第4話『終末に流れる迷走の跡』
第4話
『終末に流れる迷走の跡』



あのときもそうだった・・・。
今もそうだった・・・。

いつも終末は突然だった・・・。

「だ……大丈夫か?」

「………」

俺は走る激痛を我慢しながら少女の頬に腕を伸ばした。
そして触れた瞬間、少女の目から一筋の光が流れていく。
その雫をなんとか拭うとぎこちない笑顔を向けた。

「ケガは……ないようだ…な」

「………」

「よかっ……た」

限界を超えた俺の腕は地面へと崩れ落ちる。
喋りにくい・・・息がしにくい・・・俺の体はもう無理だった。
苦しむ俺の手に少女の手が重なる。
それはとても小さく、とても温かかった・・・。

「………」

少女は無言で泣いた。
こんな俺のために少女の心は悲哀に流されていく。
純真な瞳が見る見るうちに輝きを失っていった。

「……ありがとう」

「……?」

「俺のために……泣いてくれてるんだろう?」

気がつけば俺の目からも涙が零れていた。
この涙には悲しいだけでなく嬉しいものも含まれている。
ここで終わってしまうのは悔しかった。
だが、違う結末を迎えることができたのは幸せだった。

「もっと……大事にしてやりたかった」

「………」

「ごめん、俺はこんなんだから…」

「………」

「迷い続けてたから…」

迷走する生にひとつの希望が見えた。
希望は未来の光を生み、過去の迷走を跡へと残す。

過ぎ去りし時間(とき)、動きだすことのない未来。

「もう、迷わなくてすむ…」

「………」

「あのときから……無くなっていたんだ…」

「……ぁ」

「なにも言わなくて……いい…わかってる」

刻々と終末は近づく。
変えることのできない未来と変わることのない過去。
それらはこの瞬間に結びついた。

ただ、ふたりが知らない時間の中で・・・。

一匹の狼は力尽きた・・・。

唯一の欠片を守った為の代償として・・・。





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