超34話『トリプルアタック!!』
超34話
『トリプルアタック!!』


昼休み。

今日は珍しく、五月とモナとキヨ・・・そして俺を含む4人での昼食となった。
だが、最初からなにやら雲行きが怪しい。

「はい、お兄ちゃんのお弁当」

「マサト、私も作ってきたよ」

「先輩のために頑張って作ってきました〜」

3人揃って弁当を差し出す。
俺はそれらを受けて取ると、どれから食べようか迷った。

五月は料理が上達したのは確認済み。
キヨもモナの指導により、人並みのものは作れるようになった。
そしてモナの料理は言うまでもない・・・。

「今日はお兄ちゃんの好物、ハンバーグを入れておいたからね」

「私はマサトが誉めてくれた、卵焼きが入っているよ」

「私だって、食べられる物を入れてますよ〜?」

「当たり前だっ!!」

キヨの言葉にお約束通りツッコム。
いつもいつもキヨだけはどこかズレている様な気がする・・・。

「そんじゃ、いただきますか」

俺は手堅くモナの弁当から手をつけた。
そこにはモナが言ったとおり、俺の好物のハンバーグが入っていた。
ハンバーグに箸を刺し、口の中に放り込む。

「…どう? お兄ちゃん」

「ああ、いつも通りうまい」

「あはは、ありがとう〜」

「ねぇ、私のも食べてみてよ」

五月のおねだりに今度はそちらの弁当を開ける。
そして卵焼きを掴むと口の中に放り投げた。

「………」

「…うむ、おいしいぞ」

「ありがと、今度は違う物を作ってくるね?」

「期待しているよ」

「せんぱ〜い、今度は私のを…」

来たっ! キヨの料理がついに来た・・・!?
今日のは食べられる物だそうだから、食えることはできるみたいだが・・・?

「ほらほら〜、美味しそうでしょう?」

そう言って自分の弁当の蓋を開けて見せてくる。
俺はその中身をマジマジと見つめたが、怪しい点は見あたらなかった。

「先輩、あ〜〜ん」

キヨは料理を箸で摘みながら俺に向けてきた。
その行動に他の2人の眉がピクッと動いたような気がしたのは俺だけか・・・?

「別に自分で食べられるぞ」

「いいえ、今日は私が食べさせてあげます」

「恥ずかしいからいい…」

「先輩ったら照れちゃって、かっわいい〜♪」

キヨがそう言葉を発した瞬間、辺りが殺気に包まれた。
その空気にさすがのキヨも何かを感じ取ったようだ・・・カチンコチンに固まってしまった。

「さ、五月先輩にモナちゃん……じょ、冗談ですよ〜〜カタカタ」

「………(じ〜〜)」

「………(キィーー)」

五月とモナの2人に睨まれたキヨは肩と歯が同時に震えていた。
その姿はまさに“蛇に睨まれた蛙”状態である。

「2人とも、そんなにムキになるなよ」

「お兄ちゃん…」

「…マサト」

「キヨがこんなのはいつものことだろ?」

「そうだったね、清子ちゃんっていっつもそうだったよね」

「うん……そうだね」

「そ、そうですよ〜〜! 私は先輩が好きなだけですから〜」

「!?(キィィッ)」

「ひっ!? 冗談ですぅ〜!」

哀れキヨ、俺はもうなにも言うまい・・・。

「私だって、お兄ちゃんが好きだもん」

「わ、私はマサトの彼女だし……ね?」

「あ? ああ、そうだな」

「私はお兄ちゃんの妹だもんね?」

「まぁ、そうだな」

なにやら本当に雲行きが怪しくなってきた・・・。
モナと五月が一勝負起こしそうな予感だ・・・。

それにしても意味不明な事で争っているような・・・気のせいか?

「お兄ちゃんと一緒に住んでいるから、食事もお風呂も一緒だもんね」

「わ、私だってマサトと一緒に住んだらできるよ」

「私は……先輩の背中を追っかけているだけですけど…」

少し寂しそうに言うキヨ。
2人のあまりに激しいオーラに負けてしまったようだ。

「私はマサトと兄妹じゃないから、その……えっちなことだってできるよ…」

「そ、そんなの……私だって…!」

それはできません、モナさんっ!!

俺は心の中で叫んだ・・・。
法律上、俺とモナはそんな関係になれないんだなぁ〜〜これが。

「先輩、なんだか五月先輩とモナちゃんが火花を散らしてきましたねぇ」

「ああ、そうだな」

俺達は呆然とその光景を見ていた。
それこそ他人事のように弁当をつつきながら・・・。

「私もモナちゃんのお弁当、少しください」

「ああ」

「もぐもぐ……、やっぱり美味しいですね」

「五月のもうまいぞ?」

「ほんとですか? もぐもぐ……わぁ、本当ですね」

「キヨのはまだまだだな」

「くすん……頑張って精進します」

そんな俺達の影響をうけてか、いつの間にか2人が静かになっていた。

「もう終わったのか?」

「うん…、なんだかバカらしくなってきちゃって」

「私も…」

「そうだそうだ、“ケンカは犬も食わない”って言うしな?」

「先輩、それは“夫婦喧嘩”ですよ」

キヨが冷静にツッコム。
その効果のせいか、和やかなムードが辺りを包み込んだ。

「こんな些細なことで五月さんと仲悪くなりたくないし…」

「モナちゃん……私もだよ」

「私も妹としてお兄ちゃんが好きだから、五月さんにちょっぴり嫉妬しちゃったのかな?」

「それを言ったら、私もマサトとずっといられるモナちゃんがちょっぴり羨ましいよ」

「まぁ、人間って生き物は無い物ねだりなんだよな…」

俺はキザっぽく言ってこの場をまとめようとしたのだが・・・!?
あのアバズレ後輩がしゃしゃり出てきた・・・

「やっぱり、みんな仲良しが一番ですよね!」

「お前がまとめるんじゃねぇー!!」






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