第6話 文化祭
第6話
『文化祭』


今日は文化祭。
楽しみにしていたはずなのに・・・

ザワザワ
大学は朝から文化祭で賑わっている。

「……ふぅ」

私はひとつため息を吐く。
今はちょうど休憩に入ったところ。
ひとりで何をするわけでもなくボーっとする。

「………浩ちゃん」

大丈夫かな?
ひとりで寂しくないかな?

とす
なんとなく椅子に座る。
浩ちゃんのことが心配で、何処かに行こうという気にはなれない。

「……だって」

浩ちゃんがいなくちゃ意味がないもん。
私ひとりでいても・・・
浩ちゃんがいなくちゃ・・・

「………ぐす」

涙がこぼれそうになるのを我慢する。
泣いちゃダメ――泣いちゃったら浩ちゃんの意思が無駄になるから。

「どーしたの?」

「…え?」

私は声のする方に振り向く。
すると、そこには仲良しの友達がいた。

「暗い顔しちゃって」

「あ、うん」

「ん? いつもの彼は?」

「……来てない」

そう、浩ちゃんは来てない。
それは・・・

「来てないって……どうしたの?」

「…私のせいなんだ」

「雪音ちゃんの?」

私のせい。
私がいつもいつも迷惑をかけているから・・・
昨日だってそう。
私のせいで――浩ちゃんは・・・

「ふぅ、何があったか知らないけど、行ってあげなよ」

「?? 行くって?」

「浩一さんが心配なんでしょ?」

「!?」

え?
私――知らないうちに声に出ていたのかな?

「どうして?」

「雪音ちゃんの顔を見てたらわかるよ。いつもの元気がないもの」

「………」

元気がない。
そんな私はダメ。
浩ちゃんは元気な私が好きなんだから・・・

「ほらほら、さっさと浩一さんの元に行った」

「…いいの?」

「後は私がなんとかしとくから」

「で、でも…」

勝手に抜け出したら、他の人が困るんじゃないかな?

「ぐだぐだ言ってないで――行って来いっ」

どんっ
私は背中を強く押される。

「…あっ」

「さぁ、行った行った」

「…うん、ありがとう」

私はそれだけ言って、浩ちゃんの元へ向かう。

浩ちゃんの側にいてあげたい。
ひとりだと寂しいと思うから。

ううん――違う。

私が浩ちゃんの側にいたい。
ひとりだと寂しいから。

浩ちゃんがいないとダメだから。





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