プロローグ『出会いという残酷な再会』
プロローグ
『出会いという残酷な再会』


それはある雨の日のこと。

傘を忘れた俺は雨に打たれながら家に帰るところだった。
何気なしに立ち寄った公園。
その公園の隅にあるベンチに1人の少女が座っていた。
傘を差さず、俺と同じようにずぶ濡れになっているが、それでも動こうとしない。
シャツ一枚という刺激的な姿が目を引いたが、逆に通行人はそれを見ずに避けていた。
そんな中、俺は雨で重くなったズボンを引きずるように少女の側に行く。

「どうした?」

開口一番に出た言葉はそれだった。
単純な俺からは上等なほどの言葉、それ以外に何も思いつかなかった。

「………」

だが、少女は何も答えない。
濡れた長い髪を無様に垂らしながら、こっちに顔を向けるだけだった。
俺を覗くように見つめる瞳は、どこか陰りがある。
そんな瞳に少なからず惹かれた。

ただ、あいつに似ていただけなのかもしれない・・・

「家に帰らないのか?」

「………」

「風邪ひくぞ?」

「………」

やはり少女は何も答えない。
だが、俺はそんなことは何一つ気にならなかった。

「行くところがないのなら、俺のところに来るか?」

「………」

「無言は肯定と受け取るぞ? いいな?」

「………」

俺はそれ以上なにも言わず、少女の手を掴み引っ張った。
少女の体は思った以上に軽く、ドンッと俺の胸にぶつかる。
それでもなお少女はなにも言わず、顔色さえひとつも変えることはなかった。

「さて、帰るか」

「………」

2人で雨に打たれながら家を目指す。
その道のりは心なしか軽いような気がした・・・。

ただ、似ていたからじゃない。
あいつに似ていたからじゃない・・・そう思いたい・・・

この瞬間・・・

一羽の雛が飛び立った・・・




トップへ戻る 第1話へ