二者択一

『二者択一』



雪が元に戻った頃。
3人の夕食がはじまった。

「まさか雪があんなになるとは思わなかった」

「そ、そんなこと言わないでよぉ〜」

雪は顔を真っ赤にしながら抗議する。

「おにいちゃんが悪いよ」

「お、俺は雪が可愛かったらつい…」

「こ、浩ちゃん……ぽ」

「そこで赤くなるんじゃないっ」

真奈にからかわれるじゃないか。

「おにーちゃんったら……んふふ」

「俺は雪が好きなんだっ! 文句あるかっ?」

「いーえ、ぜ〜んぜん」

この不適な笑顔、怪しすぎるっ!

「ったく――雪、あ〜ん」

「あ〜ん」

俺は真奈を無視して雪にご飯を食べさせる。

「もぐもぐ…」

「俺も」

もぐもぐ
相変わらずうまいな。

「雪、あ〜ん」

「あ〜ん」

雪の口にスプーンを持っていく。

「もぐもぐ…」

雪はおいしそうに食べる。
そんな雪を見ていると本当に心が和む。

「うまいか?」

「うん、おいしいよ」

そんなこんなで夕飯は幕を閉じた。

「おにいちゃん」

「うん?」

食後のあと、雪と2人でくつろいでいると真奈が声をかけてきた。

「お風呂炊けたけど、どうする?」

「俺は入る、雪は?」

「私も入る」

「…だそうだ」

すると真奈は少し考える。

「うーん、ひとりひとりはダメだね」

「そうだな、雪はひとりじゃ無理だ」

「私とおにいちゃん……どっちかと一緒だね」

「そういうことだ」

俺と入るか、真奈と入るか・・・

「雪音さんはどっちがいい?」

「え? 私が答えるの?」

「うん、そうだよ」

「そんなの……選べないよ」

雪は困ったように言う。

「私の意見としてはおにいちゃんとはやめておいた方がいいよ」

「おい、どうして俺はダメなんだ?」

「だって、おにいちゃんったら絶対雪音さんを襲うんだもん」

「俺は野獣かっ!」

俺にだってやっていいことと悪いことぐらいの区別はつく。

「雪音さんっ、どっち?」

「わ、私は……えっと」

「さぁ、さぁ!」

「…こ、浩ちゃん」

雪は小さな声ですまなそうに言った。

「ふぅ、雪音さんも命知らずだねぇ」

「大丈夫だよ、浩ちゃんはそんなことしないから」

「ほんとかなぁ〜?」

真奈が疑いの眼差しを俺に向ける。

「まっ、雪音さんが決めたんだから仕方ないか」

「そういうことだ」

「じゃぁ、2人は先に入ってね」

「別に構わないが……なぜ?」

「私が後にいるんだから、遅くならないようにね」

そういうことか・・・

「わかった」

「んじゃ、よろしくね」

それだけ言って真奈は台所に戻っていく。
夕飯の片付けがあるのだろう。

「雪、行こうか?」

「うん」

「あ、着替えはどうする?」

「別にいいよ」

「そうか」

だけどそれだとな・・・

「服ぐらいは着替えておくか?」

「う、うん。でも、私持ってないよ?」

「俺のシャツでもいいか?」

「いいよ。浩ちゃんのなら着たい」

恥ずかしいことを簡単に言いやがって・・・
まったく雪らしいな。

「わかった、行くぞ」

俺は部屋に戻って着替えを取る。
そして雪を連れて脱衣所に向かうのだった。




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