第1話 始まり
第1話
『始まり』
《 始業式 》
これで俺も高3になった。
だが、俺の高校生活はとくに何もなかった。
たぶん、今年もそうだろう…
そんなことを考えていると、1人の学生が声をかけてきた。
「ようっ、村上!」
「ん?…沢田か」
こいつは『沢田 勇介』
この高校で知り合った女好きの気さくなヤツだ。
「今年もまた同じクラスになったな」
「…そうなのか?」
そういや、クラス発表がされていたな…俺はあんまり興味がないから見なかったが…
「そうなのか?って…お前、見てないのか?」
たぶん、クラス発表の事を言ってるのだろう。
「ああ。まだ見てない」
「相変わらず、のんびりしてるなぁ」
「…まぁな」
今年も沢田と同じクラスか…
俺がまともに話すのもこいつぐらいだからいいか…
「お前の友達は俺だけのようだから、同じクラスでよかったな!」
…と、俺の考えを見透かすしたように沢田が言った。
「…ああ」
「それよりさっ」
沢田が目を輝かせて話しかけてきた。
「なんだ?」
「今年の新入生はどんな子がいるかなぁ〜?」
やっぱり…。
こいつが目を輝かせて話すときは、決まって女のことだ。
「可愛い子いるかなぁ〜」
「別に俺はいなくてもいい」
俺は自分の意見を率直に言ってやった。
「ふぅ〜…。お前って会ったときから変わらないな…そういうとこ」
「…そうか?」
自分ではわからないが、そうなのか?
「ああっ、お前は会ったときから、女に興味なし!!ってな感じだったぜ」
「………」
「お前ってさ…もしかしてコレが好きなのか?」
そう言って、沢田は親指を立てた。
こいつは何を言いだすのかと思えば…まったく…
「そんなんじゃない」
「でもなぁ〜、去年の9月頃だったかな…お前、後輩の女の子に告白されただろ?」
「そんなことも…あったかな」
よく憶えていないが、そんなこともあったような気がする。
「なかなか可愛い子だったのに、お前はあっさりフッちまうんだもんなぁ」
「………」
「まぁ、別にお前が悪いわけじゃないんだけどよ」
「…ああ」
告白を断った理由。
それは俺の過去が大きく関わっているんだろうな…
「…なんかワケありのようだから、理由は聞かないさっ」
「…そうか」
人の過去を詮索しない。
それがこいつのいいところだ。
だから俺はこいつと友達になった…今まで友達を作らなかった俺が…
「おいっ、村上」
「ん?」
「そろそろ行こうぜ。始業式が始まっちまう」
「…そうだな」
こうして俺の高校生活、最後の年が始まった。
今までのように何もない1年だと思っていた。
だが、数日後、俺は思わぬ出会いをするのだった…
トップへ戻る 第2話にへ