第2話 食欲の秋
第2話
『食欲の秋』


秋。
それは食欲をそそる季節。

「お腹空いたねぇ〜」

ぐぅ〜
大学の帰り――私のお腹が鳴った。

「昼飯食ったのか?」

「うん、しっかり食べたよ」

「だったら、どうしてお腹が空くんだ?」

「……わかんない」

私自身わからない。
どうしてかしらないけど、お腹が空いた。

「何か食べようよ〜」

「ん? まぁ、構わないが…」

「やったぁ〜」

嬉しいな♪
浩ちゃんと一緒に食べられるんだぁ〜。

「さて、何を食うか……だな」

「そうだね」

2人で考える。
何がいいかな? 何があるかな?

「おっ? あれなんかどうだ?」

「え? なに?」

浩ちゃんが指さす先には・・・

『焼き芋〜〜〜焼き芋〜〜〜』

焼き芋の屋台があった。

「焼き芋でも食うか」

「うん」

「じゃぁ、ちょっと待ってろ」

「え?」

浩ちゃんはそう言うと、松葉杖をついて屋台まで行った。

「………」

本当は私が行かなくちゃいけないのに・・・
私――また浩ちゃんに迷惑をかけちゃった。
私がワガママを言ったばっかりに・・・

「……浩ちゃん」

「ん? なんだ?」

「きゃうっ!?」

いつのまにか浩ちゃんが目の前にいた。
びっくりしたよぉ〜。

「ど、どうした?」

「な、なんでもないよ〜」

私はニッコリ笑う。
――が、驚きは隠せない。

「暗い顔して……そんなに腹が空いていたのか?」

「…う、うん」

本当はそうじゃないんだけど、この場合はそうしておこう。

「ほれ、雪の分だ」

「あ、ありがとう」

私は浩ちゃんから焼き芋を受け取る。

「あちち〜」

「ははは、熱いから気を付けろよ」

「さ、最初に言ってよ〜」

予想以上に熱かった。
これからは気を付けないと・・・

「うしょ……んと………はい」

私は皮を剥いた焼き芋を浩ちゃんに差し出す。

「ん? きれいに剥けたな」

「うんっ………じゃなくって」

「なんだ?」

もうっ、浩ちゃんったら鈍感なんだから。

「浩ちゃんにあげる」

「は? 俺の分はあるぞ」

「私のをあげるから………はい、私は浩ちゃんのをもらうね」

「お、おい…」

私は浩ちゃんの手から皮の剥けていない焼き芋を奪い取る。
そして、かわりに私の焼き芋を渡す。

「???」

「食べて食べて♪」

「え? でも、これは雪の分だろう?」

「いいからいいから」

気づいてよね、私の気持ち。
今の私にはこんなことしかできないけど・・・

「…………できた。私も食べよう」

私の手にある焼き芋の皮も剥けたので、食べることにする。

「おいしそうだね」

ぱくっ
一口食べる。
なんともいえない味が口の中に広がる。

「おいしいよ〜♪」

ぱくぱくぱく
美味しさのあまり次々と食べていく。

「うんうん、おいしい〜♪」

「…雪」

「あむ……なに?」

「ありがとうな」

浩ちゃん――気づいてくれたんだ。

「えへへっ、どーいたしまして〜」

「さて、俺も頂くとするか」

「うんうん」

ぱくぱくぱくぱく
2人で焼き芋を食べる。

「楽しいね」

「んあ? そうだな」

ずっとこうしていたいね。
2人で一緒に食べて・・・
2人で一緒に遊んで・・・
2人で一緒に笑って・・・

いつも一緒。
浩ちゃんと私。
私達は2人でひとつ。

そうだといいね。





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