第6話 雪の心
第6話
『雪の心』


12月下旬。
冬は本来の姿を現しはじめた。

「もうすぐクリスマスだね」

「そうだな」

登校中。
俺と雪はいつものように学校へ向かう。

「今年もクリスマスパーティーするの?」

「ん? ああ、そうらしい」

毎年クリスマスには俺と雪と妹の真奈の3人で集まる。
今年も集まるらしい。
今日、真奈がそんなことを言っていたな。

「雪は予定とかないのか?」

「予定? クリスマスのこと?」

「ああ」

「うん、ないよ」

最近は少なくなったが、やはり毎年思う。
なぜ雪は他の子とクリスマスを過ごさないのだろう?
今まで、雪は誘いがあっても断ってきた。
なぜ行かないのだろう?

真奈のためなのだろうか?
妹は明るい性格だが、人が苦手で友達も少ない。
だけど、もともと明るい性格だったわけではない。
雪に出会って真奈は変わったのだ。
どんなときもマイペースで・・・
どんなになっても明るくて・・・
そんな雪の影響か、真奈も明るくなった。
雪には感謝してもしたりないくらいだ。

「今年も3人で集まるの?」

「あ? ああ」

「どうしたの?」

やれやれ、また考え込んでいたらしい。
なぜだろう・・・雪を見ていると、いろんな事を思い出す。

「なんでもない。真奈が今年も集まるって言っていた」

「そうなんだ〜」

嬉しそうにする雪。
俺としては真奈が喜んでくれるので大歓迎なのだが・・・

「――雪」

「なに?」

「いや、なんでもない」

「うん? 変な浩ちゃん」

やめておこう。
今更そんなことを聞いてもな・・・

「今年もいつものように、浩ちゃんの家でするの?」

「ああ」

「わかったよ〜、プレゼント買っとかないとね」

「いや、気をつかわなくていいぞ」

こいつは毎年、俺と真奈にプレゼントをくれる。
ありがたいのだが何だが悪い気もする。
俺はこいつに何もしてやってないから・・・

「気にしない気にしない」

「………」

こう言われると、どうしようもない。
俺はいつもこんな風に雪に負けるのだ。

「あ、そうだ」

雪がなにかを思い出したらしい。

「プレゼント――真奈ちゃんのはどんなのがいいかな?」

「真奈か…。あいつも変わり者だから、普通じゃない物がいい」

「去年あげた“こけし”みたいな物がいいの?」

「ああ、あれは相当喜んでいたぞ」

我が妹ながら変なヤツだ。
真奈も常人より感覚が25ヘクタールほどズレている。

「あれ? “あいつも”って……他に誰かいるの?」

「あ、いや…」

それはお前のことだっつーの。
お前も立派に常人から程遠いからな・・・特に感覚が。

「ふぅ、今日も寒いね」

「…ああ」

話が急に飛んだ。
雪と話していると違うところに飛ぶことがある。
もう慣れたが・・・

「クリスマス――今年も楽しみだね」

「そう……だな」

俺の心境は複雑だった。
年末の行事は楽しいのだが、寂しさが後に残る。
俺だけだろうか――やけに酷く残る。
特に今年は・・・
そんな感じがしていた。




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