃん」

「ははは、可愛いぞ」

「もう…」

そうは言いながらも満更でもない様子のモナ。
今度はさっきより少し刺激的にしてみることにした。

「…かぷ」

「あぅっ☆ だ、ダメだよ……おにい…ちゃん」

「かぷかぷ」

「きゃぅん……だめ…」

モナの耳たぶを噛むたびに小さな体が震えた。
俺はそれをギュッと抱きしめて支える。

「刺激が強すぎたかな?」

「あふぅ……お兄ちゃん…ダメだよ〜」

「目が虚ろだぞ?」

「お兄ちゃんが上手だから…」

「いや、モナの感度が高すぎるだけだと思う」

モナは恥ずかしそうに顔を俺の胸に埋め、耳まで真っ赤に染めた。
さすがにやりすぎたので俺は目的地に着くまで大人しくすることにした。

………

数分後。
モナがなにやらモジモジとしはじめた。

「お兄ちゃん……こんなところでダメだよ…」

「モナ?」

「そこは……ダメなの」

俺は何もしてないがモナが悶えている。
もしや、これは満員電車名物のチカンかっ!?

「モナ、ジッとしていろ」

「うん…、優しくしてね?」

「………」

何か勘違いしているモナを無視して俺はバレないように辺りを見渡す。
すると、モナのお尻を触っている手を発見した。

「うらぁぁー! 人の妹に手をだすんじゃねぇー!!」

俺はその手を掴むと、豪快に振り上げた。

「……あっ」

その手を手繰っていき主を見てみると・・・

「や、やぁ……マサト」

「………」

「いやぁ〜〜今日はいい天気だねぇ〜」

「なにやってんだテメェーはっ!!」

チカンの正体・・・それは正二だった。
へへっと愛想笑いを向ける正二を俺は許さなかった・・・。

「顔を洗って出直しなっ!!」

ドガシャッ・・・パリ〜〜ン!!

「俺は無実だぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

そんなセリフを吐きながら正二は星となった。

「何が無実だっ、チカンは犯罪だぞ?」

「あの…」

俺が豪快に悪を退治した後、近くの人が声をかけてきた。

「はい?」

「あの…、今の方はチカンではありませんよ? むしろチカンを捕まえようとしていたんです」

「……え?」

正二が犯人じゃなかったのか・・・?
冷静に考えてみれば正二がそんなことをするヤツじゃないのは俺が一番よく知っている。
それがモナならなおさらだ・・・正二は人一倍正義感が強いからな。

「お、お兄ちゃん…」

「…むっ!」

今度こそ犯人であろう人物の手を掴んだ。
犯人はしがないくたびれた中年オヤジだった・・・。

「いっぺん死んでこいーーっ!!」

バシューーーーーーーッ!!

今度こそ犯人を豪快に吹っ飛ばした。
まぁ、多少の犠牲は払ったが仕方がない・・・これも悪を倒すためだったのだ。

故人曰く“終わりよければ全て良し”だな!






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