第9話『禁忌』
第9話
『禁忌』



いつものように雅人が木陰で休憩をしていると、唯子が静かに近づいてきた。
「…高原さん?」
「ん?綾瀬か」
声に気づき、雅人はゆっくりと上体を起こすと、腹部の痛みに顔をしかめた。
「いたた…」
「だ、大丈夫ですか?」
唯子は慌てて近寄ると、屈んで心配そうにのぞき込んだ。
「大丈夫だ。まだ完璧に治りきってないだけ…」
「無理したらダメですよ。言ってくれれば、すぐ日比谷さんを呼んできますから」
「そのときは頼む」
痛みが引くと、雅人はひとつ息をついて目を閉じた。
唯子は一瞬躊躇ったが、意を決すると雅人の隣に腰を下ろし、肩にもたれた。
「綾瀬?」
「なにも言わないでください。少しだけ、こうさせて下さい…」
「ああ…」
――木漏れ日の中、ふたりの時間は静かに流れた。
「私、負けたくないです」
唐突に唯子が呟いた。
「茜ちゃんに負けたくない。私だって、高原さんのこと――」
唯子は雅人の前に出ると、素早く唇を伸ばした。
ふれるだけのキス。唯子は自分の大胆さに頬を赤くすると、
「大好きなんですから」
強く宣言した。
「綾瀬…」
「高原さんが妹さんを好きでもいい。でも、私の気持ちも本気なんです」
複雑な気持ちに雅人は目を反らす。
唯子はその行動に怯みそうになるが、踏ん張って続ける。
「どんなに好きでも、茜ちゃんは妹だから。私は他人だから…」
「わかってる。茜は妹だってわかってる」
「でも、私よりあなたのことを知っている。好みや癖、過去も全て知っているから、今は勝てない」
悔しさからか、目尻に涙をためると唯子はそっと雅人の胸に倒れ込んだ。
「あなたの気持ちはどうなんですか?私より、妹さんの方が好きなのですか?」
「茜は、ずっと俺を見守ってくれていた。あの事故が俺の全てを狂わせた。――だが、茜は自分の時間を潰しながらも支えてくれた。心を癒してくれたのは誰よりも茜だった」
雅人の言葉に気になることがあったが、唯子は恭二に言われたことを思い出し、言葉を飲み込んだ。
「そう…ですか…」
寂しげな唯子の両肩に手をかけると、雅人は優しく引き離した。
「叶わない想いだとわかってる。だけど、今は茜に側にいてほしいんだ」
「私では…ダメなんですね?」
「君自身は悪くない。ただ、知らないことが多すぎるだけだ」
その言葉に、唯子は一筋の涙を零す。
「私があなたのことを知ることは、いけないことなんですか?」
「………」
雅人はなにも答えず、静かに腰を上げた。

その日の夜、アパートに帰るといつものように茜が出迎えた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
鞄を置いて一息つくと、見慣れないものを見つけた。
「この鞄はなんだ?」
「えへへっ!今日はね、ここで泊まるから、その用意だよ」
「なに勝手に決めてるんだ。家には…」
雅人の言葉を遮るように料理をテーブルの上に置くと茜は、
「ちゃんと許可もらってるよ」
と、雅人の唇に人差し指を当てた。
「それならいいが…」
少し戸惑いながらも雅人は用意された料理に箸を延ばした。
「――ごちそうさま」
空腹を満たし、雅人は一息ついた。
「なんだか、こうしてると新婚みたいだね?」
「………」
茜の言葉に、ふと、昼間の言葉を思い出す。
妹だから叶わない想い。――雅人の胸に強く響いた。
「お兄ちゃん?」
「ん?なんだ…?」
「ボーっとしてどうしたの?」
「いや…」
雅人は言葉を濁すと、手招きした。
「なに?」
子犬のように首を傾げながら寄ってくる茜を強く抱きしめると、有無を言わさず唇を重ねた。
「…んぅ!?」
「………」
「ん……ぅ…」
驚く茜だが、しばらくすると静かに瞳を閉じた。
「――んはぁ」
ふたりの唇が離れると、とろんとした目で茜は雅人の胸にもたれ掛かった。
「いきなりするなんて、強引なんだから…」
「…茜」
小さな声で名前を呟く雅人の手が、茜の服に伸びる。
「…!あ、お兄ちゃんっ!?」
飛び上がりそうになる茜を押さえ、服の上から胸に手を重ねた。
「あ、あん…。や、やめてお兄ちゃん…。こ、心の準備が…」
「俺のものになれ、茜」
「…え?」
「お前はずっと俺のものだ」
茜の返事を聞かず、雅人はゆっくりと手を動かしはじめた。
「だ、だめだよ。お風呂に入ってないし…、それに胸ちっちゃいし…」
「そんなの関係ない。俺は茜が好きなんだ…」
「お兄ちゃん…。で、でも…」
戸惑う茜を無視して雅人は服に手をかけると、それを遮るように茜の手が伸びた。
「茜?」
「お、お願い。初めてだから、そんな乱暴にしないで…」
「ごめんな」
お礼の代わりにキスをする雅人。そして、
「俺も初めてだから焦っていたみたいだ」
と、照れながら言った。
「お兄ちゃんのこと好きだよ。でもね、私たち兄妹なんだよ?こんなことしていいのかな…?」
不安な瞳で尋ねる茜。その明確な答えを雅人が持ち合わせているはずはなかった。
「それでも、俺はお前をほしい」
「…お兄ちゃん。私だって、お兄ちゃんになら処女をあげてもいいよ…」
茜の言葉に胸が締め付けられた。
これ以上は覚悟を決めなくてはならない。――雅人は決心すると茜の服のボタンに指を伸ばした。
ぷちぷち――自分の服が脱がされていく様を茜は恥ずかしそうに見守る。
そして全てのボタンが外されると、白く綺麗な肌が晒された。
「あ、あんまり見ないで。胸には自信ないんだから…」
本人が言うとおり、申し訳ない程度にしか膨らんでいない胸には下着の必要もないのか、なにも着けられていなかった。
雅人は少し汗ばんだ腕を伸ばすと、その胸に優しく手を重ねた。
「気にする必要はない。小さくても綺麗だよ」
「あ…、嬉しい。お兄ちゃんがそう言ってくれるなら、もう気にしない」
目を閉じる茜に顔を寄せると、キスをしながらゆっくりと揉む。
時折、茜が小さく体を震わせた。――だが、雅人はキスを続けながら、なおも揉み続ける。
そして、雅人の指が先端に軽く触れたとき、茜の体が大きく動いた。
「だ、大丈夫か?」
心配になった雅人は唇を話すと、茜の顔をのぞき込んだ。
「う、うん…。そこ、弱いの」
「痛かったか?」
「そ、そうじゃないけど…。優しくならいいよ…」
そう言いながら茜はなにか言いたいのか、モジモジしている。
「どうした?」
「あ、あのね…。手より、その…、お兄ちゃんの口で…その…」
顔から火が吹き出そうな茜を見て雅人は、揉んでいる方とは逆の胸に顔を寄せると、優しく先端を口に含んだ。
「きゃぅっ!あ、ああ…」
驚きの声を上げる茜だが、それは次第に快感の声へと変わっていく。
「あ、あんっ。き、気持ちいいよ…。おにいちゃ…ん…」
止めどなく押し寄せる快感に、ついに茜はダウンしてしまった。
急にぐったりした茜を急いで支えると、雅人は茜に声をかけるが、耳には入ってない。
恍惚の瞳を向けると、小さく息をついているだけだった。
「茜…?」
「ご、ごめんね。飛んでっちゃったみたい…」
「気にするな。それにしても、茜も子供じゃないんだな。こんなに色っぽくなるなんて」
「そ、そうかな?よくわからないよ…」
照れたようにはにかむと、茜は目を閉じて、
「お兄ちゃん、してもいいよ」
と、小さく呟いた。
「後悔しないな?」
「後悔はない…と思うよ。でも、お母さん達が知ったから悲しむね?」
「だろうな。バレたら茜と一生会えないかもしれない」
「………」
雅人の言葉に茜は詰まる。
そして、意を決したように雅人の手を掴むと、瞳を開いた。
「ごめんね。お兄ちゃん」
「茜?」
「私、やっぱり怖い。お兄ちゃんのこと大好きだけど、やっぱり抱かれるのは怖いの」
「そうだな」
雅人は優しく答えると、不安な眼差しを向ける茜の髪に優しくふれた。
「抱かれるのが嫌じゃないの。そうなって、お兄ちゃんと会えなくなるかもしれないと思うと、そっちのほうが怖いの」
「お前は間違ってない」
「勝手な妹でごめんね。好きな人に体を許さないなんて、最低の女の子だよね…?」
「…ばか」
泣きじゃくる茜を抱きしめる。
しばらく雅人の胸で泣くと、おもむろに茜はこう言った。
「処女はあげられないけど、お兄ちゃんを喜ばしてあげることはできるよ」
茜は姿勢をずらすと、雅人の股間のところまで行き、ズボンのチャックをゆっくりと下ろした。
「あ、茜っ!?」
「私、知ってるもん。男の人はここが苦しくなるんでしょ?」
チャックを全て下ろし、下着も下ろすと、大きく腫れ上がった雅人のモノが茜の目の前に飛び込んだ。
「お、おおきいね」
「ばかっ!そんなことしなくていいんだよ」
「ダメだよ。男の人は小さくならないと苦しいって聞いたもん」
「だ、誰にだよ…」
雅人の制止もむなしく、茜は言うことを聞く気はないらしい。
茜の手が雅人のモノを掴むと、そのひんやりとした感触にそれは大きく反応した。
「…うっ」
「い、痛かった?」
「そ、そうじゃない…」
「そう?確か、どうするんだっけ…?」
茜は実践の経験がないため、どうしていいかわからず混乱していたが、とりあえず思いついたことを行動に移した。
「……ちゅッ」
「あ、茜っ…くっ」
先端の敏感なところに茜はキスをすると、雅人は情けない声を上げた。
「気持ちいいのかな?」
「茜…。これ以上は…」
「どうしたらいいの?私、やっぱりよくわからないよ…」
潤んだ瞳で見つめられ、雅人の理性はほとんど飛んでいってしまった。
「歯を立てないように口に含んで…」
「あ、はい…」
茜は素直に頷くと、恐る恐る口に含む。
暖かい感触に包まれたモノは大きく反応した。
「うくっ…!そ、それで上下に口を動かすんだ」
「……こくん」
ひとつ頷き、茜は瞳を閉じると静かに動いた。
「き、気持ちいいよ……、はぁ、はぁ…」
満足そうな雅人に茜は心の中で喜ぶと、一気にスピードを速めた。
「あ、茜っ!ちょ、そんなに早くしたら……くぅ」
ドクンッ!――あっという間に茜の口の中で果ててしまった。
「ん!?……んむ…」
ドクンドクンと何度も痙攣し、雅人のモノは白濁液を吐き出す。
茜はときおりむせかえるのを堪えながら、全ての液を喉に流した。
「はぁ……はぁ……」
絶頂の余韻に浸っていた雅人だが、自分のしたことに気づくと急いで茜の顔を離した。
「わ、悪いっ!思わず出してしまったっ」
「けほっ、けほっ…」
雅人は少しむせている茜の唇の端に自分の出した液の残りを見つけると、大きく心臓が高鳴った。
俺はなにを考えているんだ、茜にこんな事をさしていいわけないだろうっ。――自分にそう言い聞かす。
「大丈夫か?」
「う、うん…。お兄ちゃんの、全部飲んじゃった」
そう言って小悪魔のような笑みをこぼす茜に、自分の顔が熱くなっていくことに気づく。
「そんなことしなくていいんだよっ!嫌なら全部吐き出せ」
「確かに美味しくないけど、飲んであげると喜ぶって聞いたから…」
「だから、誰からだよ…」
茜の言葉に胸を震わせながら、どこか呆れている雅人。
雅人は部屋の隅にあるティッシュを取ると、茜の口の端に残っている液を拭き取った。
「えへへっ、ありがと」
「礼を言うのは俺の方だよ」
「気持ちよかったかな?満足した?」
期待半分、不安半分の顔で聞いてくる茜に雅人は、
「好きな女の子にしてもらって満足しない男はいないさっ」
と言って、茜の額を軽く指で弾いた。




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