第2話 出会い1
第2話
『出会い1』


始業式から数日後

ただいまの時刻は9時20分
俺は下駄箱にいる。
授業はもう始まっているのだが、寝ずごしたため遅れたのだ。

「…ふぅ」

俺は急ぐこともなく、のんびりと教室に向かった。
…このまま授業にでないのもいいなぁ
そんなことを考えながら歩いていた。

「きゃっ…」

そのとき、どこからか悲鳴らしき声が聞こえた。

…なんだ?
俺は辺りを見回してみたが、誰もいない。
空耳…なわけないよな。
そう思いながら歩いていると、角を曲がった先に、1人の女の子がうつぶせに倒れていた。

「………」

いつもは他人と関わらない俺だが、このときはなぜか無視できなかった。

「…なにをしている?」

俺が声をかけると女の子はうつぶせのまま返事をした。

「えっと…その…ころんでしまったんです…」

「…そうか」

ふと廊下を見ると、カバンや教科書が散らばっている。
たぶん、この女の子の物だろう。

「…しかたがない」

そう言って、俺は散らばっている教科書などを拾い集めた。
このとき、なぜ俺がそうしたのか自分ではわからなかった。

「………」

俺は無言で集めた物を女の子に差し出した。

「…あ、ありがとう…ございます」

女の子はうつむいたまま礼を述べた。
…ん?
俺はふと疑問に思ったことを口にした。

「なぜ…起きない?」

俺がそう聞くと…

「あの…起きられないんです…」

「………」

起きられない?何を言ってるんだ、この子は…
………
そういや…あいつもそんなことを言ったときがあったな…

「………」

そして俺は無意識のうちに手を差し伸べていた。

「…?」

女の子は顔を少し上げ、俺の手を見つめる。

「…つかまれ」

「…えっ?」

「1人で起きられないんだろ?」

「すみません…」

うつむいたまま女の子は俺の手を握った。

「………」

俺は手に力を入れて引っ張る。
すると女の子はフラフラしながら立ち上がった。
引っ張ってみてわかったこと。
この女の子は軽い。いや、軽すぎる。
とても高校生とは思えないぐらいの体重だ。

「………」

「あ、あの…ありがとうございます」

女の子がそう言って、顔を上げた。


「…っ!?」

初めて見る、この女の子の顔。
その顔を見て俺は愕然とした。
………
ど、どうして…?

「ど、どうかしましたか?」

女の子は俺の様子が変な事に気づき、尋ねてきた。

「………」

だが、女の子の言葉は俺の耳には入っていなかった。

「…こ、琴美…?」

俺は驚きを隠せなかった。
なぜ、琴美がここに…?
あいつは…琴美は…2年前に死んだはず…




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