第13話 琴美2
第13話
『琴美2』


琴美の告白から数日後…
突然、琴美が倒れた…

「琴美っ!」

「お…兄ちゃん」

琴美は苦しそうに答える。

「大丈夫か?」

「う、うん。でも…」

「…ん?」

「私…もう……だめみたい…」

「な、何を言ってるんだ?」

「私……お兄ちゃんに隠していたことがあるの」

「隠していたこと?」

「…う、うん」

琴美が俺に隠していたことって、いったい…

「私ね……長くないの」

「長くないって…?」

まさか…

「長くは…生きられないの」

「なっ…」

琴美が生きられない?

「生まれつきね……心臓が弱いの」

「そんな…、俺は聞いてないぞ!」

「私が……お母さんに頼んだから…」

「頼んだ?」

「うん。どんなに頑張っても20歳までしか生きられないってわかったとき…」

「20歳? でも、琴美はまだ…」

そうだ。
琴美はまだ14歳だ。
20歳までには、6年ある…

「20歳までしか生きられないなら、普通の子と同じように生きたいって…」

「………」

「迷惑……かけたくなかったから…」

「…琴美」

「だから、お兄ちゃんには言わなでって頼んだの…」

そんなことが…
まだ14歳なのに重い運命を背負っているなんて…

「私って……バカだよね」

「…?」

「無理して、命を縮めちゃったら意味ないよね」

「………」

「お兄ちゃん…」

「…ん?」

「私……もう、お兄ちゃんを振り向かすことできないけど…」

「な、何を言って…」

「大好きだよ」

琴美は弱々しい声で言う。

「こ、琴美…?」

すぅーっと琴美の目が閉じていく。

「おにい…ちゃん。すき…だよ」

「琴美っ! しっかりしろっ」

「私のこと……忘れ…ないで」

「ああっ、忘れない! 忘れるもんかっ!!」

「嬉しい……約束…だ……よ」

琴美の目から涙が流れる。

「私…幸せだった…よ」

「もう……喋るな」

こんな琴美を見てると、俺まで涙が出てきそうになる。
だが、俺は涙を流すわけにはいけない。
琴美が心配するから…

「お兄ちゃん……優しいから…」

「…えっ?」

「我慢……してるん…でしょ?」

「…何を?」

「…涙」

「…え?」

琴美に言われてから気づいた。
俺の目から涙が流れ、視界はぼやけていた。

「そんな……おにいちゃんを…」

「琴…美?」

「すきに……なって…」

「お、おいっ」

「…よかっ……た」

「琴美っ!!」

「………」

「琴美ーっ!!!」

「………」

………

何度も呼びかけたが、琴美が返事をすることは二度となかった…

「琴美…」

『私って……バカだよね』

ふと、琴美の言葉が思い起こされる。
………
ほんと、バカだよ。
俺は琴美を守ってやろうって…
はじめて会ったとき…
俺の妹になったときから…
守ってやろうって…
どんなときでも、俺の全てをかけて…
守ってやろうって…
………
それなのにっ…
どうして……言ってくれなかったんだ…
琴美


《 数日後 》

琴美を死に追い込んだのは何か…?
俺はそれが気になり、母に尋ねた。
しかし、母から返ってきた答えは…
死因は不明…
わかっているのは心臓が弱いのが原因であるということだけだった…
………
納得できない琴美の死。
だが、納得せざるをえない。
もう、琴美はこの世にいないのだから…

結局、俺は自分の想いを琴美に伝えることはできなかった…





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