第2話 雪
第2話
『雪』


12月上旬。
季節は冬の姿を現しはじめた。

「寒いな」

「そ、そうだね〜〜カチカチ」

登校中。
雪は寒さに体を震わせている。

「寒いのは嫌だ」

「で、でも――雪が降るから私は好きだよ」

「…そうか」

俺にとっては雪は拷問だ。
ただでさえ寒いのに、その寒さを倍増させる。
ちなみに、ここで言っている“雪”は降る雪のことだ。

「雪が積もったら、雪だるま作りたいなぁ〜」

「勝手にしてくれ、俺は寒いのはダメだ」

「ええー? 浩ちゃんも一緒に作ってくれないの?」

雪が残念そうな顔をする。
そんな顔するなよ――断りづらくなる。

「か、勘弁してくれ」

「でも…、私――浩ちゃんと作りたいよ」

「………」

ふぅ、しょうがないな。

「わかったわかった、一緒に作ってやるからそんな顔するな」

「ほ、ほんと? 約束だよ」

「ああ」

俺もあまいな。
雪がこういう態度をとると、断ることができない。

「ただし! 雪が積もったらな」

「うんっ、私の名にかけて積もらせるよ」

「なんだそれ?」

自分の名前とかけたのか・・・
相変わらず、ギャグのセンスは30平方cmズレているな。

「ねぇ、浩ちゃん」

「なんだ?」

俺が返事をすると、雪はこんな事を尋ねてきた。

「どうして、冬が嫌いなの?」

「それか。前にも言っただろ? 寒いからだ」

「それだけ?」

今日の雪は鋭いな。
それに疑り深い。

「…それだけだ」

「ふーん」

雪は釈然としないようだったが、なんとか納得した。

「じゃぁ、好きな季節は?」

「そうだな――夏」

「夏? 浩ちゃんのエッチ」

「はぁ?」

なぜそうなる?
夏が好きだったら、エッチなのか?

「夏が好きって、水着の女性が好きなんでしょ?」

「………」

そういうことか。
大いなる誤解だぞ、雪。

「黙ってるってことは――やっぱり」

「違う違う! 俺は暑いのが苦にならないからだ」

「そ、そうなの?」

「今までの俺を見てきてわからないか?」

「あ、ああ――そうだよね」

まったく。
ずっと一緒にいるんだから、それぐらい気づけよ。

「ご、ごめんね。私てっきり…」

「ったく」

はぁ、頭が痛くなってきた。
こいつの思考回路はどうなっているんだ?

「私、忘れん坊さんだから……あはは」

「笑って済ませるな」

「ごめん」

しょんぼりする雪。
言い過ぎてしまったか?

「いいよ。お前のそういうところは昔からかわらないからな」

「うん。でもそれって、バカにしているように聞こえるんだけど?」

「あ? 気のせいだ」

「そ、そうかな〜」

なにやら考える雪。
だが、それもすぐに止める。
こういうときは本当は何も考えていない。

「それにしても、今日は寒いな」

「12月上旬だと思えないねぇ〜」

「まったくだ」

マジで寒い。
冬はまだこれからだというのに・・・




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