第2話 そんなある日
第2話
『そんなある日』
6月下旬。
夏の暑さが本格的になりはじめる。
「暑くなってきたねぇ〜」
「ああ、俺は嬉しいけどな」
いつもの公園、いつものベンチ。
俺と雪はそこに並んで座る。
今日は日曜日――デートというわけではないが一緒にいる。
「私は暑いのダメ〜〜」
そう言うなり、俺の肩にもたれてくる。
「どうした? この程度の暑さでダウンか?」
「う、うん」
やれやれ、お前ってヤツは・・・
「貴様はそれでも軍人かっ!」
「わ、私は一般人だよ――ついでに言うと、私の家系に軍人はひとりもいないよ」
「………」
負けた。
雪の方が一枚上手だったようだ。
「それはいいとして、そんなに暑いのが苦手か?」
「……うん。ダメ」
ぴらっ
雪は服の胸元部分を引っ張り、中に風を通す。
「気持ちいい〜」
「………」
何気なしに雪を見ると、服の中が見えてしまった。
ワザとじゃないが、俺の方が身長が高いから覗く形となってしまう。
「………」
俺はマジマジと見る。
雪の服装は――
下はスカート、上は服一枚だけで、中は下着もなにもつけてなかった。
「どうしたの?」
雪がそのままの姿勢で俺を見上げる。
――はっ!?
俺はふと我に返る。
「…な、なんだ?」
「浩ちゃん、私のことジッと見てる」
「……雪はその服以外なにも着てないのか?」
俺の口からそんな言葉がこぼれる。
「うん、暑いの苦手だから…」
「それはわかるけど、下着ぐらいはつけるだろう?」
「普通はそうなんだけど、私って胸がないから――って、ええ!?」
雪が驚きの声を上げる。
「ど、どうして――そのことを知ってるの!?」
「あ? い、いや……それが……俺の位置からだとな……」
俺がそれだけ言うと、雪はそのままの姿勢で自分の姿を見る。
「……あ」
そして気づく。
上からだと、自分の服の中が完璧に見えていることに・・・
「わ、ワザとじゃないんだ…」
「むぅ〜〜」
雪は自分の胸元を手で隠し、俺を睨む。
その顔は怒っているような、恥ずかしいような――
どちらともとれる。
「俺が悪かった」
「………浩ちゃんだけだからね」
「…え?」
素直に謝る俺に、雪はそう言った。
「み、見てもいいのは……浩ちゃんだけだから」
「…雪」
雪の肩に手を回し、グッと俺の方に寄せる。
「あっ…」
雪が小さな悲鳴を上げる。
だが、事に気づくと――身体の力を抜いて俺に身を委ねる。
「――雪」
「……えっち」
雪が小さな声で呟く。
そんな姿を見ると――とても愛しく感じる。
「…浩ちゃん」
雪の頭を撫でると、嬉しそうにする。
可愛いヤツ・・・
「恥ずかしがっている雪も好きだ」
「え? も、もう……イジワル」
「前にも言っただろ? 男は…」
「うん。だから許してあげる」
雪が満面の笑みで答える。
その笑顔は夏の日差しに負けないくらい――輝きを放っている。
俺と雪。
こんな2人に訪れた――そんなある日のこと。
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