2月14日 涙のバレンタイン
2月14日
『涙のバレンタイン』


今日はバレンタイン。
男性にとっては心躍る1日である。

2人でいつもの公園に向かう途中。

「浩〜〜ちゃん♪」

雪が急に俺の腕に抱きついてくる。

「うぉっと…」

それによりバランスを崩しそうになるものの、なんとか松葉杖で支える。

「こ、こらっ! 急に抱きついてくるな」

「えへっ、ごめんね」

雪は舌をペロッと出して謝る。
その顔に反省の色は見えない・・・

「ふぅ、危ないだろう?」

「大丈夫っ! いつでも私が支えてあげるから」

「そういう問題か?」

俺は半ば呆れながらも、自分の顔が緩んでいるのがわかる。

「そーいう問題なのっ」

「はいはい」

温かい時間。
ゆっくりと時が過ぎていく。

「今日はバレンタインだよ〜」

唐突に雪が言う。

「そうだな」

「は〜い、どうぞ」

雪が少し大きめの袋を差し出す。

「これはまた……大きいな」

「セーターを編んでみたの」

「ほう、それは嬉しいな」

俺は袋を受け取り、中を見てみる。

「これはこれは…」

がさごそ
中身を取り出すと、それはなんともいえない物だった。

「……………なんだ?」

「セーターだよ」

「…………………………………そうか」

これがセーター・・・
俺が今まで見てきた物はなんだったんだ?

「すっごく間が長いんだけど…」

「いや、セーターという物がこんな物なんだとはじめて知った」

「…………」

いやはや、なんて言っていいのやら。
マフラーは上手だったのにな・・・

「ひ、ひどいよ」

「あっ、その……すまない」

「わ、私……一生懸命編んだのに……ひどいよ」

雪が涙目になる。

「ぐす……浩ちゃんに喜んでもらおうと思って……」

「ゆ、雪……あー……そのだな」

「頑張ったのに……うっく……頑張ったのに…」

そう言って雪は自分の手で顔を隠す。

あー、やっちまった。
雪の涙が一番見たくないのに――俺ってヤツは。

「……すまない」

俺は雪の頭を優しく撫でる。

雪が泣きやむまで――ずっと。




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