プロローグ 春の風
プロローグ
『春の風』


3月。
冬は姿を消し、春が姿をあらわす――そんな季節。

桜のつぼみがふくらみはじめた頃。
一組の男女が歩いている。

2人は長い間一緒にいて、自分の気持ちに気づかなかった。
それは青年だけではない――少女も同じだった。
少女は自分の気持ちに気づいていたようで、心の奥底に眠っている気持ちには気づいていなかった。
だが、それを気づかせる出来事が起こった。

――別れ

その出来事が少女の心を動かした。
少女の心が揺らぐ。
そして――気づく。
自分の本当の気持ち――心の底から望んでいること。

少女は意を決して、自分の気持ちを伝える。
だが――青年は自分の気持ちに気づいていなかった。

その結果、少女の想いを裏切る。

涙を流して去る少女の姿を見て――気づく。
本当の気持ち。
青年は気づいた――自分の気持ちを・・・
自分が求めていたものを・・・

「浩ちゃん」

「ん?」

「これからも――ずっと一緒だよ」

春の風。
そう呼ぶにふさわしい風が2人に吹きつける。
それは2人を祝福しているような風だった。

春。
それは別れと出会いの季節。

その春はもう――訪れている。




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