プロローグ 秋という季節
プロローグ
『秋という季節』
季節は秋。
夏ほど暑くなく、かといって春ほど暖かくない。
そして冬ほど寒くない。
木々は色づき――季節を感じさせる。
「ふぅ、遅いなぁ〜」
私はいつもの公園であの人を待つ。
この公園には思い出がある。
たくさん――本当にたくさんの思い出がある。
「……やーめた」
私は思い出すのを止める。
ふり返ってしまうと涙がでそうになるから・・・
これからあの人と会うのに涙は見せたくない。
「いつもの元気っ!」
私は元気な方がいい。
あの人がいつもそう言ってくれる。
“元気な雪が好きだ”
その言葉だけで、私は元気でいようと思う。
それであの人が喜んでくれるなら・・・
それが・・・
それだけが――私の唯一できるあの人への罪滅ぼし。
「――雪」
あの人が松葉杖をつきながらこちらに来る。
「浩ちゃんっ」
タッタッタッタ
私は浩ちゃんの元に駆け寄る。
「待たせてスマン」
「そんなことないよ」
ばふっ
そして――浩ちゃんの胸に飛び込む。
「い、いきなりだな…」
そう言いながら、私を受け止めてくれる。
「会いたかったよ〜」
「おいおい、昨日も会っただろ?」
「それでも会いたかったんだよ〜」
「やれやれ、雪は寂しがり屋だな」
そう、私はすっごく寂しがり屋。
浩ちゃんがずっといてくれないとイヤ。
私、気づいたから・・・
本当の私の気持ちに気づいたから。
「今日はどうする?」
「えっと…」
私は考えるが、答えは決まっている。
「浩ちゃんと一緒ならなんでもいいっ」
季節は再び冬に向かう。
だけど、その前に秋を通過する。
秋。
寂しさを感じはじめる季節。
この季節は2人にどのような変化をもたらすのだろうか?
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