超35話『強いよ五月さん』
超35話
『強いよ五月さん』
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いつのものように学校に着いた俺は、廊下で五月の後ろ姿を見つけた。
俺はバレないように足音を消して後ろに忍び寄る。
「よっ! いいケツしてんなぁ〜」
そう軽く言って、スカートの上から五月のお尻を触った。
・・・が、それが思わぬ結果を招くとはこのとき知る由もなかった・・・。
「きゃっ!?」
ブンッ・・・ドゴッ!!
可愛い悲鳴と共に豪快に後ろ回し蹴りが繰り出される。
その蹴りをまともにくらった俺は見事、壁に顔が埋まった。
「ぐおっ!?」
「えっ? マ、マサト……?」
「そ、そうだ…」
「ご、ごめん……てっきりチカンかと勘違いして…」
おいおい、校内でチカンが出没するわけないだろう?
そんなのいたら、とっくに通報されて逮捕されているぞ。
「マサトも悪いよ? その……言ってくれたら、いつでも触らせてあげるのに…」
「いや、そういう問題じゃないんだが…」
「ああ、そうだね! 壁に埋まっていたら授業に出られないもんね?」
「いや、それも微妙に違うのだが……そうだな」
五月が俺の腕を取って、ひとつ深呼吸をする。
力一杯引っ張る気だろう・・・なんだか嫌な予感がする・・・。
「マサト、いくよ?」
「ああ、お手柔らかに頼む」
「えいっ!」
「…なっ!?」
ボコンッ!!
確かに俺は壁から抜けた・・・それも豪快に・・・。
ただ、それだけじゃなかった・・・今度は反対方向におもいっきり飛んでいった。
パリ〜〜ン!
「うわぁぁぁぁぁ〜〜!」
「ご、ごめん〜〜」
五月は謝るが時すでに遅し!
俺はガラスを突き破り、豪快に地面へと落下していった。
………
数分か、数時間か・・・。
気がつくと俺は地面に刺さっていた。
廊下から落ちたときまでの記憶はあるが、その後の記憶がない・・・。
「むぐぐ…」
喋ろうとしたが喋れない。
こんな出来事が前にもあったような・・・なかったような・・・?
ザッザッザ・・・。
「マサト〜〜、あ! いたいた」
どうやら五月が来たらしい、これで助かる。
「今抜いてあげるからね?」
そう言って五月は俺の足を掴むなり、いとも簡単に引き抜いた。
俺が思うに、五月は女の子っぽくなったが怪力だけは昔のままのようだ・・・残念。
「ぷはっ、死ぬかと思った」
「ごめんね、私って乱暴だから…」
「そんなことないって」
シュンと悲しそうに俯く五月をギュッと抱きしめた。
「マ、マサト……?」
「五月は女の子だよ……誰よりも」
「無理……しなくていいよ? 本当は私みたいな女の子は嫌いなんでしょ?」
「……ばか」
俺は手を五月の顔に持っていき、顎にあてると少し上に上げた。
こうしたら俺と五月の目と目が合う・・・すると五月は頬をうっすらと赤らめた。
「……あの」
「可愛く照れるお前のことが、嫌いなわけないだろう?」
「………」
「五月……目を閉じて…」
「…うん」
言うとおりに目を閉じる五月。
それを確認した後、俺も少しずつ目を閉じて顔を近づけていった・・・
「ああー! お兄ちゃん達、なにやってるの?」
「!?」
同時に驚く俺と五月。
声のする方に振り向くと、そこにはモナの姿があった。
「モナちゃん!? こ、これはね」
「もうっ、いくらラブラブだからって、朝から学校ではやめてよね?」
「その……これはね?」
五月は賢明に取り繕うとするが、モナにはバレバレのようだ。
まぁ、俺はやましいことはしていないつもりなので言い訳はしない・・・。
「でもさぁ、どんな言葉も説得力ないよ? 抱き合っていたら…」
「…あ」
さすがの五月も気づいたようだ、俺達がいつまでも抱き合っていることに。
「こ、これは違うのっ!」
ドンッ!
「うおっ!?」
ひゅ〜〜・・・ボコーーーン!!
五月は軽く突き飛ばしただけなのだろう・・・だが、俺は吹っ飛んだ!
校舎を突き破り、果てしなく飛んでいった後には俺の足跡が閃光の様に走っているだけ。
「お、お兄ちゃんが…」
「マサトからも言ってよ? 違うよね?」
「五月さん、お兄ちゃんが飛んでっちゃった…」
「私たちは恋人同士だけど、その……ねぇ?」
恥ずかしそうに手で顔を隠しながら語りかける五月。
飛んでいった俺をどうしていいかわからず、ただただ見送るモナ。
「お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……」
「えへへっ、私とマサトはずっと好きあっていたんだけどね…」
五月よ、恥ずかしそうに話してくれるのは嬉しいが、一言だけ言いたいことがある・・・
お前も俺の彼女なら、彼氏の状態ぐらい把握しやがれっ!!
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