超36話『轟け! 我が咆吼!!』
超36話
『轟け! 我が咆吼!!』


今日は珍しくひとりで散歩に出掛けた。
休日なので何も考えることなく、ぶら〜〜っと歩いていたときのこと。

「………」

「…オヤジ発見」

前からひとりのオヤジが歩いてきた。
そして俺とすれ違おうとしたとき・・・

「うがぁぁ〜〜〜〜!!!!」

「うおっ!?」

突如、オヤジが地球外生命体と化した・・・!
それに驚いた俺は、おもわず大げさに仰け反ってしまった。

「……な、なんだ?」

離れた場所からオヤジを見てみると、普通の人間に戻っていた。
さっきのは一体・・・?

「……よーし」

俺はさっきのお返しとばかりに、オヤジに叫んでやった。

「うひょ〜〜〜〜!!」

するとオヤジは顔色ひとつ変えず・・・

「うがぁぁ〜〜〜〜!!!!」

・・・と、叫び返してきやがった。
それに負けじと俺もさらに叫びつけてやる。

「うぎょぉぉぉぉ〜〜〜〜!!!!」

「うがぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」

そしてお互い、気が済むまで叫び続けた・・・(笑

………

再び休日に戻る。
俺は何もない歩道を歩いていると、前に髪がなが〜〜い人物を見つけた。

「キヨだ……驚かせてやろう」

足音を立てずにキヨの背後に忍び寄ると、肺にいっぱい空気を吸い、力の限り叫んだ。

「うらぁぁっ!! なにやってるんだー!!」

「きゃっ!? す、すいませぇん〜」

キヨは慌てて振り向くと、ペコペコと頭を下げた。
そんな姿におもわず吹き出す。

「はっはっは! 相変わらず面白いヤツだなぁ」

「…え? せ、先輩じゃないですかっ! 驚かせないでください」

「悪い悪い、さっき変なオヤジに会ったのを思い出して実行してみたんだ」

「なんですか、それ…」

キヨは呆れたように言い捨てるが、顔はどこか嬉しそうだった。

「それにしても奇遇だな。キヨも散歩か?」

「いえ、先輩に会えるような気がして…」

「……本当か?」

「うそです」

「あっそ」


一瞬でも喜んだ俺がバカだった・・・。

「それはいいとして、一緒にお買い物にでも行きませんか?」

「買い物? 何か買うのか?」

「先輩へのプレゼントですよ♪」

「…どーせ、また嘘なんだろ?」

「先輩ったら疑り深いですねぇ? そんなことないですよ」

「…本当か?」

「ええ、ホラですけど」

「同じじゃっ!!」

キヨといるとなんだか疲れる・・・だが、決して悪いヤツじゃない。
根はいいヤツなんだが・・・。

「嘘です嘘! 付き合ってくれたらジュースを奢ってあげます」

「ジュースだけとはシケてるな…、どうせなら抱かせろ

「先輩ったら相変わらずですね。私は嬉しいですけど、五月先輩が聞いたら怒りますよ?」

「まぁ、そうだろうな」

「それじゃぁ、怒られてください…」

「…え?」

キヨが指を後ろに向けるので、俺は振り返ってみると、そこには五月の姿があった。

「さ、五月……どうしてお前がここに?」

「だって、マサトの姿が見えたから来てみたら…」

「そのだな、キヨに言ったのは全部冗談だ!」

「………」

「し、信じてくれるよな?」

「マサトのことは信じたいけど……でも……わたし…」

やべっ、五月が泣きそうだ・・・。
俺はこの涙に弱いんだよなぁ〜〜・・・はぁ。

「先輩っ、言ってあげなさい」

そう言ってキヨに背中を押された。
俺はその勢いで五月の真ん前に立つことになる。

「……マサト?」

「えっと、五月のことは嫌いじゃないぞ」

「…うん」

「だから……その、好きだってことだ……いつもいつも言わせるなよ」

「ごめん…でもね、ありがとう」

そんな五月の嬉しそうな笑顔に、俺は何となく照れてしまった。

「ヒューヒュー! 先輩達、熱いねぇ〜」

「あのアバズレ後輩め…!」

「あはは……恥ずかしいね」

「まったくだ」

「先輩達の会話は録音させてもらったからね〜」

「な、なんだとっ!?」


キヨの方を振り返ると、アイツは録音機の様な物を持ってこちらに見せつける。
それを見た俺と五月は赤いのを通り越して真っ青になった・・・。

「ふっふっふ! これを学校で放送されたくなかったら、私と付き合ってください」

「嫌だっ!」

「そんな……即答しなくても」

「その手には乗らんっ! もしそんなことをしてみろ? お前を…」

「わ、私を…?」

「コンクリート詰めにしてナイル川に沈めてやるっ」

「ひぃぃぃ〜〜!? それは嫌ですぅ〜〜」

「それが嫌なら、腰が抜けるまで抱いてやるっ」

「それならOKです〜っ♪」

「なにバカなことを言い合っているのよ〜〜!!」

ボコーーーーーン!!

「ぐわぁぁぁぁ!」

「きゃわぁぁぁ!」

怒りの頂点に達した五月の蹴りに、俺とキヨは星になった・・・。






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